数学特論3
- 副題
- 結び目の位置と曲面
- 授業概要:
- 3次元空間内の自己交差のない閉曲線を結び目という。
二つの結び目が3次元空間内で自己交差をせずに移り合うとき、同値であるという。
結び目理論とは、結び目の同値類に関する学問であり、空間内での位置を対象とした数学であるので位相幾何学の一分野とされる。
- 与えられた二つの結び目が同値であるかどうかを判定し、もし同値であるならばどのように変形すれば移り合うか記述することは、結び目理論の基本的問題である。
結び目が3次元空間内で取り得る位置は無限にあるので、この結び目の同値問題が難しいことが感じられるであろう。
しかし、これはまた、結び目理論の面白さでもある。
- この授業では、結び目補空間内の曲面を扱う。
空間は3次元で結び目は1次元であるので、その間の2次元である曲面は結び目に関する情報を多く含んでいる。
今、結び目の補空間に埋め込まれた曲面を考える。
3次元空間を変形することで、結び目が変形されていくが、曲面も同時に変形されていく。
従って、変形前の結び目に対する変形前の曲面の性質は、変形後の結び目に対する変形後の曲面の性質に引き継がれる。
つまり、ある性質を持つ曲面が結び目の補空間に存在するかしないかという結び目の性質は、結び目が取り得る位置に関して有効な情報を与えている。
- この授業では、結び目の位置と曲面の関係について深く解説したい。
- 授業の到達目標:
- 先ず、多様体の基本的な概念の習得をし、結び目の定義と同値性を理解する。
次に、結び目の標準的な位置としての正則表示とモース位置の定義とそれらの間の関係を理解する。
次に、3次元多様体内の本質的曲面に関する基本的な定理の証明を理解し、切り貼り論法に慣れることを目標とする。
最後に、結び目の正則表示及びモース位置と本質的曲面との関係を深く掘り下げ、最先端の研究結果にも触れたい。
- イメージファイル:
- 授業計画:
- [第 1回] 多様体、部分多様体の定義と例
- [第 2回] 結び目の定義と同値性
- [第 3回] 正則表示、橋位置とモース位置
- [第 4回] 結び目の曲面
- [第 5回] 3次元球面の中の閉曲面
- [第 6回] 本質的曲面の交わり
- [第 7回] ハンドル体及び結び目外部の圧縮不可能曲面
- [第 8回] 境界スロープの定義、閉曲面の本質的モース位置
- [第 9回] ザイフェルト曲面
- [第10回] チェッカーボード曲面、ステイト曲面
- [第11回] タングル分解球面
- [第12回] 橋分解球面
- [第13回] 閉曲面、スモール結び目
- [第14回] 閉曲面と他の曲面の関係
- [第15回] 補間曲面
- 教科書:
- 結び目の位置と曲面
- 参考文献:
- 切り貼りの技法とグラフ理論
林 忠一郎、茂手木 公彦
数学 Vol.47, No.4 (1995) pp.377-393
- 洋書では、「The Knot Book」Colin Adams、「An Introduction to Knot Theory」W.B.Raymond Lickorish、「Knots and Links」Peter R. Cromwellなど。
- 成績評価方法:
- 試験 50% 定期試験を行い、50点満点とする。
- レポート 30% レポート課題を3回程出し、1回当たり10点満点とする。
- 平常点評価 20% 出席を10回程取り、1回当たり2点とする。
- その他 0%
- 備考:
- 授業で解説する内容は講義ノートに書いてあるが、図を大部分省略している。
図は授業で描く予定なので、出席してノートを取って欲しい。
Copyright (C) Makoto Ozawa. All Rights Reserved.