第 11 課 - レイヤ 3 : プロトコル
11.1 レイヤ 3 の機器
- ルータ
【router】
ネットワーク上を流れるデータを他のネットワークに中継する機器。OSI参照モデルでいうネットワーク層(第3層)やトランスポート層(第4層)の一部のプロトコルを解析して転送を行なう。ネットワーク層のアドレスを見て、どの経路を通して転送すべきかを判断する経路選択機能を持つ。また、自分の対応しているプロトコル以外のデータはすべて破棄する。複数のプロトコルに対応したルータをマルチプロトコルルータと呼ぶ。
- ブリッジ
【bridge】
ネットワークにおいて、ケーブルを流れるデータを中継する機器。OSI参照モデルでいうデータリンク層(第2層)の中継機器である。
単純にすべての電気信号を再生するだけのリピータと違って、転送先のMACアドレスを見て適切なポートにのみ信号を中継する。
EthernetとFDDIなど、媒体の異なるネットワーク間を中継する機能を持ったものもある。
- ネットワークアドレス
【network address】
IPアドレスを構成するビット列のうち、個々の組織が管理するネットワーク(サブネット)を識別するのに使われる部分。
インターネットのような巨大なTCP/IPネットワークは、複数の小さなネットワーク(サブネット)に分割されて管理されており、IPアドレスもネットワークアドレス部とホストアドレス部に分かれる。このうち、ネットワーク全体の中でサブネットを識別するのに使われる部分がネットワークアドレス部である。
ネットワークアドレスはIPアドレスの管理組織(日本ではJPNIC)によって個々の組織に割り当てられているが、ホストアドレスは特に登録などは必要なく、割り当てられたネットワークアドレスの範囲内で組織内で自由に利用してよい。
11.2 ネットワーク間通信
- 静的アドレッシング
IP アドレスを静的に割り当てる場合は、個々の機器に IP アドレスを設定する必要があります。重複した IP アドレスを使うとネットワークに問題が発生するので、この方式では正確なアドレスを記録しておく必要があります。
- 動的アドレッシング
IP アドレスの動的割り当てには、いくつかの方法があります。その例を次に示します。
- ARP
【Address Resolution Protocol】
IPアドレスからMACアドレスを知るためのプロトコル。
TCP/IPでの通信においては、IPアドレスとともに通信相手のNICに割り振られている物理アドレス(MACアドレス)を知る必要がある。そのため、ARPではセグメント内の全ノードに対してリクエストをブロードキャストし、各ノードからの返答を得ることで、MACアドレスを知ることになる。なお、返答されてきたMACアドレスは送信元のノードにキャッシュとして登録される。
リクエストがセグメントをまたぐ場合もある。この場合では、セグメント間のルータに送信先のノードがあるセグメントのIPアドレスとMACアドレスの関連づけがアドレステーブルに登録されていれば、ノードの代理としてARPリクエストに応えるという仕組みになっている。この機能をプロキシARPという。
また、ハードディスクがないなど、自身にIPアドレスを登録できないデバイスがMACアドレスからIPアドレスを知ることができるRARPというプロトコルも用意されている。
- RARP
【Reverse Address Resolution Protocol】
ARPプロトコルの逆で、自ノードのMACアドレスから「自分の」IPアドレスを求めるためのプロトコル。自分のMACアドレスをLAN上にブロードキャストすると、ネットワーク上にいるRARPサーバ(RARPの返答を返すサーバ)がそのノードのIPアドレスを返してくれる。
通常ディスクレスワークステーションなどでは、自分のMACアドレスは分かるが、IPアドレスは起動時には分からない。そこでRARPを使って自分のIPアドレスを求める。RARPを使えば、各クライアント側でIPアドレスを設定するための固有の手順が必要なくなり、ネットワークのクライアントの管理が簡単になる。IPアドレスとMACアドレスの対をRARPサーバ上だけで管理すればよいからだ。
ただしRARPで得られる情報はIPアドレスだけである。サブネットマスクやゲートウェイアドレス、ネームサーバアドレスなどの情報は得られないため、最近ではBOOTPやDHCPを用いた自動コンフィギュレーションが主流となっている。
- BOOTP
【BOOTstrap Protocol】
TCP/IPネットワークのクライアントマシンにおいて、IPアドレスやホスト名、ドメイン名、ネットマスク、デフォルトゲートウェイ、ネームサーバアドレスなどのパラメータをサーバから自動的にロードしてくるためのプロトコル。クライアントがBOOTPをサポートしていれば、各クライアントごとにTCP/IPのコンフィギュレーションを行なう必要がなくなる。サーバ側では、クライアント側のネットワークカードのMACアドレスを管理するだけでよい。
- DHCP
【Dynamic Host Configuration Protocol】
BOOTPの上位互換の規格。BOOTPではクライアントごとの設定は省略できたが、IPアドレスとホスト名はそれぞれ設定する必要があった。この手間も省いて、各クライアントに、起動時に動的にIPアドレスを割り当て、終了時にIPアドレスを回収するためのプロトコル。サーバ側では、IPアドレスをDHCPクライアント用にいくつかまとめて用意しておくだけでよい。同時にゲートウェイアドレスやドメイン名、サブネットマスクその他の情報をクライアントに通知することもできる。
- DHCP クライアントが起動すると、そのクライアントは初期化状態になります。
- クライアントは、DHCP DISCOVER ブロードキャスト・メッセージを送信します。このメッセージは、ポート番号が BOOTP 用のポートに設定された UDP パケットです。
- DHCP DISCOVER パケットを送信した後で、クライアントは 選択状態になり、DHCP サーバから DHCP OFFER 応答を収集します。
- クライアントは受信する最初の応答を選択し、DHCP REQUEST パケットを送信することによってアドレスの貸し出し時間(アドレスを更新しないまま保持できる時間の長さ)を DHCP サーバと交渉します。
- DHCP サーバは、DHCP ACK パケットでクライアント要求に確認応答します。ここで、クライアントは割り当てを受けた状態になり、アドレスを使い始めます。
arp(Address Resolution Protocol)
アドレス解決プロトコル (ARP) キャッシュのエントリを表示および変更します。ARP キャッシュには、IP アドレスと、その解決済みイーサネット物理アドレスまたはトークン リング物理アドレスを格納するために使用する 1 つ以上のテーブルが含まれています。コンピュータにインストールされたイーサネット ネットワーク アダプタまたはトークン リング ネットワーク アダプタごとに、異なるテーブルがあります。パラメータを付けずに arp を実行すると、ヘルプが表示されます。
Z:\>arp -a
Interface: 10.16.19.72 --- 0x2(1)
Internet Address(2) Physical Address(3) Type(4)
10.16.19.253 00-d0-04-d7-e3-fc dynamic
10.16.19.254 00-00-0c-07-ac-01 dynamic
- インターフェイス
ARPテーブルはインターフェイスごとに管理されている。Windowsでは、インターフェイスごとにブロック単位でARPテーブルが表示される
- IPアドレス
エントリーのIPアドレス。またはホスト名が表示される
- 物理アドレス/ハードウェアアドレス
イーサネットの場合、エントリーのMACアドレス
- エントリーのタイプ
OSにより、格納できるエントリーにいくつかの違いがある
- dynamic
通常のキャッシュ・エントリー。このエントリーが一定期間再利用されない場合は、テーブルから自動削除される
- static
永続的エントリー。キャッシュとは異なり、一定期間再利用されなくとも削除されない。キャッシュ・エントリーは、OSがARPにより取得して格納したエントリーだが、staticはユーザーが明示的に追加したエントリーに限られる。
ARPテーブルへの追加例
C:\>arp -s 192.168.1.20 00-20-78-d5-b4-2f
IPアドレス MACアドレス
ARPテーブルからの削除例
C:\>arp -d 192.168.1.20
ネットワークコマンドの使い方
ネットワークトラブル解決法
11.3 高度な ARP の概念
- デフォルトゲートウェイ
【default gateway】
所属するネットワークの外のコンピュータへアクセスする際に使用する「出入り口」の代表となるコンピュータやルータなどの機器。アクセス先のIPアドレスについて特定のゲートウェイを指定していない場合に、デフォルトゲートウェイに指定されているホストにデータが送信される。設定元のコンピュータからデフォルトゲートウェイまでは直接アクセスできなければならない。
11.4 ルーティング可能プロトコル
- ルーティング対象プロトコル
【routed protocol】
ルータによってルート指定できるプロトコル。ルータは、論理インターネットワークをルーティング対象プロトコルの指定に応じて解釈できる必要がある。ルーティング対象プロトコルの例には、AppleTalk、DECnet、IP がある。
- ルーティング・プロトコル
【routing protocol】
特定のルーティング・アルゴリズムの導入によってルーティングを実現するプロトコル。ルーティング・プロトコルの例に、IGRP、OSPF、RIP がある。
- RIP:Routing Information Protocol(ルーティング情報プロトコル)
- IGRP:Interior Gateway Routing Protocol(内部ゲートウェイ・ルーティング・プロトコル)
- EIGRP:Enhanced Interior Gateway Routing Protocol(Enhanced IGRP)
- OSPF:Open Shortest Path First
ルーティング・プロトコル一覧
|
メトリック |
内部/外部 |
フラット/階層型 |
更新タイマ |
種類 |
RIP |
ホップ数15 |
内部 |
フラット |
30秒 |
ディスタンス・ベクタ |
IGRP |
ホップ数255・帯域幅・遅延・信頼性・負荷・MTU |
内部 |
フラット |
90秒 |
ディスタンスベクタ |
EIGRP |
帯域幅・遅延・信頼性・負荷・MTU |
内部 |
フラット |
変更時 |
拡張ディスタンスベクタ |
OSPF |
帯域幅コスト |
内部 |
階層型 |
変更時 |
リンクステート |
MTU(最大伝送ユニット) -
そのパスが最大どれだけの転送能力があるかを示す。
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