鈴木 続素

『文章表現が情報認知に与える影響』

key word: 新聞記事・見出し・情報認知


【問題】


 現在、日本は世界でも希な宅配制度を実施している事もあり多くの人が何らかの新聞を読む習慣を持っている。また情報機器の著しい発展に伴い、ワープロで処理された文章と昔ながらの手書きの文章とが混在した毎日を送っている。吉村(1991・1992・1993)は一連の研究で、丁寧に書いた場合ワープロ打ちの印刷文字と手書き文字との間には内容に対する評価に違いは無いことを明らかにした。そこで本研究では、新聞記事とワープロ文字と手書き文字とでは文章の内容把握力に差が見られるのか否かについての比較をおこなった。さらに、文章を読解する際の主題把握に重大な影響をもたらすとされる見出しの役割について調べるために、見出し部分に様々な加工を施して被験者の内容把握に影響が見られるか否かの調査も同時におこなった。


【方法】


 被験者: 大学生1グループにつき10名、合計140名

 刺激材料: 新聞記事とそれをワープロで打ち直したものと手書きで書き写したもの。それぞれは、見出しの部分をそのまま掲載したもの、削除したもの、そのままの文字であるが手書きで作成したもの(新聞記事とワープロ手打ちに限る)、文章とは正反対の内容を掲載したもの、文章とは全然無関係な内容を掲載したものの4条件(手書きの場合は3条件)でなっており、合計14の条件で構成されている。

 手続き: 刺激の被験者に対する純粋な影響度を調べるため、刺激と同種の形態のダミーを2種類用意する、その上で14のグループに分けた被験者それぞれに刺激とダミーを配布した。被験者には、これ以後も何種類かの刺激を続けて配ることなどを説明し、10分間に渡って黙読してもらう。10分が経過したら、その刺激を回収するとともに次の刺激を渡し、ダミーではない実験用の刺激の内容に則した見だし部分を被験者自らによって作製してもらい実験を終了した。


【結果・考察】


 新聞・ワープロ打ち・手書きにそれぞれ見出しの4条件を加えた14グループの項目のうちで、文章の内容に則した見出しをどれだけ被験者が作れたのかを見てみると新聞・ワープロ・手書きとも元の見出しをそのまま掲載したものと削除したものが高い正答数を出し、無関係な内容を掲載したもの、正反対の内容を掲載したものは低い正答数を出していたことがわかった。

 しかし、このままでは実験の結果としては不完全である。なぜならば、被験者が文章の内容よりも正反対・無関係な見出しに強く影響を受けてしまった場合もありうるからである。そこで、刺激に書かれた各見出し条件に被験者がどれだけ影響を受けたのかを見るイ必要があった。調べて見ると、今まで正反対など低い正答数だとしか見られていなかったものが、実は刺激の見出しに強く影響を受けていた事が明らかになった。

 正答率と影響度を比較して見ると、正答率が高かった手書き、ワープロ、新聞の順とは異なり影響度では逆に新聞、ワープロ、手書きの順になっていた。また、見だし条件でも無関係、正反対の順に並んでいた正答率は影響度では正反対、無関係の順になるなど大きな変化が見られることになった。このことから、文章の内容を反映する見出しは、被験者の内容把握に対して大きな影響力を持っていることとともに、文章の内容を反映していない見出しであっても、その文章が新聞記事やワープロなどそれ自体が高い影響力を持っているものの場合はそれに引っ張られるかのように影響力が発生したものと思われる。今後は文章だけの研究ではなく、男声・女声に音読された場合との比較など多方面への検討が必要であろうと思われる。