第 2 課 - OSI モデル
OSI 参照モデル
- ISO
(International Organization for Standardization)【国際標準化機構】
工業標準の策定を目的とする国際機関で、各国の標準化機関の連合体。1947年に設立され、現在では147カ国が参加している。本部はスイスのジュネーブ。
略称が英文名称の頭文字語「IOS」ではなく「ISO」になっているのは、ギリシャ語で「平等」を意味する「isos」という言葉が起源のため。
- OSI階層モデル【OSI参照モデル】
国際標準化機構(ISO)により制定された、異機種間のデータ通信を実現するためのネットワーク構造の設計方針「OSI(Open Systems Interconnection)」に基づき、コンピュータの持つべき通信機能を階層構造に分割したモデル。「OSI基本参照モデル」「OSI階層モデル」とも呼ばれる。通信機能を7階層に分け、各層ごとに標準的な機能モジュールを定義している。
- 第1層(物理層)は、データを通信回線に送出するための電気的な変換や機械的な作業を受け持つ。ピンの形状やケーブルの特性なども第1層で定められる。
- 第2層(データリンク層)は、通信相手との物理的な通信路を確保し、通信路を流れるデータのエラー検出などを行なう。
- 第3層(ネットワーク層)は、相手までデータを届けるための通信経路の選択や、通信経路内のアドレス(住所)の管理を行なう。
- 第4層(トランスポート層)は、相手まで確実に効率よくデータを届けるためのデータ圧縮や誤り訂正、再送制御などを行なう。
- 第5層(セッション層)は、通信プログラム同士がデータの送受信を行なうための仮想的な経路(コネクション)の確立や解放を行なう。
- 第6層(プレゼンテーション層)は、第5層から受け取ったデータをユーザが分かりやすい形式に変換したり、第7層から送られてくるデータを通信に適した形式に変換したりする。
- 第7層(アプリケーション層)は、データ通信を利用した様々なサービスを人間や他のプログラムに提供する。
- パケット
(packet)
コンピュータ通信において、送信先のアドレスなどの制御情報を付加されたデータの小さなまとまりのこと。データをパケットに分割して送受信する通信方式をパケット通信と呼ぶ。データを多数のパケットに分割して送受信することにより、ある2地点間の通信に途中の回線が占有されることがなくなり、通信回線を効率良く利用することができる。また、柔軟に経路選択が行なえるため、一部に障害が出ても他の回線で代替できるという利点もある。
- PDU
(Protocol Data Unit)
プロトコルが扱うデータの単位。TCP/IPのPDUは「パケット」、EthernetのPDUは「フレーム」、ATMのPDUは「セル」である。
一般的なPDUは、データ本体の先頭に、そのプロトコルで使用するあて先などの制御情報(ヘッダ)を付加した形式になっている。プロトコルは階層構造になっていることが多く、その場合はPDUのデータ本体は上位レイヤーのプロトコルが扱うPDUになっている。言わば「入れ子」構造である。
- プロトコルスタック
(protocol stack)
ネットワーク上である機能を実現するために必要なプロトコルを選び、階層状に積み上げたソフトウェア群。例えばTCP/IPの場合、一番下にネットワークカードを制御するデバイスドライバがあり、その上にEthernetフレームなどを制御するデータリンク層のソフトウェア、その上にIPなどのネットワーク層を実装したソフトウェアがあり、その上にTCPやUDPのトランスポート層が積まれる形になっている。
- 物理層【physical layer】
- OSI参照モデルの第1層に位置し、ネットワークの物理的な接続・伝送方式を定めたもの。英語表記の頭を取って「PHY」と略称されることもある。
具体的には、ケーブルの材質やコネクタ形状、およびデータと電気信号の相互変換方式(電圧などの規定)などがこの層に属する。
物理層ではデータの内容については一切関知しない。RS-232Cなどのインターフェース規格や、リピータハブやケーブル類といった製品が物理層に相当する。
- データリンク層【data link layer】
- OSI参照モデルの第2層に位置し、ネットワーク上で直結されている機器同士での通信方式を定めたもの。
電気信号の誤り訂正や再送要求などがこの層で行われる。PPPなどの規格がデータリンク層に相当しており、スイッチングハブなどの製品がデータリンク層をカバーしている。
- ネットワーク層【network layer】
- OSI参照モデルの第3層に位置し、データリンク層以下のプロトコルを使用して接続されているネットワーク同士の通信をおこなうための方式を定めたもの。
ネットワーク上の全コンピュータに一意なアドレスを割り当て、データの伝送経路選択、パケットサイズの変換などがおこなわれる。IP(インターネットプロトコル)などがネットワーク層に属し、ルータなどの製品がネットワーク層をカバーしている。
- トランスポート層【transport layer】
- OSI参照モデルの第4層に位置し、データ転送の信頼性を確保するための方式を定めたもの。
具体的には、ネットワーク層を通して送られてきたデータの整序や誤り訂正、および再送要求などをおこなう。TCP、UDPなどがトランスポート層に属する。
- セッション層【session layer】
- OSI参照モデルの第5層に位置し、通信の開始時や終了時などに送受信するデータの形式などを規定したもの。
この層で論理的な通信路が確立される。セッション層からアプリケーション層までの通信方式は単一のプロトコル(例えばHTTP)で定められていることが多い。
- プレゼンテーション層【presentation layer】
- OSI参照モデルの第6層に位置し、圧縮方式や文字コードなど、データの表現形式を規定したもの。
個別のバイナリファイルをネットワークで通信できる形式に変換したり、逆にネットワーク経由で受信したデータをアプリケーションソフトが認識できる形式に復元したりする部分にあたる。セッション層からアプリケーション層までの通信方式は単一のプロトコル(例えばHTTP)で定められていることが多い。
- アプリケーション層【application layer】
- OSI参照モデルの第7層に位置し、ネットワークアプリケーションのうちユーザが直接接する部分。
ネットワーク経由での送受信を行なうプログラムとユーザとの入出力を行なうプログラムの間の通信にあたる。セッション層からアプリケーション層までの通信方式は単一のプロトコル(例えばHTTP)で定められていることが多い。
データのカプセル化
- 【アプリケーション層、プレゼンテーション層、セッション層】
データを作成します。
ユーザが電子メール・メッセージを送信するとき、英数字はインターネットワークを通過できるデータ形式に変換されます。
- 【トランスポート層】エンドツーエンドの通信に適するようにデータをパッケージ化します。
データはインターネットワーク上での通信用にパッケージ化されます。セグメントを使用することで、電子メール・システムの両端のホストの間での信頼性のある通信ができるようになります。
- 【ネットワーク層】ネットワーク・アドレスをヘッダーに追加します。
データは、送信元と宛先の論理アドレスが書かれたネットワーク・ヘッダーを含むパケット(またはデータグラム)に変換されます。これらのアドレスにより、ネットワーク機器は指定された経路に沿ってパケットを送信することができます。
- 【データ層】ローカル・アドレスをデータ・リンク・ヘッダーに追加します。
各ネットワーク機器は、パケットをフレームに入れます。フレームは、リンク上で直接つながっている次のネットワーク機器への接続を行います。指定されたネットワーク経路上にある各機器をその次の機器に接続するには、フレーム制御を行う必要があります。
- 【物理層】フレームをビットに変換して伝送します。
メディア(通常はケーブル)を介して伝送するために、フレームを 1 と 0(ビット)のパターンに変換します。ビット列がメディアを通過するときに、クロッキングの機能により機器はビットを識別することができます。物理的なインターネットワーク上のメディアは、使われる経路によって異なります。たとえば、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)上で発信された電子メール・メッセージがキャンパスのバックボーンを通過し、WAN リンクを通って別のリモート LAN 上の宛先に到達する場合もあるでしょう。データが OSI モデルの層を下に通過するときに、ヘッダーとトレーラが付加されます。
TCP/IP モデル
- TCP/IP
(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)
インターネットやイントラネットで標準的に使われるプロトコル。米国防総省が、核攻撃で部分的に破壊されても全体が停止することのないコンピュータネットワークを開発する過程で生まれた。
UNIXに標準で実装されたため急速に普及し、現在世界で最も普及している。OSI参照モデルではIPが第3層(ネットワーク層)、TCPが第4層(トランスポート層)にあたり、HTTPやFTPなどの基盤となるプロトコルである。
TCP/IP モデルには、アプリケーション層、トランスポート層、インターネット層、ネットワーク・アクセス層という 4 つの層があります。TCP/IP モデルの層の一部には、OSI モデルの層と同じ名前が付いていますが、アプリケーション層の機能はそれぞれのモデルで異なるので、2 つのモデルの層を混同しないよう注意してください。
- アプリケーション層
TCP/IP の設計者は、上位レベルのプロトコルにセッション層とプレゼンテーション層の詳細を含めた方がよいと考え、上位レベル・プロトコル、データの表現方法や符号化の問題、対話制御機能などを単純にアプリケーション層で扱うことにしました。TCP/IP ではアプリケーションに関連するすべての問題を 1 つの層にまとめ、このデータが次の層のために適切にパッケージ化することを保証しています。
- トランスポート層
トランスポート層は、信頼性、フロー制御、エラー訂正に関するサービス品質の問題を扱います。トランスポート層のプロトコルの 1 つ、Transmission Control Protocol(TCP)は、信頼性が高くフロー制御が容易でエラーの少ないネットワーク通信ができる高品質で柔軟な方法を提供します。TCP は、コネクション型のプロトコルです。TCP は、送信元と宛先の間の対話を扱う一方で、アプリケーション層の情報をセグメントと呼ばれる単位にパッケージ化します。コネクション型とは、通信するコンピュータ間に回線があることを意味するものではありません(回線が介在するものを回線交換と呼びます)。コネクション型とは、レイヤ 4 のセグメントが 2 つのホスト間で往復し、ある時間内に接続されていることを論理的に認識することを示します。
- インターネット層
インターネット層の目的は、パケットをインターネットワーク上の任意のネットワークから送信し、使う経路やネットワークにかかわらず、宛先に到達させることにあります。インターネット層を制御するためのプロトコルを Internet Protocol(IP;インターネット・プロトコル)と呼びます。この層で最適な経路が決定され、パケット交換も行われます。これを郵便システムにたとえて考えてみましょう。手紙を出すとき、どのようなルートで届けられるかは普通気にしないものですが、きちんと宛先に届くかどうかは気になります。
- ネットワーク・アクセス層
この層の名称にはきわめて広範な意味があり、やや紛らわしいところがあります。この層は host-to-network 層とも呼ばれ、IP パケットが実際に特定の物理リンクを通ってから、別の物理リンクを通るのに必要なすべての問題を処理します。ネットワーク層には、LAN や WAN テクノロジーの詳細、OSI の物理層とデータ・リンク層の詳細がすべて含まれます。
- IP
(Internet Protocol)
米国防総省のネットワークプロジェクトで開発されたプロトコル。
OSI基本参照モデルの第3層(ネットワーク層)に位置し、ネットワークに参加している機器の住所付け(アドレッシング)や、相互に接続された複数のネットワーク内での通信経路の選定(ルーティング)をするための方法を定義している。
コネクションレス型のプロトコルであるため、確実にデータが届くことを保証するためには、上位層のTCPを併用する必要がある。
UNIXの標準プロトコルとなったことから急速に普及が進み、現在世界でもっとも普及している。IPによって世界規模で相互に接続された巨大なコンピュータネットワークをインターネットと呼ぶ。
-
- TCP
(Transmission Control Protocol)
インターネットで利用される標準プロトコルで、OSI参照モデルのトランスポート層にあたる。ネットワーク層のIPと、セッション層以上のプロトコル(HTTP、FTP、SMTP、POPなど)の橋渡しをする。インターネットでは、トランスポート層のプロトコルとしてUDPも使われており、UDPは転送速度は高いが信頼性が低く、TCPは信頼性は高いが転送速度が低いという特徴がある。
- FTP
(File Transfer Protocol)
インターネットやイントラネットなどのTCP/IPネットワークでファイルを転送するときに使われるプロトコル。
- HTTP
(HyperText Transfer Protocol)
Webサーバとクライアント(Webブラウザなど)がデータを送受信するのに使われるプロトコル。HTML文書や、文書に関連付けられている画像、音声、動画などのファイルを、表現形式などの情報を含めてやり取りできる。
- SMTP
(Simple Mail Transfer Protocol)
インターネットやイントラネットで電子メールを送信するためのプロトコル。サーバ間でメールのやり取りをしたり、クライアントがサーバにメールを送信する際に用いられる。
- DNS
(Domain Name System)
インターネット上のホスト名とIPアドレスを対応させるシステム。全世界のDNSサーバが協調して動作する分散型データベースである。IPアドレスをもとにホスト名を求めたり、その逆を求めたりすることができる。
- Telnet
インターネットやイントラネットなどのTCP/IPネットワークにおいて、ネットワークにつながれたコンピュータを遠隔操作するための標準方式。また、そのために使用されるプロトコル。
- SNMP
(Simple Network Management Protocol)
TCP/IPネットワークにおいて、ルータやコンピュータ、端末など、ネットワークに接続された通信機器をネットワーク経由で監視・制御するためのプロトコル。
- UDP
(User Datagram Protocol)
インターネットで利用される標準プロトコルで、OSI参照モデルのトランスポート層にあたる。ネットワーク層のIPと、セション層以上のプロトコルの橋渡しをする。
インターネットでは、トランスポート層のプロトコルとしてTCPも使われるが、UDPは転送速度は高いが信頼性が低く、TCPは信頼性は高いが転送速度が低い。
- DNS
(Domain Name System)
インターネット上のホスト名とIPアドレスを対応させるシステム。全世界のDNSサーバが協調して動作する分散型データベースである。IPアドレスをもとにホスト名を求めたり、その逆を求めたりすることができる。
- TFTP
(Trivial File Transfer Protocol)
ユーザ名、パスワードの検証を必要としないファイル転送プロトコル。
まとめ
OSIモデル
|
カプセル化
|
TCP/IPモデル
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TCP/IPプロトコルツリー
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アプリケーション
|
データ
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アプリケーション
|
FTP
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HTTP
|
SMTP
|
DNS
|
DNS
|
TFTP
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プレゼンテーション
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セッション
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|
トランスポート
|
セグメント
|
トランスポート
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TCP
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UDP
|
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ネットワーク
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パケット
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インターネット
|
IP
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データ・リンク
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フレーム
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ネットワークアクセス
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物理
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ビット
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