駒澤大学 シラバス照会

 履修コード/科目名称  007101 / 宗教教育 007102 / 宗教教育
 開講年度・期  2016年 通年  開講曜日・時限  月曜日 3時限
 単位数  4
 付記  ◎予
 主担当教員氏名(カナ)  小山 一乘(コヤマ カズノリ)
 副担当教員氏名(カナ)  
 授業概要  用語「宗教教育」の教授概念には現今、宗教一般知識教育、宗教的情操教育、宗派信仰教育、対宗教安全教育、宗教的寛容教育の五があり、論者は、先入観的に、いずれか一の義で解釈し、他は棄却してしまっているという傾向が重大問題としてある。当事態を解説・講義する。当事態の史的背景にある宗教教育改革を企図する対日米国占領政策のねらいに、米国流の宗教教育施策があったこと、また、日本国憲法20条の規定不備や昭和22年3月31日公布・施行の教育基本法9条の補完規定の念入りな不徹底に起因する事後の紆余曲折事態が宗教教育論を迷走させた経緯を解説し講義をする。さらに新「教育基本法」の改正点について講義をする。その上で、あらためて「宗教の定義」の諸相を概観する。関係法規は宗教の定義を他に委ねている。
 本講義は、決して、或る特定の宗教・宗派を価値ありとして判定して促進したり、または、価値なしと判定してそれを抑制したりするというそのような内容・方法を専らに考えるというような、とかくありがちないわゆる宗派信仰への導入をのみ考えるという狭義の宗教教育を構想する講義ではない。端的には自覚的寛容の態度育成の方途を構想する。種々の宗教と称されている現象事例を取り上げる。
 具体的には、身振り・音声・文字等の各教材、マルチメディア等を用いて、様々な題材を取りあげる。いわゆる神仏習合を彷彿とさせる広義の伊勢音頭、各地の民謡、歌謡曲、唱歌、数え歌、演歌、浪曲、説話、写真、古典音楽、詩、書など様々なジャンルの現象を観る。日常の実際生活の深層・表層面で、宗教的事柄が隠れたカリキュラム又は顕れたカリキュラムとして、人間形成に関与している諸相を考察する。
 到達目標(ねらい)  用語「宗教」の定義の諸相について、用語「宗教教育」の5つの教授概念について、ともに、客観的に概説できるようになる。宗教教育論議を、政策論議・法律論議すなわち法的思考に傾斜させないで、均衡して、教育的思考で、国公私立の全てに適用されている改正教育基本法第15条規定の具現化を構想できるようになる。
 授業スケジュール
第 1 回 はじめに 年間授業方針→適宜、時宜を得て順序変更あり 
     レポート課題(夏季休暇課題・学年度末課題)予告します
①「宗教教育」の序説として、日常生活で何気なく、うたったり、聞いたりしている「うた」を意識的に対象化して、そこから宗教的意味を考える(「蛍の光」、「アンパンマンのマーチ」、「御詠歌」など数種。受講生からの事例提起大歓迎)。
②「蛍の光」は、卒業式歌の典型で、学校教育でのいわゆる別れの通過儀礼(分離・移行・参入)の分離のうたである。この歌に学園生活での思い出が寄り添い、思い出に歌は語りかけて、人生の船出を促す歌でもあることは周知事である。だが、この歌はこれだけではない史的背景をもっていることに留意しつつ、視野を拡大・深化・高めつ、宗教教育を論じていく端緒にしていく。
③また、「アンパンマンのマーチ」の歌詞にも注目し、宗教教育の、内容論として、方法論として示唆している点について考察していく端緒とする。 
④乳幼児期~老人期のうたまで種々様々有ります。(→歌、唄、唱、謡、詠、謳)
⑤人は、母親の母胎に発生してから肺呼吸をすべく誕生するまでに、進化の過程の約37億年(例えば爬虫類の過程等)を経過して産声をあげる。産道を通過するときの暗闇の世界の体験は、生後の闇への恐怖の原初とも穿たれよう。また胎内に居るときの母胎の心臓の鼓動音・リズムは、生後も、回帰したい安らぎの郷愁の音のひびきでもあろう。人生で、危機的状況、限界的状況に直面し、そこでの対応として、安らぎを希求し、適応や順応が考えられる。そこに登場するのが楽器のオルガンである。とくにパイプオルガンのひびきは宇宙の気を引き入れての荘厳な振動音である。宇宙の音曲・声ともいえよう。声楽はその典型であろう。
⑥「図(譜)に乗る」考
⑦教育の場面(家庭教育・学校教育・地域社会の教育)
⑧親の信仰と未成年者の信仰 (家庭教育における宗教教育論議)
第 2 回 ①前回再認
②巷間、用語「宗教教育」をいかなる意味でとらえているのかを意識的に対象化する
③『広辞苑』での「宗教教育」の定義考
④用語「宗教教育」の教授概念を5類型で考える。さらに6類型目を想定するか否か
⑤宗教的情操教育の成立基盤をめぐる対立的2見解
第 3 回 法的思考(legal mind)から教育的思考(educational mind)へ
黒船来港前後史 (米国国内事情、リンカーンの演説(of,by,for)
大日本帝国憲法と教育勅語
リンカーン演説とマッカーサーと日本国憲法
日本国憲法と同第20条文言「宗教教育」問題
日本国憲法と(旧)教育基本法における文言「特定の宗教における宗教教育」問題
日本国内で自殺したイラン人に対する行政の葬送儀礼対応問題(禁忌の火葬措置)
日本の役人は他国の宗教規範に対応出来る知識・理解、態度、技能の習得が課題
新教育基本法における文言「特定の宗教のための宗教教育」及び第十五条規定
新教育基本法における旧態依然の問題
第 4 回 日本国憲法・教育基本法・初期社会科学習指導要領の相互補完関係
旧教育基本法第9条立法制定審議の推移相
旧教育基本法第8条立法制定審議の推移相
第 5 回 「宗教の様々な分類」
「宗教の定義集」 
「聖と俗」・「超越的関心」・「究極的関心」
いわゆる真の終戦(独立)後の宗教の定義の変遷考
     …真の終戦後刊行の『広辞苑』各版にみる定義「宗教」の変移考…
あなた(受講生)の「宗教」の定義を考えてみよう
あなたの「宗教の定義」
ビデオ(チリ炭鉱落盤事故→奇跡の生還)
第 6 回 教育観の分類 :  「開発主義か − 注入主義か」
                        メダカの学校型 - すずめの学校型
「本覚−始覚」
少年僧道元の疑問(疑団) 
比叡山では、「本来本法性、天然自性身」(人間は生まれながらに仏性を有しているから、その身そのままで仏となれる)
ならば「それでは何故、過去現在未来の諸仏は殊更に発心し修行する必要があるのであろうか」という疑問
修証一等
「宝徹禅師が暑さをしのぐために扇を使っていると、ある僧がやって来て、「風性常住、無処不周」(風性は常住にして、行き渡らないところは無い)であるのに、和尚は何故ことさらに扇を使うのですか」
あおぎさえすれば風が起こって涼しいけれども、あおがなければ暑い。
「あおぐ」に「修行」を当てはめると「苦しいとき、修行をすると、安らかである」という関係
只管打坐
第 7 回 洋の古今東西の教育史上の名言と教育観
あなたの教育観を示す言葉
教育の基本構造→教祖・方便物・弟子→方便物・弟子→弟子のみ(如是我聞)
試案:父母を記載していくことによれ家系図で考察するひとり一人のかけがえのなさ
第 8 回 ①『児童生徒の疑問詞の調査研究』(堀七藏)考→総合的学習(の時間)の基層論
②when,where,who,what,how
③疑問態「どうして」 :「お鼻はどうして顔の真ん中にあるの?」
            「人はどうして死ぬの?」
            「死んだお母さんはどこに行ったの?」
            「お墓の前を探してもいないなら、一体どこにい
            るの?」   
            「why」か、「how」か;
            「why」or「how」か、「why」and「how」か
④西行「何事のおわしますかは知らねども かたじけなさに涙こぼるる」の「何事」
⑤「何」から転じて「何事」と捕捉する脳の生理過程(神経回路)
第 9 回 ①複雑高等な宗教的知的作用に随伴する宗教的感情を物語る疑問詞・疑問態
  ( 不安定=情緒=何)→(安定した穏やかな感情=情操=何事 )
②西行詠歌「何事の…かたじけなさに涙こぼるる」の「何事」考
③「what-whatness」(W.ジェムス『宗教経験の諸相』)考
④「what(何)-whatness(何事)」 
  ←(W.ジェムスの疑問詞)と(西行の疑問詞)との擦り合わせ・統合試論
    (by 小山一乘、2012年度日本宗教学会、於 皇學館大學)で発表。
第 10 回 ①死・血・火を忌む伊勢の神宮の遙拝所で感涙詠嘆する仏者西行の宗教的感情考
 「蕃神(あたしくにのかみ・仏)」及び「国つ神」との習合的感情(小山一
 乘)
②仏者一遍の「熊野成道」考。
 布教に行き詰まって熊野本宮に参籠し、白髪の修験者・権現に「衆生往生は決定しているとの霊告」をうけた。一遍は覚醒。これを一遍は自ら「我が法門は熊野権現夢想の口伝なり」と語り、この本宮で「熊野成道」すなわち宗教的な覚醒を実らせたのである。一遍は以後踊念仏を民衆に勧め、阿弥陀名号の算を配って諸国遊行し、「仏のはたらき」と「国つ神のはたらき」とが習合する機会・場となる。
 熊野権現は、仏教者一遍に、民衆の仏性論、民衆往生決定論について決定的指南を与えた仏教教育者である。宗教教育者であるといえよう。
また一遍は今日でいう医療福祉にも顧慮した応病与薬的活動は周知事である。
③西行と一遍とは、心身において神仏習合を学習した典型事例であろう。
これらの事象が、宗教教育論から観て、開発的なのか、注入的なのか。本覚的なのか、始覚的なのか、受講生と共に考察したい。
第 11 回 対日米国占領教育改革政策が胚胎していた異文化理解問題の史実
宗教教育と宗教科教育(教育職員免許法に規定)との差異検討
だれでもの国語教育と、誰でもではない国語科教育との比較からの援用論
社会教育と社会科教育
適宜、現実の社会問題等を、順不同で取り扱う場合もある
第 12 回 対日米国占領教育改革政策が胚胎していた異文化理解問題の史実
宗教教育と宗教科教育(教育職員免許法に規定)との差異検討
国語教育と、国語科教育との比較
第 13 回 国語教育と宗教教育、国語科教育と宗教科教育
ゲーテとM.ミュラー
ゲーテ:「一つの言語を知る人はどの言語も知らない」(ゲーテ)
M.ミュラー:「同じことは宗教にも適用される。」「He who knows one, knows none.(一つしか知らない人は、どれ一つも知らないのである。)」→宗教研究にも言語研究にも比較が重要
第 14 回 命題「法は風土の産物」(モンテスキュー『法の精神』)考、
世界各国の風土、風習、習慣、慣習、法
日本国内で自殺したイラン人に対する行政の葬送儀礼対応問題(禁忌の火葬措置)身元不明のまま火葬措置。爾後判明。イラン人でイスラム教徒。在日大使館激怒。日本の役人はもっと異文化国の宗教の知識・態度・技能の学習をすべき、と(「行旅病人及行旅死亡人取扱法」→行旅人や病気になったり死亡した場合の取り扱いに関する法律。 行旅人が病気や死亡をした場合は所在地の市町村が担当することが規定されている。)
学校教育法にみえる用語考「目的−目標」、「判断カ−批判力」、「選択−決定」
第 15 回 比較法、各国の宗教教育
今後の宗教教育の教授概念検討(不均衡是正)政策・法律論議「何を教えることができないのか」の禁止事項教授概念論議、「何を教えることができるのか」の肯定的事項」
宗教教育の指導計画
第 16 回 シェフラーの教授概念検討(意図的用法・成功的用法、行動的解釈・非−行動的解釈、事実的言明文・規範的言明文(前半)
「祭壇の前では礼拝をすること」「祭壇の前では礼拝をするべきである」「祭壇の前では礼拝をするようにする」等の例文で検討する。
規範的言明の指示を、頭だけでの理解で是とするか、徹頭徹尾の適切な仕方による態度に現せてこそ是とするか。両義性がある。この問題を解説する。係争問題になるところである。
第 17 回 シェフラーの教授概念検討(意図的用法・成功的用法、行動的解釈・非−行動的解釈、事実的言明文・規範的言明文(後半)
第 18 回 宗教教育の指導計画 
児童生徒の宗教的疑問詞の解析
第 19 回 国内外の種々の歌、
種々の年中行事(節分、雛祭り、七夕など)、
合格祈願、
日常用語になった仏教用語(挨拶・会釈・我慢・玄関・工夫・覚悟・油断・娑婆等)、医療現場のターミナル・ケアー等、
通過儀礼(入学式、卒業式、入社式、成人式、結婚式等)、
生涯学習(胎教~gerogogy)等考察、
第 20 回 宗教教育の指導計画(児童生徒の疑問態)
国内外の種々の歌(宗教歌、民謡、伊勢音頭と全国の民謡との根深い関係)
里帰り伊勢音頭(→秋田県一日市神社の願人踊り他、盆踊りの歌等)
第 21 回 種々の年中行事(節分、雛祭り、七夕など)、流し雛考
 仏教伝来故事考(蘇我氏と物部氏との論争の真相解明)
 欽明天皇「試に礼ひ拝ましむべし」(『日本書紀』)考
 「難波の潟」考→仏教受容の諾否論か、祭祀方法論なのか
 ひな祭り・流し雛(人形)考
第 22 回 日常用語になった仏教用語
 挨拶・会釈・我慢・玄関・工夫・覚悟・油断・娑婆、刹那、金輪際、世界、
 無量大数、不可思議、清、浄など
第 23 回 医療現場のターミナル・ケアー等
 お迎え現象(慣れ親しんだ日常性の家庭などで、親しい故人が現れて、安心→
 あの世に対する不安・恐怖が軽減・解消され→安らかな最期・臨死)
 団塊の世代の大量退職→老齢社会→さらぬわかれ・死への社会的対応
 脳死(温かい死)、心肺停止(冷たい死)
 臓器移植(輸血を含む)、輸血拒否事例 
第 24 回 通過儀礼(入学式、卒業式、入社式、成人式、結婚式等)
第 25 回 宗教教育における、生涯学習 life-long learning  / 生涯教育life-long-education
発達段階の各期の特質に応じた教育を究明する教育学の宗教教育版考
prenatal education~pedagogy~andragogy~gerogogy考察
第 26 回 合格祈願・受験生所持のお守り考
合格したらそのお守りを身からはずした場合
大学の参禅会に入り活動し、盆には帰郷し、盆行事に参加する場合等
宗教の梯子か
第 27 回 自由討議(テーマは予め定め、宗教的情操教育の成立基盤を絡めて自由討議)
第 28 回 ビデオ視聴 (成人教育・社会教育)
第 29 回 受講生(希望者又は指名)又は授業者の提題を承けて、授業者・受講生全体の自由討議
第 30 回 まとめと今後の課題点
 
 準備学習 『広辞苑』などで「宗教」「宗教教育」の定義を調べておく。
日本国憲法第20条、旧教育基本法第9条、改正教育基本法第15条に目をとおしておくこと。
配付した資料をよく読み込んでおくように。
 履修上の留意点等 ①授業は原則として、シラバスの番号順に進めますが、先行き不透明のこの世の中ですので、本授業で取り扱うのが相応しい出来事などが発生すれば、当日は、臨時的に出来事を取り扱います。なお当日予定の当該番号の内容は、他日の他番号内容と適宜入れ替えします。番号をずらしていくことは原則として行いません。
②配付資料の受理は、遺漏なきよう確実に受け取ってください。欠席の場合は、縁を得た良き友人に、代わりに受け取っておいてもらい、速やかに、確実に、次回の授業までには、目を通しておくようにしてください。ただし、受け取りにダブりのなきようにしてください。
③配付資料を綴じるA4版のファイル表紙を用意しておいてください。

 
 成績評価の方法
試験
70 % レポート
小テスト
15 % 平常点
15 %
出席点




 教科書/テキスト テキストの指定はなし。
配付プリントで授業を行う。配付プリントを綴じるA4版のファイル表紙を用意しておくこと。
 参考書
 図書館蔵書検索 図書館蔵書検索
講義のなかで、適宜、紹介していく。
可能なら『教育小六法』を所持→出版社は問わない。
 学生による授業アンケート結果等による授業内容・方法の改善について 従来以上に、マルチメディア(動画・静止画・音楽・原典資史料)等を導入していく。
当日の授業のテーマについては、始業時に、予め、アナウンスすることにしているが、時には、敢えて、アナウンスせずに、帰納法的に思考してもらうことを求める場合もある。結果として、諸題材を提示して、それから、自分なりにテーマを設定してみてもらうことを求める場合があるので、脳の生理過程のためによく睡眠を取っておくように。

 
 関連リンク 宗教学関連の、授業及び研究に常に注意関心を巡らすこと。
詳細は授業の中で示す。