20071221

大井翔太 高橋佑輔 辻本聡

三菱総合研究所 産業・市場戦略研究本部編『日本産業読本 第8版』東洋経済新報社2006

第10章 新しいビジネス構想

第一節  日本産業、企業の将来像と新しいビジネス構想

(1)日本産業の直面する脅威と課題

1.国際競争力の低下が続く10年間

世界一の地位から下位の20位台へと低迷

2.産業競争力の面での機能障害

要因 @円高ドル安の動きが急激であった

     A海外展開のプロセスがあまりにも短期間のうちに進んだ

     Bアジアの海外進出

・付加価値の空洞化→輸出から海外生産に移行し、収益機会が海外に移転

・国内過剰能力問題→日本国内のリストラが遅れ、海外生産からの逆輸入にも拍車がかかる

(2)今後の産業像、ビジネスモデルのあり方

1.今後の産業像

資源に恵まれず、加工貿易立国を目指す日本経済にとってものづくり産業の国際競争力の再強化と新しい産業創生は緊急かつ重要な課題

・今後の産業構造 

@第二次産業に対する第三次産業の拡大

A第二次産業(中でも製造業)におけるソフトウェアの投入割合の拡大傾向

・研究開発の重要分野

@ライフサイエンスA情報通信B環境Cナノテクノロジー・材料

DエネルギーE製造技術

F社会基盤Gフロンティア

→国際的にも比較優位を持った製造業の比重が生産(付加価値)面でも雇用面でも拡大

2.ものづくり産業の展望と新しいビジネスモデル

グローバル企業にふさわしい高利益、高付加価値を確保するための構造改革を断行

〜日本企業が生き残りをかけて実行しつつある戦略〜

@選択集中型

企業の限られた経営資源を付加価値が高い中核部品やオンリーワンの差別化製品に集中する企業

・部品特化型

→特定の部品分野に経営資源を集中し、特定製品では世界シェアがbPのような強力な製品群を抱えている場合が多い。

・製品差別化型

→部材や製品開発の拠点を、むしろ国内に集中し、高賃金に見合う高付加価値の製品の開発、市場投入が同社の基本方針である

Aスマイル・カーブ型

ものづくり工程よりは、バリュー・チェイン上でいえば高付加価値、高利益と「考えている」上流の部品開発や下流のサービス部門に経営資源を集中し、収益を拡大していく戦略

 

B日本をリードする一貫型

一貫型はものづくりを中核にするが、付加価値が稼げると見るや上流や下流のあらゆる機会に進出する道を選ぶ

(3)新しいビジネス構想と新産業像の創出

.アジア大国際分業によるビジネス構想作り

・日本企業の経営革新に向けての課題

@グローバル経営の立て直し再構築をはかること

A「日本・スクラップ、アジア・ビルド」戦略

→日本国内過剰能力を廃棄、アジア大の視点で需給面の構造調整をはかること

B日本はアジアに対する開発、生産先導拠点としての役割を維持できることが国内生産業の空洞化を回避する条件である

2.日本産業の未来

・国内産業の空洞化を回避するためには付加価値の高い事業を開発すべき

・日本企業は今後も持続可能な成長、発展をはかることが可能であり、新たな「ものづくり」産業を中心とした新しい産業像を作り上げることが可能になる

 

論点:ものづくり産業の再強化のために各企業、国は何をすべきか?

 

〜補足資料-

 

雁行形態的発展と国際競争の構造(NIEsにおける資本集約部門:SITC7の例)

 

米国・欧州

米国をはじめとした先進国
(
米国、欧州、日本など)

労働集約部門の例
(SITC6.8)
韓国、台湾、
シンガポール

 

・先端産業による非価格
競争力の遅れ

↓↓↓

・為替レート次第の競争力
・輸入規制、GSP供与の廃止
(OECD,WTO
参加)

 

日本

韓国、台湾、シンガポール

 先端産業、重化学工業→:・遅々として進まない資本財の輸入代替
                     ・部品産業・基盤産業形成の遅れ

                 
労働集約産業:・賃金の上昇による価格競争力の後退

タイ、インドネシア

 

 

↑↑↑

労働集約企業における途上国の
キャッチアップ

 

アジア

アジア発展途上国
(
タイ、中国など)

中国(香港)、ベトナム