3次元多様体の中の2次元多様体

本質的円盤(essential disk)

3次元多様体 M 内に適切に埋め込まれた2次元円盤 D は、次を満たすとき非本質的であるという。

D が非本質的でないとき、D は本質的であるという。

例題

3次元球体内に適切に埋め込まれた円盤は非本質的である。

練習問題

V をトーラス体、D を M 内に適切に埋め込まれた円盤とするとき、次の条件が互いに同値であることを示せ。

  1. D が V 内で本質的である。
  2. ∂D が ∂V 内で本質的である。
  3. M-D が連結である。

本質的球面(essential sphere)

3次元多様体 M 内に適切に埋め込まれた2次元球面 S は、次を満たすとき非本質的であるという。

S が非本質的でないとき、S は本質的であるという。

練習問題

  1. 3次元球面内に埋め込まれた2次元球面は非本質的であることを示せ。
  2. S2×S1 内の2次元球面 S2×{0} は本質的であることを示せ。

圧縮不可能(incompressible)

M を3次元多様体とし、F を M 内に適切に埋め込まれた曲面、又は ∂M 内に含まれる曲面とする。ただし、F は2次元球面又は2次元円盤ではないとする。

M 内に次を満たす2次元円盤 D が存在するとき、D を F の圧縮円盤(compressing disk)といい、F は圧縮可能(compressible)であるという。

F が圧縮可能のとき、F を ∂D で切り開き(cut)、切り口となる2つの閉曲線に沿って D に平行な2枚の円盤を貼り合わせる(paste)と新たな曲面 F' が得られる。 このような操作を圧縮(compression)といい、F' は F から D に沿って圧縮して得られたという。(一般に、このような技法を切り貼り論法(cut and paste argument)という。)

F が圧縮可能でないとき、F は圧縮不可能(incompressible)であるという。

2次元円盤と2次元球面に対しては、それらが本質的であるとき圧縮不可能、非本質的であるとき圧縮可能という。

練習問題

境界既約(∂-irreducible)

M を境界が空でない 3次元多様体とする。∂M が M 内で圧縮可能のとき、M は境界可約(∂-reducible)といい、圧縮不可能であるとき、M は境界既約(∂-irreducible)という。

境界圧縮不可能(boundary-incompressible、∂-incompressible)

M を3次元多様体とし、F を M 内に適切に埋め込まれた曲面とする。

M 内に次を満たす2次元円盤 D が存在するとき、D を F の境界圧縮円盤(∂-compressing disk)といい、F は圧縮可能(compressible)であるという。

F が境界圧縮可能のとき、F を α で切り開き、切り口となる2つの弧に沿って D に平行な2枚の円盤を貼り合わせると新たな曲面 F' が得られる。 このような操作を境界圧縮(∂-compression)といい、F' は F から D に沿って境界圧縮して得られたという。

F が境界圧縮可能でないとき、F は境界圧縮不可能(∂-incompressible)であるという。

境界平行(boundary parallel、∂-parallel)

M を 3次元多様体とし、F を M に適切に埋め込まれた曲面とする。 F が次を満たすとき、境界平行(boundary parallel、∂-parallel)という。

本質的(essential)

3次元多様体内に適切に埋め込まれた曲面が、圧縮不可能かつ境界圧縮不可能かつ、境界平行でないとき、本質的(essential)であるという。

練習問題

ハンドル体内に適切に埋め込まれた本質的な曲面は、ディスクのみであることを示せ。


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