駒澤大学 シラバス照会

 履修コード/科目名称  345151 / 社会科学論B
 開講年度・期  2016年 後期  開講曜日・時限  水曜日 6時限
 単位数  2
 付記  ◎予・〔社会認識の思想〕
 主担当教員氏名(カナ)  枝松 正行(エダマツ マサユキ)
 副担当教員氏名(カナ)  
 授業概要  社会科学論Bでは、社会科学論Aで学んだ必然性の社会科学の成立史を基礎として、そのうえに合理性の社会科学成立史を学ぶことで、社会科学の方法を代表する対照的な二つの立場を統一的に理解する複眼思考の方法を提示する。さらに100年に一度といわれる世界金融危機の深刻化にあえぐ現代社会の分析に対してこの方法視角を適用し、現代資本主義の構造と変動の全体的把握と同時に社会科学としての未来社会論の構想も試みる。
 20世紀資本主義と革命史の過程は、諸資本の集積・集中・独占が進むなか、各国中央銀行を軸とした世界全体の金融システムも各国の軍事・警察権力を含む国家権力そのものも世界の通信社やマスメディアを中心とする情報通信ネットワークも世界中の食糧・資源・エネルギーの巨大市場も科学・芸術・文化・宗教領域の世界的な権威さえも、ほんの一握りの巨大金融資本家たちによって支配され独占される過程であり、その後の歴史は事実上彼らの思惑通りに展開してきたといってよい。
 なぜならば、歴史の必然的な過程においてもリスクの極小化を実現しうる合理性の社会科学は、世界中のありとあらゆる資源や機密情報のビッグデータをまさしく資本として独占しそれを自らの利潤極大化という目的達成の手段として活用しうる巨大金融資本家たちの合理的手段選択の結果としてのみはじめて、むしろ必然的に成立しえたのだからである。だが、「需要供給の法則の盲目的支配」としてのボラティリティーを自らの利潤極大化の死活条件とする彼らの資本独占そのものが「社会的洞察・先見による社会的生産の管理」をめざす合理性の社会科学本来の発展とは真っ向から矛盾する桎梏とならざるをえない。 
 こうして、”世界金融危機”やEU財政統合やTPPによって現代グローバル金融資本主義が目指している「新世界秩序」とは、人類社会が本史に至るまでにどうしても通過せざるをえない最後の敵対的形態となる。それゆえ、IMF/世銀体制からBRICS開銀/G20体制に移行しつつある21世紀の国際社会が担うべき人類史的課題と科学的な未来社会論もまた講義最終段階の学生諸君にとってはもはや明らかであろう。
 到達目標(ねらい)  授業の到達目標は必然性の科学と合理性の科学という二つの方法視角の複眼思考を試み、これを現代資本主義分析の方法として具体的に適用し、2016年現代世界の人類史的な位置と課題について世界をリードしうる日本人としての学生諸君の主体的な自覚と覚醒を促すことにある。
 授業スケジュール
第 1 回 資本主義社会の成立を条件とした必然性の社会科学の成立と新たな社会認識①
第 2 回 資本主義社会の成立を条件とした必然性の社会科学の成立と新たな社会認識②
第 3 回 国際金融資本による独占資本形成と世界戦略のための合理性の社会科学の生成
第 4 回 「理念と利害状況」の歴史転換視座と「宗教社会学」の有効性
第 5 回 世界戦略の「動機理解」というもう一つの分析視座と「理解社会学」の有効性
第 6 回 中括・必然性の社会科学と合理性の社会科学の総合としての「複眼思考」の方法
第 7 回 「資本一般」の論理次元と「資本主義的蓄積の一般的法則」と「歴史的傾向」
第 8 回 資本主義的蓄積の一般的法則と「利潤率の傾向的低落の法則」の発現・発展諸段階
第 9 回 利潤率低落とは「反対に作用する諸要因」の展開と「競争・独占」論理次元の資本主義
第 10 回 現代資本主義分析の発展段階論と20世紀革命史・虚構の検証①
第 11 回 現代資本主義分析の発展段階論と20世紀革命史・虚構の検証②
第 12 回 現代資本主義分析の発展段階論と20世紀革命史・虚構の検証③
第 13 回 「新世界秩序」の実現をめざす現代資本主義の”世界金融危機”と現代日本経済社会
第 14 回 全世界の富とビッグデータを独占するほんの一握りの収奪者とはいったい何者か? 
第 15 回 総括・社会科学の総合としての世界全人民による「収奪者の収奪」とアソシエーション社会
 準備学習  社会科学論の真の教科書は常に生成しつつある全体としての現実社会そのものであるから、現実社会の最新状況についてメディア等を通じて日頃から自分自身の意見や考えをまとめておくことが本講義に不可欠の準備学習となる。教科書は随時参照するが、参考書も各自読み進めておくこと。
 また毎回のノートは必ず読み返して復習し、とくに専門用語は抜き打ち確認テスト対策としても早期にマスターしておくこと。 
 履修上の留意点等  本講義は、理論編と検証・応用編とからなる。また理論編は前期Aの理解を不可欠の前提とするので、前期A・後期Bの通年履修は本講義の前提条件である。精励出席が前提であり、毎回出席を取る。講義は常に現実社会の動向を分析の俎上にのせながら進めるので質問や意見・要望があればカード等で積極的に提出すること。次回授業の冒頭に匿名で紹介・応答し、可能な限り講義内容にも反映させていく。必ずノートを取り、復習すること。専門用語については確認テストも随時行う。
 成績評価の方法
70 % 試験
10 % レポート
10 % 小テスト
10 % 平常点





 教科書/テキスト 長田浩著『希望の現代経済』西田書店、2007年
 参考書
 図書館蔵書検索 図書館蔵書検索
1. 本山美彦著『アソシエの経済学』社会評論社、2014年
2. 副島隆彦著『官製相場の暴落が始まる』祥伝社、2014年
3. 岩本沙弓著『経済は「お金の流れ」でよくわかる』徳間書店、2013年7月
4. 中野剛志編著『TPP黒い条約』集英社新書、2013年6月
5. 西内啓著『統計学が最強の学問である』ダイヤモンド社、2013年1月
6. 副島隆彦著『ぶり返す世界恐慌と軍事衝突』祥伝社、2012年
7. 関岡英之著『国家の存亡』PHP新書、2011年
8. 長島誠一著『社会科学入門』桜井書店、2010年
9. 本山美彦著『金融危機後の世界経済を見通すための経済学』作品社、2009年
10. 北原勇・鶴田満彦・本間要一郎編集『現代資本主義』有斐閣、2001年
11. 芝田進午著『実践的唯物論への道』青木書店、2001年
12. 松原昭著『現代社会の生活と労働』御茶の水書房、1990年
13. 佐藤慶幸著『ウェーバーからハバーマスへ』世界書院、1986年
14. 松原昭・清水嘉治編著『経済政策論を学ぶ』有斐閣選書、1986年
15. 大熊信行著『生命再生産の理論 上下』東洋経済新報社、1974,75年
16. 大塚久雄著『社会科学の方法』岩波書店、1966年
17. 松原昭著『労働の経済学』早稲田大学出版部、1965年
18. 芝田進午著『人間性と人格の理論』青木書店、1961年
 学生による授業アンケート結果等による授業内容・方法の改善について 前年度は「授業アンケート対象外科目」であったが、例年通りカードを利用した学生諸君との活発な意見交換を交えることによって学生諸君の質問・意見・要望には毎回100%対応し、学生諸君の修得度は良好だった。今年度は、指定教科書もより効果的に活用して現実社会そのものの最新動向を科学的に分析できる方法態度の育成のためにより適切に指導していきたいと思っている。
 関連リンク