地理学特講E
「鳥瞰図の世界」

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活火山の鳥瞰図(カルデラ)

火山活動は"山"を作りますが、窪地を作る場合もあります。

南北24kmにも及ぶ広大なカルデラを持つ阿蘇山です。
カルデラ底にあたる「阿蘇谷」や「南郷谷」は人間の生活の場になっています。
「カルデラ」とはポルトガル語で「鍋」の意味だそうで、うまいネーミングだと思います。
鍋底の中央部で再び火山活動が始まり、高岳など中央火口丘が作られました。
阿蘇カルデラは30万年前から9万年前にかけて、4回の大噴火で形成されたとみられます。
特に4回目の噴火による火砕流は、九州の北半分を焼き尽くすほど大規模でした。
この時の火山灰は、遠く離れた北海道でも10センチ位降り積もっています。
阿蘇第4火砕流の噴出量は、雲仙普賢岳火砕流の100万倍に及ぶと見積もられています。
大量の火山噴出物が放出された結果、地下が空洞となり、
重力によって陥没してできたのが、阿蘇カルデラです(陥没カルデラ)。

この地図の作成にあたっては、国土地理院長の承認を得て、
同院発行の数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものです。
(承認番号 平17総使、第341号)


阿蘇カルデラ(地理院地図)

阿蘇山(グーグルアース)

都心から最も近いカルデラ地形は箱根にあります。
ドライブするには程よい距離です。
直径は阿蘇カルデラの半分程度ですが、外輪山が観光道路になっています。
箱根火山は約50万年前から活動をはじめて古い火山です。
金時山を含む古期外輪山は、
推定標高2800mの円錐火山の名残であるとの説があります。

つまり富士山のような均整の取れた火山がかつては箱根にあり、
大規模な噴火により山体が吹き飛ん
でカルデラが形成されたと考えられています。
このようなカルデラを「爆発カルデラ」と呼んだりします。
また、古期外輪山はいくつかの成層火山の集合体で、
個々の火山の数回の噴火によって、
複数のカルデラが連接して形成されたという別の説もあります。

カルデラ底に水がたまってできたのが観光船が運航されてる「芦ノ湖」です。
実は箱根の外輪山は2重になっていて、芦ノ湖の内側にある山々は、

16万年前からの火山活動により作られました(新期外輪山)。
こちらでも大規模な噴火により、
約6万6千年前に大量の軽石を放出しました。
武蔵野台地に降り積もりましたし、
火砕流は現在の横浜市の一部まで達したようです。
手前にある湯河原カルデラは、はるか昔にあった湯河原火山の火口が
長年の侵食によって作られた「侵食カルデラ」であると考えられています。

この地図の作成にあたっては、国土地理院長の承認を得て、
同院発行の数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものです。
(承認番号 平17総使、第341号)


箱根(地理院地図)

箱根山(グーグルアース)


北海道の代表的な観光地である洞爺湖もカルデラです。
カルデラ底は湖に、中央火口丘は「中島」という島になっています。

大規模な噴火は11万年前と考えられ、
この時の噴出物は北海道や東北北部にみられます。
火山の生成はカルデラの中央部以外でも起こります。
洞爺カルデラの南の外輪に位置する有珠山は現在も活動中です。
2000年3月31日の噴火により洞爺湖温泉街に被害がでました。

この地図の作成にあたっては、国土地理院長の承認を得て、
同院発行の数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものです。
(承認番号 平17総使、第341号)


国土地理院「ウオッちず」

洞爺湖カルデラ(地理院地図)

洞爺湖(グーグルアース)

海洋地形調査の専門家はこのような図を「鯨瞰図」というそうです。
海にもカルデラ地形があることがわかっています。
八丈島のはるか南の海上に"ベヨネーズ"と呼ばれる数十個の岩があります。
名前は、1846年に発見したフランスの軍艦の名前に由来しているそうです。
海底地形の測量により、カルデラ底は海面下1300mで、
中央火口丘にあたる高根礁が海面下328mであることがわかりました。
ベヨネーズ列岩は、外輪山の一部で、それが海上に顔を出していることになります。
1952年9月17日に明神礁で噴煙や小島の形成を伴う火山活動が確認されています。

この地図の作成にあたっては、
海上保安庁海洋情報部作成の海域火山データベース
「海の基本図(海底地形図)」を参考にしました。



明神礁カルデラ(海上保安庁)

ベヨネーズ列岩(グーグルアース)