実験: 人間の迷信行動

スチュアート・A・ヴァイス著 藤井留美訳
   
人はなぜ迷信を信じるのか? 思いこみの心理学 1999年 朝日新聞社刊
p110-112
                           (著者および訳者の許可を得て転載)


駒澤大学の小野浩一は、スキナーの実験を成人を対象に行っている。ここでも小部屋が使われたが、ピエロのボボではなく、図のような実験ブースが設けられた。実験に参加したのは日本人の大学生である。3つのレバーが据えつけられたテーブルの前に被験者はひとりで立つ。ブース奥の仕切り壁にはシグナル灯と、ポイントを記録するカウンターが設置されている。一回の実験は40分間。小野は被験者の学生たちに、とくに何もしなくてもよいが、ポイントをなるべく多く稼いでほしいと説明した。カウンターに現れるポイントは被験者によって出かたが異なり、一定間隔のこともあれば、断続的なこともある。ただ共通するのは、被験者の行動とは無関係な点だ。別室の装置でレバーの動きを記録し、学生の様子はマジックミラー越しに観察した。



ここでもすぐに、迷信的な行動がいろいろ見られた。40分のセッションのあいだ、一貫して現れる行動もあれば、一時的に現れては消え、別の迷信的行動に取ってかわられる場合もあった。予測通り、そうした行動の大半はレバーを引くことに関係していた。たとえばある学生は、ひとつのレバーをすばやく4回引いて、それから数秒間手前に引いたままでいた。学生はこのパターンを30分以上、レバーを変えながら繰り返した。ほかのパターンもある。もちろん、レバーをどう引っ張ろうがポイント獲得にはまったく関係ない。それでも個々のケースでデータを慎重に調べると、レバーを引くという迷信的行動パターンには、偶然が伴っていることがわかった。一連の行動を終えたときにたまたまポイントが出ていたのだ。スキナーがハトで発見したのと同じように、反応と強化が接近していることが、でたらめな行動の中から迷信的な行動を絞り込む役割を果たしていた。

小野の実験では被験者全員に迷信的行動が現れたわけではないが、ほとんどに見ることができた。その内容はレバーを引くことが大半だったが、異なる種類の反応もあった。いっぷう変わった行動を取った女子学生の様子を、小野は短く記録している。もう一度確認しておくが、ポイントはタイマーで自動的に出てくるのであって、被験者の行動とはまったく関係ない。

セッション開始後約5分、レバーを引くのをいったん中断して、右手をレバーのフレームに置いたときポイントが出た。続いて彼女はテーブルによじのぼり、右手でカウンターに触れたところで、またポイントが出てきた。それからはシグナル灯、スクリーンやそれを掛ける釘、壁など、いろんなものを触りはじめた。約10分後、被験者が床に飛び降りたときにちょうどポイントが出たのを機に、ものに触れる動作が飛び降りる動作に入れ替わった。それが5回繰り返されたあと、被験者が飛び上がり、手に持ったスリッパで天井に触れたときにポイントが出た。飛んで天井に触れるという行動は繰り返され、ポイントも出たが、25分ごろに止まった。おそらく疲労したからだと思われる。

たしかに疲れたにちがいない!迷信的行動を学習するとき、時間的な接近性が強く作用することを、これほど劇的に示した例はほかに思い当たらない。小野の実験結果は、成人もまたハトや幼稚園児と同じように、迷信的行動を条件づけされやすいことを教えてくれる。

Vyse, S. A. (1997). Believing in magic: The psychology of superstition.
Oxford University Press, Inc.

オリジナル文献
Ono, K. (1987). Superstitious behavior in humans. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 47, 261-271.


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