レポートの書き方マニュアル

 論文やレポートというと、にがてだという人が多いようです。それは、レポートと文芸作品が似たようなものだというイメージのせいかもしれません。小説を書くにはある種の才能が必要であり、誰にでもかけるものではありません。だから、同じようにレポートも難しいと考えるのでしょう。しかしこれは誤解です。

・ レポートが苦手なのは小説とレポートを混同しているための誤解からくるものだ。

・ 小説には文章力が必要だし,『型』もないので小説を教えることは難しい。

・ レポートには文章力も文法上の工夫もいらないので,読んだ人にわかる文を書ける人なら誰でもレポートは書ける。
 

すなわち、

・ レポートとは何かを知り,それを応用するコツさえつかめば,文章を書くのが苦手な人でも優れたレポートを書くことは難しくない。

のです。企業に入ると、業務報告や企画書などレポートを書く機会が多くなります。いまのうちにレポート道を極めることが肝要です。

なぜレポートを書くのか?

自分の考え,主張… それらを形にして自分自身と誰かに報告するため。

課題1:あなたにとって,「自分自身のなかではっきりさせたいこと」,あるいは「他人に伝えたいこと」とはどのようなことがありますか。箇条書きで答えよう。

レポートとは何か?

レポートの定義は、レポートが作られる局面によって、微妙に変わりますが、その要件は、相手に短時間に主張を伝えることにあるので、自分の主張を簡潔な文により、よみやすく表したものといえるでしょう。したがって、下記の構成により、簡潔に主張を示すものがレポートといえます。なお、ビジネス文書には、問いはあらかじめ与えられており、結論を最初に示し、次に論旨を説明する形式もあります。

【レポートの基本構成】

《問い》(省略される場合もある)

《説明・検討》

《答え・結論・主張》

課題2:次の《問い》に対して,あなたの考えを《説明・検討》《答え・結論・主張》の構成にしたがって,箇条書きのメモのかたちで書いてみよう。
《問い》

・大学へ入学するための選抜試験(入試)は必要だろうか?

《説明・検討》

 

 

 

 

《答え・結論・主張》

 

課題3: 「レポート」にふさわしいタイトルを3つ考えてみよう。
●「レポート」のタイトル

  ・

  ・

  ・
 

課題4:次のテーマについて,「レポート」にふさわしいタイトルをつけて,簡単に本文を書いてみよう。

【テーマ】旅行について

タイトル :

本文 
 
 
 
 
 
 
 

レポートに何を書くか?

疑問を持つこと,それがレポート作成の第一歩

【まず,自分の関心にしたがってテーマを「問い」の形に作ってみる】

・レポートに「何について書くか」をテーマ(主題)という。

・テーマを考えるときは,関心があること,疑問に思っていること,主張したいことなどを疑問文の形にしていくつか考えてみる。

・そのとき,5W1Hを利用すると,思いつきやすい。

What 何が?
Who 誰が?
Where どこで?
When いつ?
Why なぜ?
How どのようにして?
例)「音楽」を話題に,レポートのテーマ(主題)を考えてみる。
日本音楽とアメリカ音楽の違いは何だろうか?(What)

現在の日本音楽界で注目すべき人はだれだろうか?(Who)

日本のCDの値段が高いのはどこに問題があるのだろうか?(Where)

いつ頃から歌謡曲が低迷したのだろうか?(When)

なぜ,現在の歌謡曲は低迷しているといわれるのだろうか?(Why)

どうすれば日本音楽の質を向上させることができるのだろうか?(How)

・テーマ(主題)はタイトル(レポートの表題,題名)と同じでなくてもかまわない。〈タイトルだけでは内容がはっきりしない場合もある〉
例)  レポートのタイトル(表題・題名) 
「情報化社会における個人のプライバシー」
→テーマ(主題)その1
 「どうすれば情報化社会のなかで,個人のプライバシーを守る事ができるだろうか?」

→テーマ(主題)その2
 「情報化社会の中で,どんなとき個人のプライバシーが守られなくなるのだろうか?」

課題5:あなたが興味関心を持っていて,レポートに書いてみたい話題を一つ以上あげて,その話題についていくつか疑問文の形でテーマ(主題)を考えてみよう。
【話題】

【テーマ】

 

【話題】

【テーマ】

【問い(テーマ)についての基本的な情報,知識を得る】
小論文 :入社試験の問題の場合は自分の持っている知識で回答する。

レポート :辞典,事典や本,アンケート,調査などの情報を参照して回答する。

・辞典,事典を使ってテーマについて調べ,役に立ちそうなものはメモかコピーで保管して利用する。
※辞典には国語,漢和,英和などがあり,事典には百科事典のほか,分野別事典があり,心理学事典や社会学事典,宗教学事典などがある。

・分からない事があれば,まず百科事典を引いてみる。少なくとも2種類以上の百科事典を引いたほうがよい。
※百科事典を引くときは索引の巻から検索すると関連項目も引く事ができる。

・『現代用語の基礎知識』『imidas』『知恵蔵』などの現代用語の事典は毎年新しいものが出ていて,現代の社会の動きにも対応している。

・新聞の縮刷版を利用する。縮刷版は一冊に一ヶ月分の新聞が掲載され,事項別の索引もついている。

課題6:課題5で選んだ話題やテーマについて,何を使ってどういうことを調べたか,調べた本と,調べた内容について書きなさい。
[話題・テーマ]

 

[調べた本]

 

[調べた内容]
 

レポートをどう書くか?

レポートのできは書き始める前にほとんど決まる

【資料収集と資料研究】(受験小論文では不用)

・レポートを書くときは,できるだけ多くの資料にあたるべきである。概説書を一冊読んだだけでレポートを書こうと思ってはいけない。

・資料を読んでいて,少しでもレポートに役立ちそうなものがあったら,ノートやカードにメモしておく。

・参考にした文献資料は,

著者『書名』(出版社,発行年)

 という形式でリストを作っておき,レポートの巻末に「参考文献」として必ず添付する。


参考)引用について
木下是雄『レポートの組み立て方』(ちくま学芸文庫)より
 はじめてレポートを書く人たちに対しては指導者は,「1冊の本だけにおんぶしてレポートをつくってはいけない」と注意するのが常である。その根拠は次のようなことであろう。

(a) レポートは,元来,自分の立てた方針によって材料(資料)を集め,その材料にもとづいて自分の意見をまとめるべきものである。

ところが,

(b) 1冊の本だけに頼ってレポートをつくると,その本の著者の意見(すなわち他人の意見)に支配されやすい。

(c) 仮にその著者の意見ではなく,その本に事実として記述されていることだけを引用するとしても,次の二つの問題が残る。

(i) どの〈事実〉をえらびだして記述するかの選択に,著者の考えがはたらいているはずである。

(ii) 〈事実〉として記述してあるものの中に,その本の著者が事実 ――ほんとう(真)である―― と信じているにすぎないものが混入している恐れがある。


【テーマと話題に関連した〈思いつくままのメモ〉を作る】
〈思いつくままのメモ〉とは,
    「話題」から「テーマ」を絞るとき,

    「テーマ」に即した「アウトライン」を組み立てるとき,

 に頭の中で考えたことを思いつくままに紙に書いたメモである。

 

課題7:課題6において図書館やインターネットで調べ,思いつくままにメモを書こう。

【全体のアウトライン(構成)を考える】

レポートのタイトル(題名)を決める。
 ・テーマ(疑問文)の内容を表すのにふさわしいタイトル(題)を考える。

 ・テーマをそのままタイトルにしても悪くはないし,副題としてもよい。

 

課題8:テーマをレポートにする際のタイトルを考えよう。
小論文・レポートの仮の目次あるいは骨組みを作ってみる。
基本構成の3つの要素

 《問い》(省略される場合もある) =序論

 《説明・検討》 =本論

 《答え・結論・主張》 =結論


参考)アウトラインをつくる 
古郡廷治『論文・レポートのまとめ方』(ちくま新書,1997)より
 文章には起承転結や序論・本論・結論といった部分がある。短い文章はだれでも特段の準備もなく各部分を書く。しかし,論文やレポートでは,書く前に,

 ・構想を練りアウトラインをつくる

ことが大事である。この過程は考えをまとめるためにも,あるいは情報を論理的に順序づけるためにも役立つ。

 アウトラインのつくり方は千差万別である。「日本人の精神構造」の場合,たとえば,次のようなものがつくられよう。

日本人の国民性の大きな特徴の一つにグループ主義がある。

日本人がグループ主義者であることはその言動によく現れている。

その具体例をいくつかあげる(たとえば,子供は自分を正当化する手段として,よく「みんな」という言葉を使う)。

そのようなグループ主義はどこから生まれてくるか。

→家庭,学校,社会における教育からである。

日本人には顔がないといわれる。

それはこの国民性からきているのだ。

 アウトラインは人に見せるものとは違う。他人には理解できなくても,自分にとって知識を整理し,文章を書くための役に立つものとなっていればそれで十分である。著者はこんなアウトラインをもとに文章をつくっていく。
科学技術の報告書のアウトライン 
 科学技術のレポートや論文,報告書などは構成が比較的はっきりしている。ここではアウトラインというより,まず,目次(章立て)をつくってみるとよい。

 ワープロで打った文書には種々の間違いが現れる。そこで卒業研究として,間違いを訂正するシステム(プログラム)を設計し,その実験結果を報告することにしたとする。すると,この研究の最初のアウトライン(目次)として,たとえば,次のようなものができるだろう。

1 はじめに
 1・1 研究の目的
 1・2 関連研究
2 間違いの検出と訂正
 2・1 間違いの分類
 2・2 間違いの検出
 2・3 間違いの訂正
3 システムの設計
 3・1 システムの概要
 3・2 システムの動作
4 実験と評価
 4・1 実験例
 4・2 性能の評価
5 おわりに
 このようなアウトラインには,各部にどんなことを書くかをメモ的に入れておいたり,箇条書きにしておくと便利である。

 どんな形のアウトラインでも,いったん決められたらそれで終わりというものとは違う。実際に文章(書)を書く過程で章や筋立ては変わっていく。章節の見出しに使う語句も変わる。アウトラインは各部で書くべき内容を規定するが,逆に実際に書いてみる作業がアウトラインの方に影響する。著者はアウトラインにより文章を書き始め,書いた文章によりアウトラインを変えるという過程を何回も繰り返す。よい文章はこの過程を通して生まれるものである。


課題9:自分の選んだテーマについて,アウトラインを作ってみよう。

【書き始めてみる】

注意すべきこと!
・他人の説と自分の説の区別は明らかにする。文献からの引用は「    」などでそれとわかるようにし,出典を明らかにする。

・出典を明らかにしたり,用語の解説などのため,必要最小限の注(註)をつける。

・そのレポートに使った参考資料は,すべて最後に文献リストを作る。

・主張したいことを広げ過ぎないように気をつける。

・感情的になったり,興奮して力んだ表現にならないように気を付け,冷静に論述する。

・誤字は避け,言葉遣いも話し言葉にならないように気をつける。


参考文献

西研/森下育彦『「考える」ための小論文』(ちくま新書,1997)
鷲田小彌太『知的生活を楽しむ小論文作法』(三一新書,1992)
樋口裕一『入試小論文合格マニュアル』(桐原書店,1991)
古郡廷治『論文・レポートのまとめ方』(ちくま新書,1997)
木下是雄『レポートの組み立て方』(ちくま学芸文庫,1994)
澤田昭夫『論文の書き方』(講談社学術文庫,1977)
ウンベルト・エコ,谷口勇訳『論文作法−調査・研究・執筆の技術と手順』(而立書房)
藤田節子『自分でできる情報検索』(ちくま新書,1997)

付録:小論文上達の技法 
鷲田小彌太『知的生活を楽しむ小論文作法』(三一新書,1992)より
8・2 書く技法

8・2・1 たくさん書く

 気ままに,心の命ずるままに書く,というのではない。それでは,いくらたくさん書いても,ほとんど無駄である。私は感性の人だ。私の内部にある『声』にうながされて書くのだ。このような人が,本格的に,たくさん書き始めると,まるで駄目になる。かえって,下手になった,と本人は感じてしまう。実際に,下手のまま,だらしないままで終わる。

 誰にも書く能力は備わっている。ただ,使わないのである。使うためには,書くより手はない。よほどの「才能」でもないかぎり,ちょっと書いて,すらすら,というわけにはいかないからである。

 最初はよほど面倒に思えるかもしれないが,自分は,何にアクセントを置いて,どのような構成や展開順序で書こうとしているのかを,つねに意識して書くことである。自分なりに,構成と順序を決めて書くのである。たくさん書くことは,この構成や順序が自ずと身につくことである。その人の技術になることである。この技術習得には,常に,練習しかない。

8・2・2 読んでもらう
 書くことは,自己表現である。私は,読まれるために書いているのではない。読まれなくてもよい。自分のために書いているのだから。こういう人は,ほとんどの場合上達しない。

 自分のために書く。自分が唯一の読者である。こう言える人は,自分の顔を鏡に映して,恥ずかしくない人だ。しあわせな人なのだ。同じように,自分の文章を読んで,恥ずかしくない人はしあわせだ。自分の中に,批判者を持っていない人を,能天気という。

 書いたものを読んでもらう。自分で恥ずかしく感じなくても,辱めてくれる。欠点を指摘してくれる。予期しない長所を発見してくれることだってある。辱めを受けるが,励ましも同時にもらうのである。

 上達の最良の道は,ほめ上手の人に読んでもらうことである。もちろん,欠点を指摘することを忘れない人である。読んでくれる人は,えがたい宝なのである。

 読む人とは,読者である。学校の先生である。予備校の教師である。大学教授である。彼らがよき読者,批評家であるかどうかの偶然に,かなり大きな上達のウエイトがかかっているといってもよい。偶然にまかせないためには,したがって,自分みずから,よき読者を探す工夫が必要だ。それが意外と,上達の近道になるのだ。

8・2・3 下書きをしない
 下書きは,最初から,しないにこしたことはない。初めから,清書のつもりで書くのである。下書きしないで書くなんて,と言われるかもしれない。

 下書きをしない代わりに,詳しい「目次」をつくることを奨める。「コンテ」であり「シナリオ」である。「小論文」はかなり詳しい「目次」をつくっても,たかが知れている。それをつくるのである。「基本要素」「構成」「展開順序」のそれぞれを,「見取る」図を描くのである。この「目次」にしたがって,初めから,精神を緊張させて,書くのである。書きなおしを頼まずにである。もちろん,それでも,書き直しはある。清書をしなくてはならない羽目に陥る。でも,最初に書き直しをしないと覚悟して書くのと,書き直しがあるからと思って書くのとでは,ずいぶん出来上がりに違いが出るのである。どんなに直しても,最初がずたずたならば,どうにも直しようがないものなのである。

 「小論文」は短いから,書きなおしは簡単だ,と思うなかれ。「小論文」は最も「構成」のしっかりした文章なのである。文の構成力は,「小論文」で決まる,と思ってもよい。ここでいい加減に書いていると,大本が駄目なので,万事にゆきとどかなくなる。だらしのない文章に終始することになるのである。

 それに,1000字なら書き直しも出来る。しかし,500枚なら,書き直すかどうかである。そんな労力があるのなら,別なものを書くことを奨めたい。

 「下書き」の問題も,結局は,慣れである。あんがいに,下書きなしで書くのは,簡単なのである。面白いのである。おそらく,ワープロの面白さは,下書きを追放したことにあるのではないだろうか。