3次元多様体(3-manifold)
種数 g のハンドル体(genus g handlebody)
- 3次元球体 B3 は3次元多様体である。3次元球体の境界 ∂B3 は 2次元球面 S2 である。
- ディスク B2 と円周 S1 の直積空間 B2 × S1 をトーラス体(solid torus)という。トーラス体の境界 ∂(B2 × S1) = ∂B2 × S1 = S1× S1 はトーラスである。
- 3次元球体 B3 の境界上に、互いに交わらない 2g 個の円盤をとる。
これら 2g 個の円盤を、向きを逆にする同相写像で貼り合わせて得られる3次元多様体を種数 g のハンドル体(genus g handlebody)といい、Hgで表す。
練習問題
- 種数 1 のハンドル体 H1 はトーラス体であることを示せ。
- ∂Hg は Fg に同相であることを示せ。
- H1の基本群π1(H1)は無限巡回群 Z に同型であることを示せ。
- 一般に、π1(Hg) は階数 g の自由群であることを示せ。
3次元球面(3-sphere)
- 3次元球面 S3 = { (x, y, z, w)∈R4 | x2 + y2 + z2 + w2 = 1 } は閉3次元多様体である。
練習問題
- S3 は二つの3次元球体を、その境界で貼り合せて得られることを示せ。
- S3 は二つのトーラス体を、その境界で貼り合せて得られることを示せ。
- S3 は二つのハンドル体を、その境界で貼り合せて得られることを示せ。
3次元トーラス(3-dimensional torus)
- 3つの円周の直積空間 S1 × S1 × S1 を3次元トーラス(3-dimensional torus)という。
練習問題
- 3次元トーラスは2つの種数 3 のハンドル体を、その境界で貼り合せて得られることを示せ。
射影空間(projective space)
- 3次元球体 B3 = { (x, y, z)∈R3 | x2 + y2 + z2 ≦ 1 } の境界 { (x, y, z)∈R3 | x2 + y2 + z2 = 1 } の対心点 (x, y, z) と (-x, -y, -z) を貼り合わせて得られる閉3次元多様体を射影空間(projective space)といい、一般に RP3 で表す。
向き付け可能(orientable)
3次元多様体 X をいくつかの4面体の和に分割する。各4面体に向きを付け、各面においてキャンセルするようにできるとき、X は向き付け可能(orientable)という。X が向き付け可能でないとき、向き付け不可能(non-orientable)という。
ハンドル体、3次元球面、3次元トーラスは向き付け可能であり、射影空間は向き付け不可能である。
連結和(connected sum)
X1, X2を3次元多様体とし、B1⊂ int X1, B2⊂ int X2を3次元球体とする。
∂Bi = Si とおくと、Si は2次元球面である。
このとき、同相写像 S1 → S2 によって、S1 と S2 を同一視して X1 - int B1 と X2 - int B2 を貼り合わせる。
この結果得られる3次元多様体 X を X1とX2の連結和(connected sum)といい、X1#X2で表す。
逆にこのとき、X は X1とX2 に分解(decomposition)されるという。
3次元多様体 X の任意の分解 X = X1#X2 に対して、X1 と X2 の少なくとも一方が3次元球面となるとき、X は素(prime)であるという。
ただし、3次元球面は素ではないと定める。
ヒーガード分解(Heegaard splitting)、種数(genus)
M を向き付け可能閉3次元多様体とする。
M が次のように二つの種数 g のハンドル体 V1 と V2 に分解できるとき、組 (V1, V2) を M の種数 g のヒーガード分解(genus g Heegaard splitting)という。
- M = V1 ∪ V2, V1 ∩ V2 = ∂V1 = ∂V2
ここで、F = ∂V1 = ∂V2 を M のヒーガード曲面(Heegaard surface)という。F は種数 g の向き付け可能閉曲面である。
F を用いて、M のヒーガード分解を (V1, V2 ; F) と表すこともある。
M のヒーガード分解の最小種数
- min { g | M は種数 g のヒーガード分解を持つ }
を M のヒーガード種数(Heegaard genus)といい、g(M) で表す。
練習問題
- 3次元球面は任意の g に対して、種数 g のヒーガード分解を持つことを示せ。
- S2×S1 は種数 1 のヒーガード分解を持つことを示せ。
- 任意の向き付け可能閉3次元多様体が3角形分割可能であることを用いて、ヒーガード分解を持つことを示せ。
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