第 3 課 - ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)

3.1 基本的な LAN 機器

データのカプセル化

ネットワーク上で確実に通信するには、送信されるデータを、管理と追跡が可能なパッケージ(小包)に入れる必要があります。この処理は、カプセル化のプロセスを通じて行います。

  1. アプリケーション層、プレゼンテーション層、セッション層の上位 3 層が、伝送の共通フォーマットを作成することによって、データの伝送準備を行います。
  2. トランスポート層は、セグメントと呼ばれる管理しやすい大きさの単位にデータを分割します。トランスポート層は、受信ホスト側で受信データが正しい順序で再組み立てされるように、セグメントにシーケンス番号も割り当てます。
  3. ネットワーク層は、セグメントをカプセル化してパケットを作成します。ネットワーク層は、宛先と送信元のネットワーク・アドレス(通常は IP) をパケットに追加します。
  4. データ・リンク層は、パケットをさらにカプセル化してフレームを作成し、送信元と宛先のローカル(MAC)アドレスをフレームに追加します。データ・リンク層は、フレームの 2 進数のビットを物理層メディアに伝送します。

データがローカル・エリア・ネットワーク上でのみ伝送されるとき、送信元から宛先ホストに到達するために必要なのは MAC アドレスだけなので、データ単位をフレームと呼びます。しかし、イントラネットやインターネットを介してデータを別のホストに送信する必要がある場合は、パケットというデータ単位が使われます。パケット内のネットワーク・アドレスには、データ(パケット)の送信先ホストの最終宛先アドレスが含まれているからです。

ping(Packet INternet Groper)

インターネット制御メッセージ プロトコル (ICMP) エコー要求メッセージを送信して、別の TCP/IP コンピュータへの IP レベルの接続を確認します。往復の伝送時間と共に、対応するエコー応答メッセージの受信が表示されます。ping は、接続、到達可能性、名前解決のトラブルシューティングに使用される主要な TCP/IP コマンドです。パラメータを付けずに ping を実行すると、ヘルプが表示されます。

Z:\>ping www.yahoo.com

Pinging www.yahoo.akadns.net [66.94.230.44] with 32 bytes of data:(1)

Reply from 66.94.230.44: bytes=32 time=99ms TTL=49                (2)
Reply from 66.94.230.44: bytes=32 time=100ms TTL=49
Reply from 66.94.230.44: bytes=32 time=99ms TTL=49
Reply from 66.94.230.44: bytes=32 time=99ms TTL=50

Ping statistics for 66.94.230.44:                                 (3)
    Packets: Sent = 4, Received = 4, Lost = 0 (0% loss),
Approximate round trip times in milli-seconds:
    Minimum = 99ms, Maximum = 100ms, Average = 99ms
  1. コマンドの対象ホストを示す。これは引数で与えられた疎通確認対象先ホストだ。また「32bytes」とは、送信されるICMPパケットのデータサイズを示している。ここではデフォルト値が用いられているが、必要であればこの値はオプションで変更できる。
  2. コマンドの途中経過を示すのがこのパートだ。この例ではパケットの送受信を4回行い、それぞれの回のステータスを表示している。この試行回数は変更することもできる。対象ホストのIPアドレスとともに、「bytes」は受信したICMPパケットのデータサイズを示している。「time」はパケットを送信してから受信するまでにかかった時間だ。単位はミリ秒(1000分の1秒)である。「<」あるいは「>」で表示された場合は、示された時間以下または以上の時間がかかっていることを示す。あまりに小さい、あるいは大きな時間の場合はこのように省略されてしまう。「TTL」はTime To Live(tracerouteを参照)を示す。IPパケットにおける「生存時間」(通過可能なゲートウェイ/ルータ数)である。ここでは結果が表示されているわけで、届くまでに通過したルータでの減算をすでに含んでいるはずだ。
  3. 最後に試行の結果(statistics)を表示する。「Sent」「Received」はそれぞれ送信/受信したパケットの総数だ。「Lost」は送信したが受信できなかったパケットの数とその損失率を示す。ここでは4回の試行で失敗した送受信はなかったので、損失率は0%となっている。また全体の試行のうち、送受信にかかった最小時間、最大時間、平均時間を示すのが「Minimum」「Maximum」「Average」だ。対象ホスト間のネットワークのスループットをここから測定できる。

tracert(Trace Route)

インターネット制御メッセージ プロトコル (ICMP) エコー要求メッセージに段階的に増加する生存期間 (TTL) フィールド値を載せて宛先に送信することで、宛先へのルートを突き止めます。表示されたパスは、送信元ホストと宛先間のパスにあるルーターの近隣ルーター インターフェイスの一覧です。近隣ルーター インターフェイスは、パスの送信ホストに最も近いルーターのインターフェイスです。パラメータを付けずに tracert を実行すると、ヘルプが表示されます。

Z:\>tracert www.yahoo.com

Tracing route to www.yahoo.akadns.net [66.94.230.36](1)
over a maximum of 30 hops:                          (2)

  1    <1 ms    <1 ms    <1 ms  10.16.19.253        (3)
  2    <1 ms    <1 ms    <1 ms  10.1.1.2
  3    <1 ms    <1 ms    <1 ms  203.180.68.254
  4   125 ms   215 ms   199 ms  202.232.7.153
  5     1 ms     1 ms     1 ms  tky001ipgw01.IIJ.Net [210.138.111.34]
  6     1 ms     1 ms     1 ms  tky001bb00.IIJ.Net [210.130.143.32]
  7    97 ms    97 ms    97 ms  paloalto-bb2.IIJ.Net [216.98.96.195]
  8    97 ms    98 ms    97 ms  PaloAlto-bb3.IIJ.net [216.98.97.54]
  9    98 ms    98 ms    98 ms  sjc002bb00.IIJ.net [216.98.96.153]
 10    98 ms    98 ms    98 ms  sjc002ix00.IIJ.Net [216.98.96.166]
 11    98 ms    98 ms    98 ms  ge-1-3-0-103.edge1.SanJose1.Level3.net [209.245.
146.193]
 12    99 ms    99 ms    99 ms  so-5-0-0.gar1.SanJose1.Level3.net [209.244.3.137
]
 13    99 ms    99 ms    99 ms  ge-9-0.ipcolo3.SanJose1.Level3.net [64.159.2.9]

 14   100 ms    99 ms   102 ms  unknown.Level3.net [64.152.69.30]
 15   100 ms    99 ms    99 ms  UNKNOWN-66-218-82-230.yahoo.com [66.218.82.230]

 16   100 ms   100 ms   100 ms  p5.www.scd.yahoo.com [66.94.230.36]

Trace complete.
  1. 以下の結果がこのホスト名とIPアドレスへの経路であることを示している。この例では、「引数で指定したホスト名」と「実際に表示されるホスト名」が異なっていることにも注意しよう。これは、DNS上では「www.yahoo.com」が「www.yahoo.akadns.net」の別名(CNAMEレコード)として登録されているため、このように表示されている。もちろん別名でない場合には、そのままのホスト名が表示される。
  2. 最大で30個の経路情報を表示することを示している。ルータにより、あるサブネットから別のサブネットへパケットがルーティングされることを「ホップ(Hop)」と呼び、この「ルータを1つ越える」単位を1ホップとして数えることがある。「30hops」とは、最大30台までのルータをリストアップすることを意味する。また、このホップはTTL(後述)の最大値とも一致することになる。
  3. 経路情報の一覧となる。各行は順に、「順序番号」「各ルータへのレスポンス時間(試行3回分のそれぞれの結果で単位はミリ秒)」「(DNSに登録されている場合)ホスト名」「IPアドレス」を意味している。16番目の結果は指定したホスト自身であるので、経路上には15台のルータが配置されていることが分かる。

arp(Address Resolution Protocol)

アドレス解決プロトコル (ARP) キャッシュのエントリを表示および変更します。ARP キャッシュには、IP アドレスと、その解決済みイーサネット物理アドレスまたはトークン リング物理アドレスを格納するために使用する 1 つ以上のテーブルが含まれています。コンピュータにインストールされたイーサネット ネットワーク アダプタまたはトークン リング ネットワーク アダプタごとに、異なるテーブルがあります。パラメータを付けずに arp を実行すると、ヘルプが表示されます。

Z:\>arp -a

Interface: 10.16.19.72 --- 0x2(1)
  Internet Address(2) Physical Address(3) Type(4)
  10.16.19.253          00-d0-04-d7-e3-fc     dynamic
  10.16.19.254          00-00-0c-07-ac-01     dynamic
  1. インターフェイス
    ARPテーブルはインターフェイスごとに管理されている。Windowsでは、インターフェイスごとにブロック単位でARPテーブルが表示される
  2. IPアドレス
    エントリーのIPアドレス。またはホスト名が表示される
  3. 物理アドレス/ハードウェアアドレス
    イーサネットの場合、エントリーのMACアドレス
  4. エントリーのタイプ
    OSにより、格納できるエントリーにいくつかの違いがある

ipconfig

現在のすべての TCP/IP ネットワーク構成値を表示し、DHCP (動的ホスト構成プロトコル) と DNS (ドメイン ネーム システム) の設定を更新します。パラメータを指定しないで ipconfig を実行すると、すべてのアダプタの IP アドレス、サブネット マスク、およびデフォルト ゲートウェイが表示されます。

Z:\>ipconfig /all

Windows IP Configuration(A)

        Host Name . . . . . . . . . . . . : GOLDMUND(1)
        Primary Dns Suffix  . . . . . . . :(2)
        Node Type . . . . . . . . . . . . : Unknown(3)
        IP Routing Enabled. . . . . . . . : No(4)
        WINS Proxy Enabled. . . . . . . . : No(5)
        DNS Suffix Search List. . . . . . : int.komazawa-u.ac.jp(6)

Ethernet adapter ローカル エリア接続:(B)

        Connection-specific DNS Suffix  . :(7)
        Description . . . . . . . . . . . : Intel(R) PRO/100 VE Network Connection(8)
        Physical Address. . . . . . . . . : 00-00-4C-FE-68-72(9)
        Dhcp Enabled. . . . . . . . . . . : No(10)
        IP Address. . . . . . . . . . . . : 10.16.19.72(11)
        Subnet Mask . . . . . . . . . . . : 255.255.255.0(12)
        Default Gateway . . . . . . . . . : 10.16.19.254(13)
        DNS Servers . . . . . . . . . . . : 10.1.1.11(14)
                                            10.1.1.12
        NetBIOS over Tcpip. . . . . . . . : Disabled(15)

(A)のブロックは、おもに基本的なネットワーク設定の表示部分だ。ホスト(PC)によっては複数のNICを装着している場合もあるが、それらに共通した設定内容を表示する。

(B)のブロックは、個々のネットワークカードごとの設定だ。ここでは1つしか表示されていないが、2つ以上のNICやモデムを装着している場合には、このブロックは複数になる。

  1. ホスト名
    このホストに設定されているホスト名。ただし、DNSに対して登録されているものとは限らない。あくまでホストのローカルでの設定だ。Windows 2000では、「コントロールパネル」→「システム」→「ネットワークID」のコンピュータ名、Windows 98では「コントロールパネル」→「ネットワーク」の設定が反映される。また、Windowsネットワークにおけるホスト名とも一致する。
  2. DNSサフィックス
    DNSサフィックスとは、このホストが所属するDNSドメイン名だ。通信上、FQDN(Fully Query Domain Name:完全DNSホスト名)を組み立てる必要がある場合は、このサフィックスとホスト名が自動的に組み合わせられる。なおWindows 98/Meの場合は、「ホスト名」の表示にFQDNとしてまとめて表示される。
  3. ノードタイプ
    Windowsネットワーク(NBT:NetBIOS over TCP/IP――NetBIOSのTCP/IP対応版)におけるノード(ホスト)のタイプ。次の種類がある。
  4. IPルーティングの有効/無効
    複数のNIC(インターフェイス)がホストに装着されている場合に、個々のNIC間のIPパケットのルーティング(互いの通信)を許可するかどうかを表示する。つまり、ルータと同等の役割を持たせるかどうかである。サーバでない限り、通常はあまり必要ないだろう。
  5. WINSプロキシの有効/無効
    WINSを用いる際に、ほかの物理ネットワーク(セグメント)のWINSサーバと直接通信できないホストのために、問い合わせを仲介するのがWINSプロキシだ。自身がプロキシでなく、同じ物理ネットワークにWINSサーバが存在していない場合には、この項目が設定される場合もある。いずれにせよ、利用するネットワークの管理ポリシーによることになる。
  6. DNSサフィックス検索リスト
    おもにほかのホストとの通信を行う場合、FQDN名を得るために補完されるドメイン名のリストだ。例えば「host1」と通信を行う場合、ここで指定された「example.com」が付加され、「host1.example.com」を自動的に使ってくれるようになる。必ずしも必要ではないが、イントラネット環境などにおいて複数のドメインが存在する場合などには便利だろう。
  7. 接続ごとのDNSサフィックス
    Windows 2000では、接続されたインターフェイスごとにDNSサフィックスを指定できる。接続するネットワークによってドメインが異なることもあるためだ。こちらのサフィックスは、コントロールパネルの「ネットワーク」アプレットから接続ごとのプロパティで設定を行う。
  8. ネットワークカード名
    NIC(正確には使用しているドライバ)の名称を表示する。ソフトによってはドライバのバージョン番号なども表示される。
  9. MACアドレス
    物理アドレスとも呼ばれる、NIC固有の番号だ。通常、NICに対して出荷時に設定がなされており、変更することはできない。
  10. DHCP有効/無効
    DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)が有効かどうかを示す。
  11. IPアドレス
    ホストのIPアドレス。プロパティから手動で設定したIPアドレスか、DHCP機能によって割り振られたIPアドレスが表示されているはずだ。
  12. サブネットマスク
    ホストが使用するサブネットマスク。DHCP機能により、自動的に設定されている場合もある。ここで「ブロードキャスト・アドレス」が別に用意されていないことに注意しよう。つまり、このサブネットマスクを元にすべてのブロードキャスト・アドレスが生成されるのである。
  13. デフォルトゲートウェイ
    デフォルトゲートウェイのIPアドレス。DHCP機能により、自動的に設定されている場合もある。
  14. DNSサーバ
    DNSサーバのIPアドレス。Windows 2000ではNICごとに設定できる。Windows 98ではホスト全体で1つになる。
  15. NBT有効/無効
    NBT(NetBIOS over TCP/IP)が有効か否かを表す。

ネットワークコマンドの使い方

ネットワークトラブル解決法


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