山田りさ 2006年8月26日

 

NTTデータ システム科学研究所編 『インターネット社会の10年』

 中央経済社、2005年

第9章インターネット社会はどこへ

〜生きる知性と知恵を育む10年に

 

【語句】

ビッグ‐バン【big bang P236

1986年に実施された英国証券市場制度の大改革。手数料自由化、取引所会員権の開放などに代表される金融・証券自由化政策を骨子とする。転じて抜本的改革等をいう。

平成8年(1996)に橋本龍太郎首相が具体化を指示した、銀行・証券・保険の相互参入の促進など金融システム改革案。金融ビッグバン。日本版ビッグバン。[ 大辞泉 ] 

ITS (高度道路交通システム) Intelligent Transport SystemsP236

情報技術を用いて人と車両と道路を結び、交通事故や渋滞などの道路交通問題の解決をはかる新しい交通システム。日本では1995年から政府を中心に推進されている。渋滞情報と連動した高度なナビゲーションシステム(VICS)や、自動料金収受システム(ETC)など、いくつかの要素技術からなる

サイバースペースCyberspace 日経エレクトロニクス P237

「ネットワークを使って仮想的な3次元空間を共有するシステム」を指す言葉として使われるようになってきた。ただし,サイバースペースの定義はあいまい。3次元空間に限らず,たんに電子的なコミュニケーションの場を指して使われることもある。こうした仮想空間の別称としてVEvirtual environment),VSvirtual space)といった言葉もある。

サイバーカスケード P238

アメリカの憲法学者、キャス・サンスティーンの『インターネットは民主主義の敵か』(石川幸憲 訳、毎日新聞社、2003年。原題は"Republic.com")の中で、インターネットが民主主義を脅かす可能性として語られるキーワード。「集団分極化 group polarization」ともいう。

アウトソーシング【outsourcing P239

社外から生産に必要な部品・製品を調達したり、業務の一部を一括して他企業に請け負わせる経営手法。社外調達。 [ 大辞泉 ]

センシング【sensingP246

センサーを利用して物理量や音・光・圧力・温度などを計測・判別すること。

[ 大辞泉 提供:JapanKnowledge ] 

インターフェイス【interfaceP255

コンピューター本体と各種周辺装置やコンピューターどうしを接続し、電気信号の大きさを調整したり、データの形式を変換したりして、両者間のデータのやりとりを仲介する回路や装置。また、人間がコンピューターなどの装置を円滑に使用できるようにするための操作手順。インタフェイス。[ 大辞林 提供:三省堂 ]

インタープリター【interpreterP255

BASICFORTRANなどのプログラミング(コンピューターのプログラムを作成すること)用の高級言語を、コンピューター用の機械語に翻訳するプログラム。 [ 大辞泉 提供:JapanKnowledge ]  

【まとめ】

1990年代以降の10年間でサイバースペースは、多様な人々が行き交う一般社会になった。この10年間の変化が意味することの一つに「個」のクローズアップがある。ICTの登場で、企業や行政など、あらゆる組織では業務を個別に分けコントロールする方法など、業務改革を促し、就業者は個人としての自立性や貢献度が強く求められるようになった。個人生活においても、行動や意識レベルで個人化が進んでいる。そして2つめは枠組みの変化と要素の組み換えである。各種制度改革、商習慣の変容、ビジネスや社会活動における価値創造といった変化に対応しきれなくなった既存の枠組みを構成していた要素を組み換えたり、つなぎ方を変えるといった再構築である。そして「個」のクローズアップ、枠組みの変化と要素の組み換えに呼応して、要素の部品間、プロセス間、組織間、組織と個人、個人間といったあらゆる面で関係性の変容が起きている。

これらの様相はモジュール化の概念と深く関わっている。もともと製品設計の概念であるモジュール化は、独立した小さい単位に分け、単位間のインターフェイスだけを標準化し、単位の集合によって全体を作り上げる手法だ。今後すべての技術領域の発展を加速する中核的基盤技術として期待されるのは情報通信であり、そのなかでも情報セキュリティ、ユキビタスネットワーキングの領域は、知的資産の増大、経済的効果、社会的効果といったあらゆる面に影響を及ぼすとして注目される。そして社会はいつでもどこでも何でも誰でも情報ネットワークを介した多様な恩恵を望めるユキビタス・コンピューティング社会へ進んでいく。ICTが組み込まれた社会は個人の活力を引き出す方向にも減退させる方向にも作用する要素を備えている。今後「個」が自由に活動しつつ全体を感じられる環境作り、インタープリンター、メディエーター機能の充実、発想や意欲を減退させない程度の情報セキュリティの構築が重要だ。

【コメント】

これまで情報セキュリティの強化は十分に行われるべきだと思っていた。もちろん情報セキュリティは重要である。しかしセキュリティを強化しすぎると、「個」の活性化を低下させてしまう点があるということを考えていなかった。セキュリティによって管理しなければいけない部分とセキュリティによって管理しすぎてはいけない部分を考えるのは難しいと思った。


【夏合宿の議論の回顧】

第一章、第二章共にセキュリティに関する議論が多かった。ICTが普及し、社会が便利になる反面、急速な普及に対応出来ていないセキュリティの対策。また、セキュリティをどこまで強化すべきか、どこまで柔軟な社会にするかという点について考えるのは非常に難しいが必要だと感じた。また電子マネーについて、「個」についての議論も面白かった。全体的に時間が少なかったが、実のりあるものになったと思う。