福住 秀樹
『異性間の対人魅力に関する要因とその性差』
key word: 対人魅力、好意度、アンダーソン
【問題】
対人魅力を規定する要因としては、近接性、外見的魅力、態度や性格などが挙げられる。これらの要因の中の性格に関する研究ではアンダーソン(1968)の研究がある。アンダーソンはどのような性格特性の人が好まれるか、また好意を持てない好ましくない性格はどんな性格かを555の性格特性語を用いて調査した。結果としては、最も好まれる性格は誠実さや正直さであり、その次に好かれているのは知的で賢明であるなど知性的であること、また思いやりがあり頼りになる心の広い性格などが好まれている。逆に、最も好まれていない性格には好まれる性格とは逆のうそつきやイカサマ師などの不誠実さ、不正直さなどが挙げられている。
そこで本研究ではアンダーソンの研究をもとに、現代の若者が異性を対象とした時にどのような性格特性をもった人に好意を抱くのかをアンダーソンの研究結果と比較しながら検証し、またその性差について検証する事を目的とした。
【方法】
大学生の男女90名(男性45名、女性45名)に対して、アンダーソンの研究で得られた性格特性語60語(上位30語、下位30語)についてそれぞれ、最も好ましい場合6点、どちらでもない場合3点、最も好ましくない場合0点の0〜6点の7点尺度で評定させ、それぞれの性格特性語の好意度を求め、アンダーソンの研究結果と比較検証した。
【結果】
@男女全体の結果
まず第一に男女全体の上位30語下位30語の各特性語の好意度を求め順位づけを行った(表1)。好意度とは各特性語が得た0〜6尺度得点の平均値を算出したものであり、数値の範囲は0〜6で数値は大きいほど好意的である。
順位の点でアンダーソンの研究に比べて変化している点として、上位30語では「信用できる」(5位→1位)、「信頼できる」(14位→3位)、「信じられる」(30位→4位)といった人としての信頼性に関する項目が上位に上がっている。これに対して「知的な」(7位→25位)、「賢い」(11位→27位)といった知性に関する項目が下がっている。その他に目に付く変化としては、「おもしろい」(23位→14位)、「ユーモアのある」(27位→16位)といったユーモア性に関する項目が順位を上げ、アンダーソンの研究ではともに上位に上がっていた「当てにできる」(6位→22位)、「忠実な」(4位→28位)といった項目が順位を下げている。
下位30語では「残虐な」(4位→1位)、「卑劣な」(9位→2位)、「心ない」(21位→11位)といった冷酷さや無感情を表す項目が上位に上がっている。その他の変化としては「侮辱的な」(14位→6位)、「礼儀知らず」(26位→10位)、「わずらわしい」(27位→12位)といった項目が順位を上げており、それとは反対に「不真面目な」(13位→26位)、「当てにできない」(11位→23位)、「どん欲な」(16位→28位)といった項目が順位を下げている。
好意度の点から比較すると、上位30語の中の「頼りになる」(5.36→3.73)、「思慮深い」(5.29→3.89)、「私心の無い」(5.1→3.38)、「高貴な」(5.07→2.83)や下位30語の中の「どん欲な」(0.72→1.63)、「攻撃的な」(0.88→1.8)、「好戦的な」(0.86→2.02)の項目に変化が見られた。
A男女別の結果の比較
男性、女性それぞれの好意度を求め順位づけをおこなった。上位項目では「頼りになる」(男性28位、女性6位)の項目に差が見られ、下位項目では「わずらわしい」(男性16位、女性4位)、「礼儀知らず」(男性12位、女性12位)、「侮辱的な」(男性3位、女性12位)の各項目に差が見られた。
各項目のの好意度についての男女間の比較をしたところ、「頼りになる」の項目に男女差が大きく見られた。その他の項目に大きな差は見られなかった。上位下位それぞれ30項目について男女間の性差を検証する為t検定を行ったところ上位下位項目とも性差は見られなかった。
【考察】
以上の結果から、好まれる性格や好まれない性格は、時代が反映され、時代とともに多少なりとも変化しているのではないかと考えられる。
アンダーソンの研究結果で得られたものと同様、本研究においても男女差は問題にするほどではないものであると思える。男女差については今後更なる研究が必要である。
また本研究では再調査できなかったアンダーソンの研究におけるその他の性格特性語についても再検討が必要である。
【参考文献】
斎藤 勇(編) 1987 対人社会心理学重要研究集2 対人魅力と対人欲求の心理 誠信書房
対人行動学研究会(編) 1986 対人行動の心理学 誠信書房
古畑和考 鈴木康平 白樫三四郎 大橋正夫(編) 1984 現代社会心理学