「北極と南極で起こっていること」
北極海の海氷
北極海の海氷は、毎年9月に最小となります。ここ数年はロシア沿岸に水路が開くのが当たり前になってきました。
画像は「北極域データアーカイブ(北極圏海氷モニター)」より入手し、地名と航路を示したものです。
地球温暖化による気候変動が心配されているのと同時に、北極海航路が熱い視線を浴びています。
2009年には、ドイツの貨物船が、韓国蔚山(ウルサン)港からオランダロッテルダム港まで、北極海航路で航海しました。
北極海経由でアジアからヨーロッパに貨物船が移動したのは、国際航路としては、初めてのことです。
北極海航路はスエズ経由より4割短縮できるそうです。
ソマリア沖やマラッカ海峡のように海賊はいません。
秋限定ですが、北極海をタンカーが行き交う時代がやってくるのかも知れません。
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NASAの地球観測衛星「AQUA」に搭載センサーで、海氷の密接度を地図表現したもの。 過去最小となった2012年の9月16日の画像と1980年代の同時期の海氷域の比較。 氷の少ない海域は青、陸地は灰色となっています。 図中にマウスカーソルをもっていくと、2009年の北極海航路が入ります。 |
北極海航路とインド洋航路を図法で比較 北極海航路の利点が視覚的にとらえられる便利な図法はないでしょうか?地図投影法のエキスパートである大山洋一さんに作画していただきました。ちなみに、マラッカ海峡〜インド洋〜スエズルートは約21,000km。北極海ルートは約14,000kmです。右側の2点正距図法の方が両者の航路長の違いをうまく表現できているようです。なお、2点正距図法に描かれたルートが100%正距というわけではありません。 |
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メルカトル図法 高緯度ほど緯度間隔が広がり拡大される。 |
2点正距図法 図上では起点および終点から直線が正距である。 |
上2図の北極海航路は93区間、インド洋航路は81区間で作図されている。各区間について、実際の地球上の距離との誤差は、 メルカトル図法について、北極海ルートは平均1.389、インド洋ルートは平均0.085、 2点正距図法について、北極海ルートは平均0.035、インド洋ルートは平均0.059であった。(大山洋一調べ) |
(参考)世界中の船舶の位置が地図上に表示されるサイトがあります。
ライブ船舶マップ ※最近アクセスが集中しているのかつながりにくくなった。
海氷の季節変化
北極圏の海氷は、冬季に拡大し春先に最大となり、夏に縮小し初秋に最小となります。
分布の季節変化は動画でみるのがわかりやすいですね。
前掲IARC-JAXAの画像をアニメーションgifで加工したものです。
下の画像は2007年のものです。北極の黒丸はデータが欠測のエリアです。
東経 45度 |
グリニッジ子午線 | 西経 45度 |
東経 90度 |
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西経 90度 |
東経 135度 |
日付変更線 (東経西経180度) |
西経 135度 |
1年間(11月〜11月)の海氷(密接度)分布を4日間隔で動画化しました。右上に日付。 @極軌道の人工衛星は北極点の直上を通らないので、北極点付近が欠測になります。 A北極海につながっていないオホーツク海でも海氷ができます。 Bスバールバル諸島やノバヤ・ゼムリア諸島西海岸は、高緯度であるにも関わらず、 海氷に覆われる時期はないようです。 |
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昔のデータほど青、最近のデータは赤で表現しました。10年平均のデータは点線で示してあります。 長期的にみれば、北極海の海氷は確実に少なくなっています。 単年度でみると、少ない年もあれば、そうでない年もあります。 近年では2019年、2020年と9月の海氷が少ない年となりました。 2024年は、9月13日の407万2883平方キロが最小で、過去4番目に少なくなりました。 @2012年9月16日が過去最小面積で、317万7455平方キロメートルまで縮小しました。 A2020年9月13日は過去2番目で、355万4798平方キロメートルに縮小しました。 B2019年9月17日は過去3番目で、に396万4239平方キロメートルに縮小しました。 例年、海氷面積が広いのは3月頃で約1350万平方キロ、狭いのが9月頃で約400万平方キロ程度なので、 3分2は毎年融けていることになります。 |
なお、北極の海に浮かんでいる氷がとけても、海面は上昇しません。
北極海沿岸で晩夏〜初秋の温度上昇がもたらされ、永久凍土のメタンが放出される懸念があります。
メタンは、二酸化炭素の25倍の温室効果を持つため、地球温暖化の加速が懸念されます。
海氷の上から獲物をねらっているホッキョクグマは、すべての海氷がなくなると、絶滅のおそれがあります。
また、北極海沿岸で海氷に閉ざされている期間が短くなり、海岸浸食がすすんでいるとの報告もあります。