青木 真
『家庭内児童虐待について』
体罰の認識とその世代性
key word: しつけ態度 児童虐待 世代性
【問題】
児童虐待とは一般に身体的虐待・ネグレクト・心理的虐待・性的虐待の四つに分類される。98年度に児童相談所で扱った児童虐待の相談件数は6932件であった。その内訳は身体的虐待が53.0%、ネグレクトが30.4%、心理的虐待は9.4%、性的虐待が5.7%となっている。身体的虐待がその半数を占めている。身体的虐待を行っていた親の大半が良いわけとして「しつけの一環である。」「体罰が行きすぎた。」などを挙げている。つまり、虐待を虐待と認識できていない親が多いと言う事である。
児童虐待の定義と言う事では先に述べた通り親はそれをしつけや体罰と考えている場合があるが、重要なのは親側の理論ではなく子ども側の理論であると考える。先の厚生省の発表でも子どもが苦痛を感じるものは虐待として捉えるとの見解を打ち出した。
虐待が起きてしまう理由として考えられているのは家庭や地域における子育て機能の低下、それに伴う育児不安の増加、虐待の世代間伝達などがある。その中でも虐待の世代間伝達は虐待を受けていた子ども達の後遺症的なものであると考える事が出来る。
本研究では、親が自分のしつけ態度や体罰をどう認識しているか、しつけや体罰に世代性は有るのかを調査する事によって児童虐待と言う問題について考察していきたい。
【方法】
親子関係診断テスト(EICA)を使用した。これは情緒的支持(ES)・同一化(ID)・統制(CO)・自律性否定(AU)・統制性(CON)を求め親子関係を調査するものである。調査の内容は、子どもから見た母親の態度に関するもの(EICAをし様、53枚回収)、母親が子どもに思われていると考える態度(EICAを元に作成、42枚回収)、母親による実母の態度(EICAを使用、36枚回収)の3種類である。これにより子ども−母親−祖母という三世代間に渡るしつけ態度の類型を求めた。
【結果と考察】
得られた結果からそれぞれしつけ類型を求め、その類型を相互に比較した。母子間のしつけの相互認識を検討した結果有意な差が見られた(t=|56|,P<0.05)。このことにより、受容性が高い母子ほど相互認識が高いと言える。しつけにおいて、親が子の人格や全存在を受容し尊重する事は重要且つ大切な事であると考え得る。つぎに、子から見た実母のしつけ態度認識の世代性の考察を行ったところ、有意差は見られなかった。しつけとは、単に自分の親からのみ学ぶものではなく、その時代時代の風潮や環境による影響も存在するからではないだろうか。最後に、母親のしつけ態度の世代性について考察したところ有意差が見られた(t=|3.08|,P<0.05)。実母に対し受容性を強く感じた母親ほど、自分が受容性を持って子どもに接していると考えていると言う事である。自身の中でそのような解釈が行われていると言う事は、受容性が子にとっては好ましいものであると言える。
今回の結果では、受容性が他の性質よりも強い相互認識の一致と世代性を示した。この事は何ら児童虐待の危険性を示唆するものではなかったが、実母に受容性も無い場合には何が強い世代性を見せるかを考える必要性はあるのではなかろうか。