日中農村地理学研究室 ≫ 高橋のプロフィール ≫ これまでの「10のできごと」
このページでは,高橋の教育や研究上のできごとのなかで印象深かったことを,年度ごとにまとめています。
1.日中韓若手地理学者会議に参加(9月)
9月16〜19日,中国北京市の北京師範大学にて開催された Sino-Japan-Korea Symposium of Young Geographers(日中韓若手地理学者会議)に参加した。このシンポジウムは「日中韓」と銘打って地理学者が集まった最初の機会であり,また私にとっても初めて英語で学会発表をした学術集会であり,印象深い。私の発表タイトルは,Vitalization of visitation to Islamic sacred shrines of the Hui in northwest Chinaで,回族の聖者廟参詣についての調査・研究報告をした。日中韓の研究者と交流することができ,有意義であった。
2.中国甘粛省にて共同調査を実施(8〜9月)
石原潤先生(奈良大学)を研究代表者とする人文地理学分野の科研プロジェクトで,中国甘粛省酒泉市にて共同調査を行なった。この地域を訪れるのは13年ぶりで,感慨深かった。調査期間が約1週間と短かったため,テーマを酒泉市のタマネギ生産にしぼって,集中的に調査した。行政資料を十分に入手できなかったが,農家での聞き取りはそれなりにでき,実態を把握できた。酒泉市で生産されたタマネギやジャガイモ,花の種などが,日本を含む世界各地へ供給されていることがわかり,農作物の生産と流通をとおした中国と世界とのつながりを考えるよい機会となった。
3.第2次回族学国際学術討論会に参加(9月)
9月4〜6日,中国寧夏回族自治区平羅県にて開催された第2次回族学国際学術討論会に参加した。このシンポジウムの第1回目は,「首届回族歴史与文化国際学術討論会」の名称で1999年10月に寧夏回族自治区銀川市にて行なわれており,約8年を経て第2回目が開催されたということになる。第1回目は,私が中国で初めて参加したシンポジウムであり,今回その2回目に参加できて,うれしかった。
私の口頭発表のタイトルは「尓曼里与寧夏南部山区的回族社区」(アマルと寧夏南部山間地域の回族コミュニティ)で,これまでに日本語で発表した回族の聖者廟参詣に関する研究に,その後の考察を加えて中国語でまとめた。このシンポジウムに提出したフルペーパーが,私にとって初めての中国語の単著論文となった。4〜7月のかなりの時間をこの中国語論文作成に費やした。シンポジウム論文集に収録され,ホッとした。
「10のできごと」の第1位から第3位まで並んでいるように,2006年夏の中国訪問は,調査,中国語での研究発表,英語での研究発表と盛りだくさんであった。
4.群馬県川場村にて調査を実施(10月)
10月20〜23日,3年ゼミ(地域文化演習)の一環として,駒澤大学地理学科の学生22人とともに群馬県川場村を訪れ,地域調査を行なった。ゼミ生が班ごとに設定した調査テーマは,リンゴとブルーベリーの生産,野菜の生産と土地利用,オーナー制による棚田の保全,道の駅にあるファーマーズ・マーケットやレストランの運営と利用,川場村と東京都世田谷区との交流などであった。
今年度の3年ゼミには,普段の授業にほとんど来ないで合宿にだけ顔を出した学生がいた。これらの学生2人は,こともあろうか勝手に自家用車で集合場所にやってきたので,合宿に参加させずに帰ってもらった。遊び気分であのまま合宿に参加していたら,思わぬ事故が起きていたかもしれない。この一点を除けば,合宿では地元住民の方から多大な協力を得て,学生も私も学ぶことが多かった。
5.竹内啓一先生の教材についての資料記事を発表(2007年3月)
恩師・竹内啓一先生が駒澤大学の授業で用いた教材プリントを再録して,「竹内啓一先生の教材─旅の地理学─」のタイトルで『駒澤地理』43号に発表した。「旅」の多面的なとらえ方を,資料として保存することができたと思う。
6.陝西調査の報告論文を発表(8月)
科研プロジェクトの一環として2005年夏に中国陝西省韓城市で行なったフィールドワークの報告論文「韓城市における花サンショウ栽培の特徴と変容」を『西安市と陝西農村の変貌』(奈良大学文学部発行)に発表した。花サンショウ(花椒)は,中国語でいうところの「麻味」,つまり舌がしびれるような味覚をもたらす香辛料で,四川料理などで盛んに使われている。中国料理であれだけ盛んに使われているにもかかわらず,日本はもちろん中国でも,花サンショウの生産についてはほとんど調べられていない。本論文で,その一端を示すことができたと考える。
7.4年ゼミが充実(通年)
2006年度の4年ゼミ生は11人と適切な人数で,ゼミ生一人あたりの発表時間や回数を確保することができた。そして,卒業論文の調査と執筆に熱心に取り組む学生が多く,その相談にのる機会が多かった。そんなゼミ生の一人が,卒業間近になってやっと希望の就職先が見つかり,私もうれしい思いをした。
8.留学生を連れて地域見学(10〜11月)
「日本事情I〔地理〕」という留学生向けの授業では,教室での講義のほかに,校外見学をすることにしている。今年度は,複数回にわたって,駒沢オリンピック公園や保存民家,三軒茶屋の街並み,池尻大橋の日本地図センター,川崎市高津区の旧大山街道を見学した。留学生は,日本の街づくりや地域変容について学んでくれたようであった。ただし,今年度は受講生が約50人と多かったため,旧大山街道において歩道の狭い個所を見学中に,通りかかったパトカーにスピーカーの大音量で,「そこの学生さんたち,車の通行の邪魔になるので,きちんと一列に並んで歩いてください。」と注意され,非常にあわてた。
9.紫竹学林会の会合を運営(2007年1月)
毎年1月後半の土曜日,駒澤大学大学院地理学専攻のOB・OG会「紫竹学林会」の講演会と総会,懇親会が開催される。私はこの会の副幹事を拝命しており,会合の企画・運営を総合的に担当した。今回の講演会では,新しい試みとして,「青森県白神山地をフィールドとした環境教育」のテーマで,二人の若手OBに県庁や中学校での関連の取り組みを紹介してもらった。講演会は予想以上に盛況で,企画側として,とてもうれしかった。
10.奈良市にて講演(2007年2月)
科研プロジェクトの一環として,奈良市北部市民文化ホールにて奈良大学地理学会公開講座の講演をした。講演会の全体テーマは「シルクロードのオアシス空間」で,私の講演題目は「中国甘粛省のオアシス農業」であった。これは,私にとって初めての「市民向けの講演」で,印象深かった。講演会の会場が位置する奈良市高の原はニュータウン地区で,各種学校や研究機関で教育や研究にたずさわっている方が多いらしく,講演後に鋭い質問を受けて,講演者である私が考える機会をもらった。また,この講演会のように,一つの大学規模の学会,実質的には大学の一学科が,市民向けに講演会を開くというのは,大学での教育や研究のアピールの場にもなり,なかなか有意義な企画であると知った。