大野 美行
『映像による速度判断』
key word: 速度感、シミュレーション、世代性
【問題】
過去の自動車の速度を推定させた研究では、「低速度は過大評価され、高速度は過小評価される」という報告が数多くなされた(Hakkinen 1964,Chubb&Ernst 1964)。
近年では自動車学校の教習などでドライビング・シュミレーターを用いた教習も増えており、今後子のような映像によるシミュレーションがさらに多くの場面で用いられると予想される。そこで本研究では、映像による速度判断を視覚的要素だけをたよりにフィルム法を用いて行い、標準刺激を提示する条件としない条件の違い、また、世代性による違いを比較することにした。
【方法】
被験者: 19歳から86歳までの男子12名女子12名の合計24名。
実験装置:撮影に使用した車両は1600ccクラスの乗用車で、撮影は私と友人の二人で行い、友人が指定した速度を維持し、私がその速度での映像を録画した。録画した映像は40km/hから80km/hまでを10km/hごとに5段階の速度である。
手続き:フィルム法による。被験者に40km/h・50km/h・60km/h・70km/h・80km/hの5段階の速度をランダムな順序で提示し、速度表かをしてもらった。その際、聴覚的な手がかりを取り除く為にビデオの音量を0にして行った。さらに基準速度(60km/h)として標準刺激を提示した場合の速度判断を同じ被験者に行った。
【結果】
図1は、標準刺激を提示した条件と提示しない条件での主観的速度評価値の推移を示している。この比較において、両条件の間に有意な差(t=2.07 df=238 P<0.5)が認められた。標準刺激を提示しない条件の方は推移の幅が大きく、標準刺激を提示した条件の方が推移の幅が小さい。両条件ともに50km/hと60km/h間を境に過大評価から過小評価に変わっている。また、速度別に見ると、70km/hで有意な差(t=2.12 df=13 P<0.5)が、50km/hで有意な差(t=2.98 df=46 P<0.5)が認められた。
図2は、標準刺激を提示した条件での世代別の主観的速度評価値の推移を示している。この比較では世代を青年層(19歳から25歳までの男女各4名)・中年層(34歳から53歳までの男女各4名)・老年層(61歳から86歳までの男女各4名)の三層ににわけ分散分析したが、有意な差は認められなかった。しかし、速度別で見ると40km/hにおいて青年層と老年層の間に有意な差(t=3.19 df=14 P<0.5)が、認められた
【考察】
本研究により、標準刺激を提示する事でより正確な速度判断が可能になることをしめした。言いかえれば何も指標となるものがない状態での速度判断は困難であるといえる。しかし、遅すぎず早すぎず適度な速度であれば、ある程度の速度判断は可能であるとも考えられる。
世代間による比較では、速度によっては世代間の違いがあるということが示された。青年層・中年層・ともに40km/hにおいて老年層に大して優位な差が生まれた事から,老年は低い速度でもかなり早めに感じてしまう事が判った。高齢になると速度を正確に判断するが事困難になると思われる。
【参考文献】
中島 源雄 1987年 交通安全の研究 九州大学出版 P180〜190