ゼミ(学部)を志望する人へ


経済学部で情報技術を学ぶ意義

米国や日本のような先進国では、サービス業がGDP(国内総生産)の60%以上を占めています。
一方、サービス業の生産性は製造業のそれに比べると決して高いとは言えません。

サービス業の生産性が低い原因はいろいろ考えられます。
例えばサービス業の多くが国際競争にさらされていないため自由競争による進歩が遅く、さらに規制によって保護されていることがあります。
市場の成熟により対象となる顧客が多様で複雑になったことも一因でしょう。企業間取引はもとより、消費者向け取引では複雑な個人の顧客を相手にしなければならないので大量生産的なメリットを追及しにくいのです。

このような現状を打破すべく、米国ではサービス業の生産性を高めるためにもっと科学とIT(情報技術)を使うべきだという趣旨の「サービスサイエンス」の重要性がいわれています。提唱したのはIBMのアルマデン研究所 (概要はこちら)です。これは、「直感」に頼らず「科学的論理性」を尊重しサービスを考えようということです。

科学的論理性は、サービスにとどまらず今や経営の重要な要素となっています。
その背景には、時代とともに企業経営が「複雑化(非線形化)」していることがあります。
エレクトロニクス産業を例に、経営における「複雑化」について少し考えてみましょう。

高度成長期以前は、右肩上がりの経済成長の中、国内で製品を生産し、国内で売るビジネスが中心で、製品のモデルチェンジは1年ごとでいいという比較的単純な経営でした。しかし、現在では、部品の調達も生産も物流も販売も、完全にグローバルを念頭に置くことが当たり前になり、製品の寿命は3カ月ほどと格段に短くなったのです。
 かつては「調達」「生産」「物流」「販売」といった経営の各要素がそれぞれ独立して最適化されていれば、企業経営はうまくいっていたのですが、もはやそれで済む世界でなくなっていることは明らかです。
各要素を組み合わせた企業全体の経営システムを最適化しなければ、激化する競争に勝つことはできないのです。製品寿命の短縮は、「複雑化」「非線形化」に拍車をかけています。

どんなに優秀な経営者であっても、複雑なシステムとなった企業経営で全体最適解を導き出すことは容易ではありません。
企業内の各部門の管理者が部分最適解を追求しても全体最適につながるとは限らないのです。
例えば、工場における生産性をいくら向上しても、販売実績のフィードバックと的確な販売予測によって生産計画を制御しないと機会損失や不良在庫が発生してしまうのです。


 従って、経営者は優れた構想力に加えて、科学的論理性を補うツールを使いこなさなければならないのです。すなわち従来の統合情報システムや通常の業務システムだけでなく、シミュレーションなどの新しいIT(情報技術)の利用が重要性を増すことになるわけです。

これからの経営では「調達」「生産」「物流」「販売」など、企業経営のすべての要素をコンピューター上に再現し、時間の進行に沿って各要素の変化を数字で定量的に理解することが必須です。
このシミュレーションの時間軸を現在から未来に向けて伸ばせば未来予測ができるでしょう。


 このようなITを活用した科学的論理性による経営について皆さんも知っている例がいくつかあるでしょう。宅配業界やコンビニエンスストア業界が代表例です。ヤマト運輸やセブン&アイ・ホールディングスではこうした科学的論理性に基づいた経営を実践しています。優れたCIO(最高情報責任者)に支えられながら、科学的論理性に基づいた経営を行うことが経営の王道になったのです。

 経営者にとって最も大切な「構想力」は、経験と科学的論理性によって作られていきます。構想力とは論理を統合する力なのです。科学的論理性に基づいた経営を実践する時、これにふさわしい組織構造に企業を作り替えなければならないことは常識になりつつあります。どんなに優れた統合データベースを作っても、組織が部課制のセクショナリズムの塊になっていたのでは機能しないのです。
 

このようなセンスは、経済や経営の知識、そして論理性と情報技術に関する理解がなければ持ちえません。

このゼミで学べること

以上に示した情報技術+経済の知識を持つ人材を生み出すことがこのゼミの狙いです。そのため、パソコン、インターネットをツールとして使いこなす練習を日常的に行います。さらに、プログラミング、情報処理に関わる資格取得やシステム開発等を通じて、より深く情報技術を体得する機会を与えています。

ゼミ(学部)では、実習を通じて問題を解決する過程を自ら経験し、そこから問題を解決する方法論を学ぶきっかけを与えるよう考慮しています。 インターネットにある多様な情報の信頼性を論理的に判断するなどの練習も行います。また、考えたことを効果的に伝える練習を行います。毎回、なんらかの形で発表するようにし、まず発表になれることから始め、技術を身に付けていきます。

各自実際にパソコンを使い、インターネットの情報源をアクセスし、あるいはメールでコミュニケーションをとりながら、学習を進めます。演習では、情報システム寄りのテーマ、経済寄りのテーマによって、グループに分かれ研究を進めています。

情報システムをテーマにする場合、システム開発技法の座学と事例によるシステム開発を行ないます。
その際、一般企業で用いられる基盤ソフトを採用しています。希望があればERPパッケージ SAP ERPを用いて、システム演習を行なっています。あるいは、ホームページデザイン論として、色彩心理学に基づくWEBデザインに取り組む学生もいます。

経済のテーマは、インターネット上の決済、商取引、著作権管理などについて調査し、自分なりの解決案を示す形で進めています。また、ゲーム理論について研究する学生もいます。

希望者がいれば、コンピュータを使った実験経済学にも取り組みたいと思います。マルチエージェントシミュレータを用い、経済システムや経営システムをコンピュータ上に作り出し、自分のアイディアが実施可能かを検証します。

いろいろな人と議論する場を提供し、学習意欲を刺激するようにしています。例えば日本学生経済ゼミナールへの参加により、他大学との議論を深めたり、社会人とのディベートを行なうなど工夫をしています。
また、就職への目的意識を高め、学習意欲を高める意味で、インターンシップへの参加を勧めています。