駒澤大学 シラバス照会

 履修コード/科目名称  049511 / 東洋史特講Ⅰ
 開講年度・期  2020年 通年  開講曜日・時限  水曜日 4時限
 単位数  4
 付記  ◎予・〔古代史〕
 主担当教員氏名(カナ)  津田 資久(ツダ トモヒサ)
 副担当教員氏名(カナ)  
 授業概要 本講義は、3世紀の東アジア世界を語るうえで非常に重要な根本史料となる西晋・陳寿撰『三国志』と、それに註釈を加えた劉宋(南朝宋)・裴松之「三国志注」の特徴と問題点の史料批判的再検討を通じて、歴史叙述のあり方とその読み込みによって浮かび上がる史実から、どのような「時代像」が新たに再構築されるのかを議論する授業です。
これまでの三国時代史研究は、いわば明・羅貫中『三国志演義(三国演義)』という講談小説の歴史観を引きずる形で行われる傾向が強く、そのような意味づけを前提にして西晋・陳寿『三国志』が理解されるという本末転倒な解釈が多くなされてきました。このため、「史料そのものと対話して、その叙述の意図を問う」という読み方をした文献研究は、今日においても非常に少ない現状にあります。また「撰述者が理解してもらいたい方向に誘導され読まされるのではなく、叙述に込められた意図を明らかにする」という視点からの検討も求められますが、こちらもあまり盛んに行われているとは言い難い状況にあります。
以上の問題意識を踏まえて、本講義では、魏晋時代史研究における文献諸史料の価値を根本から問いなおし、少なくとも諸史料の撰述者たちが叙述に込めた政治的意図を解明すると共に、その作業を通じて改めて浮かび上がる「時代像」の提示を目的とします。
〔キーワード〕 西晋・陳寿『三国志』、劉宋・裴松之「三国志注」、『晋書』、『建康実録』、『華陽国志』、正統論、当代政治意識の歴史書への投影
 到達目標(ねらい) 1.魏晋時代の文献史料の特徴を説明できる。
2.西晋・陳寿『三国志』という史料が、これまでどのように魏晋時代史の研究に用いられ、評価されてきたかを具体的に説明できる。
3.陳寿や「三国志注」に引用される様々な歴史書を撰述した者たちが撰述活動を通じて提示しようとした歴史観を指摘できる。
4.以上を十分に踏まえつつ、自分なりの魏晋時代史を描く歴史書に対する見方を具体的に提示できる。
 授業スケジュール
第 1 回
授業の計画・内容 ガイダンス:授業に関する概括的な方針の説明
準備学習
(予習・復習等)
講義前にシラバスを確認し、「参考書」で扱う時代ないし歴史書についての概要を把握 90分
第 2 回
授業の計画・内容 後漢末~西晋初の歴史に関する通説の概観(1):後漢の衰亡と群雄割拠
準備学習
(予習・復習等)
後漢の成立と滅亡までの歴史的経緯を予習 90分
第 3 回
授業の計画・内容 後漢末~西晋初の歴史に関する通説の概観(2):赤壁戦役から三国の形成へ
準備学習
(予習・復習等)
赤壁戦役の通説的な理解を予習 90分
第 4 回
授業の計画・内容 後漢末~西晋初の歴史に関する通説の概観(3):三国鼎立と対外進出
準備学習
(予習・復習等)
『魏志』倭人伝とは、曹魏にとってどのような意味を持っているのかを予習 90分
第 5 回
授業の計画・内容 後漢末~西晋初の歴史に関する通説の概観(4):三国の滅亡と西晋・武帝朝
準備学習
(予習・復習等)
曹魏と西晋は、通説でどのように対比され意味づけられているかを予習 90分
第 6 回
授業の計画・内容 陳寿と『三国志』(1):陳寿の事績
準備学習
(予習・復習等)
歴史事典等で、陳寿という人物の概要を予習 90分
第 7 回
授業の計画・内容 陳寿と『三国志』(2):『三国志』の構成と正統意識
準備学習
(予習・復習等)
『三国志』という歴史書の巻数、曹魏・蜀漢・孫呉にどれだけの割合を充てているかを調べてくること 90分
第 8 回
授業の計画・内容 陳寿と『三国志』(3):『三国志』はどのように読まれてきたか
準備学習
(予習・復習等)
唐・劉知幾『史通』(現代日本語訳の書籍もあります)などで、『三国志』に対する評価を調べてくること 90分
第 9 回
授業の計画・内容 裴松之と「三国志注」
準備学習
(予習・復習等)
歴史事典等で、裴松之という人物の概要を予習 90分
第 10 回
授業の計画・内容 陳寿が歴史叙述に込めた当代的政治意識(1):曹丕と曹植の描き方①―「後嗣争い」とその害悪
準備学習
(予習・復習等)
『三国志』が扱う後継者争い問題には、どのような事例があるかを調べておくこと 90分
第 11 回
授業の計画・内容 陳寿が歴史叙述に込めた当代的政治意識(2):曹丕と曹植の描き方②―求められる兄弟像
準備学習
(予習・復習等)
歴史事典等で、曹丕と曹植がどう評価されているのかを調べておくこと。 90分
第 12 回
授業の計画・内容 陳寿が歴史叙述に込めた当代的政治意識(3):外戚と皇后のあり方をめぐって
準備学習
(予習・復習等)
外戚の政治的位置付けに関して、後漢と曹魏での相違点を予習 90分
第 13 回
授業の計画・内容 陳寿が歴史叙述に込めた当代的政治意識(4):側近政治と帝室の安危
準備学習
(予習・復習等)
曹魏では、皇帝の直近の側近官として権勢を握っていたのは何か。それを調べておくこと。 90分
第 14 回
授業の計画・内容 陳寿が歴史叙述に込めた当代的政治意識(5):張華の党派としての政治的主張
準備学習
(予習・復習等)
歴史事典等で、張華という人物の概要を予習 90分
第 15 回
授業の計画・内容 前期の総括・まとめ
準備学習
(予習・復習等)
前期の内容を整理して、前期課題レポートの提出に備えること 90分
第 16 回
授業の計画・内容 前期の回顧と後期の展望
準備学習
(予習・復習等)
前期の内容を復習しておくこと
配布済みのプリント等は、忘れず持参すること
90分
第 17 回
授業の計画・内容 陳寿と蜀漢史(1):劉備集団と「黄龍甘露之碑」
準備学習
(予習・復習等)
歴史事典等で、劉備・諸葛亮という人物の概要を予習 90分
第 18 回
授業の計画・内容 陳寿と蜀漢史(2):諸葛亮の北伐
準備学習
(予習・復習等)
諸葛亮は、『蜀志』の諸葛亮伝以外では、どのように描かれているか。それを現代日本語訳の書籍等で調べておくこと 90分
第 19 回
授業の計画・内容 陳寿と蜀漢史(3):楊戯「季漢輔臣賛」と蜀漢「国史」
準備学習
(予習・復習等)
『蜀志』の末尾に載せられる楊戯「季漢輔臣賛」を現代日本語訳の書籍等で予習 90分
第 20 回
授業の計画・内容 陳寿と蜀漢史(4):『蜀志』を補完する『華陽国志』
準備学習
(予習・復習等)
歴史事典等で、『華陽国志』という歴史書の史料的価値を調べておくこと 90分
第 21 回
授業の計画・内容 魏晋交替を描く陳寿の政治的立場(1):『三国志』の中の司馬懿・司馬師・司馬昭叙述
準備学習
(予習・復習等)
歴史事典等で、司馬懿・司馬師・司馬昭の人物の概要を予習 90分
第 22 回
授業の計画・内容 魏晋交替を描く陳寿の政治的立場(2):「曹真残碑」が語る司馬懿と曹真・曹爽父子①―曹魏における「分陝」の任
準備学習
(予習・復習等)
一般に概説書では、司馬氏と曹氏に関して、どのようにその一族的性格が記載されているかを調べておくこと 90分
第 23 回
授業の計画・内容 魏晋交替を描く陳寿の政治的立場(3):「曹真残碑」が語る司馬懿と曹真・曹爽父子②―碑文の読解と立碑事情
準備学習
(予習・復習等)
前回配布プリントの「曹真残碑」碑陰に見える人名で、『三国志』に名前が見られるものを調べておくこと 90分
第 24 回
授業の計画・内容 魏晋交替を描く陳寿の政治的立場(4):「正始の政変」の実相と「郛休碑」①―政変の経緯とその評価
準備学習
(予習・復習等)
一般に概説書では、249年に発生した「正始の政変」は、その歴史的意味はどのように評価されているかを調べておくこと 90分
第 25 回
授業の計画・内容 魏晋交替を描く陳寿の政治的立場(5):「正始の政変」の実相と「郛休碑」②―碑文の読解と『晋書』景帝紀の意味するもの
準備学習
(予習・復習等)
前回配布プリントの『晋書』景帝紀の指定箇所を書き下し文にしてくること 90分
第 26 回
授業の計画・内容 魏晋交替を描く陳寿の政治的立場(6):禅譲革命としての漢魏交替と魏晋交替
準備学習
(予習・復習等)
司馬氏の権力の「拡大」と「強化」に関して予習 90分
第 27 回
授業の計画・内容 『呉志』の世界(1):『建康実録』との比較
準備学習
(予習・復習等)
歴史事典等で、『建康実録』という歴史書の史料的価値を調べておくこと 90分
第 28 回
授業の計画・内容 『呉志』の世界(2):饒舌な陳寿の叙述―『魏志』・『蜀志』の書法との相違点
準備学習
(予習・復習等)
『呉志』からは、どのような王朝衰亡史が読み取れるか。象徴的な部分を現代日本語訳の書籍等で調べておくこと 90分
第 29 回
授業の計画・内容 『呉志』の世界(3):江南豪族への挑戦状
準備学習
(予習・復習等)
歴史事典等で、陸機・陸雲兄弟について調べておくこと 90分
第 30 回
授業の計画・内容 後期の総括・まとめ
準備学習
(予習・復習等)
後期の内容を整理して、定期試験に備えること 90分
 履修上の留意点等 中国古代史に関する授業ですので、ある程度、前年度までに中国史・漢文訓読・中国語に関する基礎的な授業を履修していることが望ましい。基礎的知識が十分でない場合には、内容理解に困難を伴いますので、別途自習をお願いします。
また漢文史料の読解に関するレポートを複数回課す予定です。授業中にも史料内容について質問することがあります。漢文史料の解読に真摯に取り組み、内容を適切に理解できているか否かも評価の判断にします。
 成績評価の方法
65 % 試験
10 % レポート
10 % 小テスト
15 % 平常点





 教科書/テキスト
適宜、プリントを配布
 参考書
 図書館蔵書検索 図書館蔵書検索
受講に際しては、下記のいずれかを事前に通読しておくことが望ましい。
①中国通史
 津田資久・井ノ口哲也『教養の中国史』(ミネルヴァ書房、2018年。ISBN978-4-623-08031-1)など
②三国時代史
 福原啓郎『西晋の武帝 司馬炎』(白帝社、1995年。ISBN4-89174-232-1)
 石井仁『魏の武帝 曹操』(2000年初出。新人物往来社「新人物文庫」、2010年、ISBN978-404-03894-4)など
③『三国志』関連
 宮川尚志『三国志』(明徳出版社「中国古典新書」、1970年。ISBN4-89619-235-4)など
④辞典
 神田信夫・山根幸夫『中国史籍解題辞典』(燎原書店、1989年。ISBN4-89748-081-7)など
また、必要に応じて随時指示します。
 学生による授業アンケート結果等による授業内容・方法の改善について 昨年度実施のアンケートは受講者が少数であったことが関係しているのかどうか分かりませんが、提出されていません。
ただ、より良い授業を目指して不断の改善に努めていきたいと思っています。
 関連リンク
 実務経験がある教員による授業科目
 アクティブラーニング型の授業科目