B2グループの案内2004-07-29〜2007.04.10
 当研究員の紹介
| 西崎 亨 | 乾 善彦 | 郡 千寿子 | 萩原 義雄 |
 
 研究内容の紹介
関西における往来物・節用集の出版と生活コミュニケーション形成に関する研究
〔目的〕
 「節用集」は室町時代中頃から昭和初期にかけて行われた国語辞典・用字集である。江戸時代初期までの節用集を特に古本節用集と呼び、古本節用集については、橋本進吉・岡田希雄・亀田次郎・山田忠雄等による分類・系統を中心とした業績がある。近世以降のものについては、山田忠雄による諸本の分類があり、前田富祺・高梨信博・佐藤貴裕等の研究がある。従来、節用集は漢字の表記・用字・字体・訓み等国語学的視点にたっての研究・利用が中心であった。しかし、近世以降の節用集は実生活における意思表示のための作法書的性格を負うものも多く、現代の家庭百科のルーツとも言える。節用集の流布と生活文化形成の背景へのアプローチの視点の深化も求められる。
 「往来物」は、書記言語生活等を通しての教育を中心とした、民衆世界の識字力の一般的普及に寄与する実生活における要用書的性格を負うものである。往来物の研究の多くは、教育史の視点でのもので、人間文化形成への背景へのアプローチ等残された問題も多い。
 このように、「節用集」「往来物」はともに知的・文化的ネットワークを形成し、生活規範確立に与し、日本の社会の近代化に関わる社会関係に大きく影響を与えた資料的基盤を提供するものである。文化形成のモチベーションという視点に鑑み、「節用集」「往来物」の関西における出版状況・出版環境・出版交流等の調査研究および関西出版の節用集・往来物の書誌的研究・文献学的研究およびその内容の分析を通して、関西の文明形成を支えた歴史的意義の発掘を目的とする。