駒澤大学 シラバス照会

 履修コード/科目名称  824851 / 考古学特講Ⅵ【講義】
 開講年度・期  2020年 通年  開講曜日・時限  火曜日 5時限
 単位数  4
 付記  
 主担当教員氏名(カナ)  設楽 博己(シタラ ヒロミ)
 副担当教員氏名(カナ)  
 授業概要 弥生時代のはじまりは、日本列島において最も大きな歴史的転換の一つであった。この転換は、朝鮮半島や中国からの影響を背景にしたもので、大陸的な文化要素は弥生文化の骨格をなす。一方、縄文文化もいたるところに継承されている。これまで弥生文化の研究では、縄文文化の要素の研究はなおざりにされてきた。本講義ではこの点に着目しながら、様々な観点から縄文時代の社会と弥生時代の社会を比較し、その異質性と継承関係を踏まえつつ、縄文時代から弥生時代への変化を追う。生業・集落・社会組織・祖先祭祀・文化の継承性・生産と流通・クニへの歩みに焦点を当てた講義を行う。
第2回目以降の講義は、毎回、事前学習によってわからなかった部分の質疑応答から始めることにする。
 到達目標(ねらい) 縄文時代と弥生時代の社会と文化の授業を通じて、それぞれの基礎的知識を獲得し、縄文時代・縄文文化とはなにか、弥生時代・弥生文化とはなにかを考え、縄文時代から弥生時代への転換が日本やアジアの歴史にとってどのような意味をもっていたのか思いめぐらすきっかけとする。
 授業スケジュール
第 1 回
授業の計画・内容 イントロダクション
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 2 回
授業の計画・内容 「弥生文化観の形成(1)」
日本における近代考古学の成立から、蒔田鎗次郎の弥生土器論をへて、八木奘三郎の中間土器論、中山平次郎の金石併用期論の展開や、鳥居龍蔵の固有日本人論の形成といった、明治・大正期の考古学・人類学史を扱う。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 3 回
授業の計画・内容 「弥生文化観の形成(2)」
山内清男の日本遠古の文化、森本六爾と小林行雄、杉原荘介ら東京j考古学会の弥生文化論と戦後の唯物史観にもとづく藤間生大や和島誠一、近藤義郎の弥生文化論までを扱う。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 4 回
授業の計画・内容 「もう二つの日本文化」
続縄文文化と貝塚後期文化を論じ、北海道と沖縄地方に生じた非農耕文化と、そのことの歴史的な意義を論じる。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 5 回
授業の計画・内容 「縄文農耕と弥生農耕の違い」
『食の体系』のテーマ①として、農耕の問題を扱う(教科書第1章―1)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 6 回
授業の計画・内容 「採集狩猟民的漁撈と農耕民的漁撈」
『食の体系』のテーマ②として、漁撈の問題を扱う(教科書第1章―2)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 7 回
授業の計画・内容 「動物観の変遷」
『食の体系』のテーマ③として、狩猟の問題と、動物に対する縄文文化と弥生文化の考え方の違いを、精神文化の側面を含めて考える(教科書第1章―3)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 8 回
授業の計画・内容 「環状集落と環濠集落」
『ムラの姿の変貌』のテーマ①として、縄文文化と弥生文化に特徴的な集落形態を取り上げ、その形態の違いの由来と意義を探る(教科書第2章-2)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 9 回
授業の計画・内容 「弥生都市論の評価」
『ムラの姿の変貌』のテーマ②として、弥生時代の大型集落を都市と理解する考え方を紹介し、論評する(教科書第2章―3)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 10 回
授業の計画・内容 「家族のあり方」
『集団組織の変化』のテーマ①として、縄文時代と弥生時代の親族組織をどのように把握すればよいのかを踏まえつつ、それぞれの文化の集落のメンバーシップについて考える(教科書第2章―1)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 11 回
授業の計画・内容 「縄文時代の土偶と石棒」
『集団組織の変化』のテーマ②として、縄文時代を代表する呪術的遺物である土偶と石棒を取り上げ、縄文時代の男女の象徴性とその根差すところを論じる(教科書第3章―1)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 12 回
授業の計画・内容 「弥生時代における男女一対の観念とその由来」
『集団組織の変化』のテーマ③として、縄文時代の土偶が弥生時代にはどのように変化していくのか、またその背景を土偶形容器や分銅形土製品などから探る(教科書第3章―2・3)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 13 回
授業の計画・内容 「巨大な耳飾りの役割と抜歯の意義」
『人生の節目』のテーマ①として、縄文時代の通過儀礼の実態と、そこから導き出せる社会的な意義に対する機能論的な解釈(教科書第4章―1・2)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 14 回
授業の計画・内容 「イレズミの変容」
『人生の節目』のテーマ②として、イレズミの歴史を探る。『古事記』『日本書紀』と人物埴輪から古代のイレズミ実在論を展開し、絵画や土偶などから縄文時代へと型式学的に遡及して、イレズミの性格変化とその意義を探る(教科書第4章―3)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 15 回
授業の計画・内容 「縄文時代の祖先祭祀」
『祖先のまつり』のテーマ①として、縄文時代の葬墓制を取り上げて、文化人類学による祖先祭祀の要件を適応しつつ、縄文時代の祖先祭祀のあり方と特質を推測する(教科書第5章―1)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 16 回
授業の計画・内容 「弥生再葬墓の形成とその背景」
『祖先のまつり』のテーマ②として、弥生時代の東日本に展開した再葬墓を取り上げ、その形成要因の一端を祖先祭祀ととらえて、縄文時代からの文化の継承と変容を探る(教科書第5章―2)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 17 回
授業の計画・内容 「大陸由来の祖先祭祀」
『祖先のまつり』のテーマ③として、弥生文化のなかに中国からの影響、すなわち大陸由来の祖先祭祀をとらえて、その展開過程を墳墓祭祀から明らかにする(教科書第5章―3)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 18 回
授業の計画・内容 「弥生土器の成立と縄文土器」
『受け継がれる縄文文化』のテーマ①として、弥生前期初頭の板付Ⅰ式弥生土器を取り上げ、その文様の成立に亀ヶ岡式土器が影響を与えていたことを論じる(教科書第6章―1)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 19 回
授業の計画・内容 「木葉文と流水文」
『受け継がれる縄文文化』のテーマ②として、弥生前期の遠賀川式土器に施された木葉文と流水文という代表的な文様を取り上げ、いすれもその源流が縄文晩期の東日本の土器にあることを論じる(教科書第6章―2)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 20 回
授業の計画・内容 「銅鐸文様の起源」
『受け継がれる縄文文化』のテーマ③として、大阪府東奈良遺跡出土銅鐸文様を取り上げ、菱環鈕式銅鐸の文様も踏まえながら、それらが東日本の晩期縄文土器の文様に由来することとその意義を考える(教科書第6章―3)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 21 回
授業の計画・内容 「石器の生産と流通」
『生産と流通の変化』のテーマ①として、縄文時代の石器の生産・流通と弥生時代のそれを比較しながら、どこが異なるのか、またその歴史的な意義がどこにあるのか学習する(教科書第7章―1)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 22 回
授業の計画・内容 「渡来系の人々と青銅器生産」
『生産と流通の変化』のテーマ②として、弥生時代中期初頭の渡来系土器を出土する地域の土器と青銅器の鋳型や鉄器を取り上げて、その背景といかにその時期が縄文〜弥生時代を通じて歴史の画期となっていたのかを探る(教科書第7章―2)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 23 回
授業の計画・内容 「石器から鉄器へ―地域間の関係性の変化-」
『生産と流通の変化』のテーマ③として、鉄器がどのように日本列島に導入されて、どのように拡散していくのか、韓半島の鉄器生産のと倭系遺物のあり方を抑えながら、弥生時代の鉄器の受容ありようとその歴史的な意義を探る(教科書第7章―3)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 24 回
授業の計画・内容 「アメリカ北西海岸の先史社会とネイティブアメリカンの考古学」
アメリカ北西海岸先史社会の階層化の研究状況と問題点を理解し、縄文文化の階層化社会問題を考える手掛かりとする。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 25 回
授業の計画・内容 「縄文時代の階層と弥生時代の首長」
『クニへの歩み』のテーマ①として、縄文社会の階層化問題を扱い、研究の現状を理解する(教科書第8章―1)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 26 回
授業の計画・内容 「倭国乱れる―漢帝国の盛衰とともに―」
『クニへの歩み』のテーマ②として、弥生時代の階層化問題を扱い、多副葬墓と墳丘墓の展開から首長制の形成過程を追う。漢帝国とのかかわりを金印などを素材として理解し、そのかかわり方の変化と倭国の形成との相関関係を考える(教科書第8章―2)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 27 回
授業の計画・内容 「纏向遺跡と卑弥呼」
『クニへの歩み』のテーマ③として、纏向遺跡で出土した祭祀遺物を取り上げ、それを起点として弥生時代終末の儀礼の変化を探り、そこに弥生時代から古墳時代へと移り変わる文化と社会の縮図を見通す(教科書第8章―3)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 28 回
授業の計画・内容 「節分は豆まきの起源」
方相氏という古代の役職の日本列島への導入をめぐり、中国の思想が3世紀に流入していたことを議論する(教科書第8章―3)。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 29 回
授業の計画・内容 「アヨアヨ考」
日本列島における妖怪の起源を探りながら、中国思想の影響を受けた日本的世界観の形成を論じる。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
第 30 回
授業の計画・内容 総括
弥生文化研究の視点を討議する。
準備学習
(予習・復習等)
教科書を読んでおく。 60分
 履修上の留意点等 第2回目以降は毎回授業開始時に、学習テーマにつき事前学習での疑問点を板書してもらい、その質疑応答から入ります。事前学習を怠らないようにしましょう。
 成績評価の方法
50 % 試験
レポート
小テスト
50 % 平常点





 教科書/テキスト
設楽博己2014『縄文社会と弥生社会』敬文舎
 参考書
 図書館蔵書検索 図書館蔵書検索
24回目の講義にケネス・エームス、ハーバート・マシュナー著、佐々木憲一監訳、設楽博己訳『複雑採集狩猟民とはなにか-アメリカ北西海岸の先史考古学-』雄山閣の内容を講義するので、目を通しておいてください。
 学生による授業アンケート結果等による授業内容・方法の改善について  
 関連リンク
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