問 題 編
まず、以下での議論の基礎になる情報システムの価値の2つの計算方法を説明する。そして、
(i)情報システムの精度や(ii)意思決定者の経験・知識が変化したとき、その情報システムの価値がどのように変わるかを情報価値計算の「モデル」に基づいて検討する。
1 情報システムの価値の計算方法(その1)
設例1.1[情報システムの事前評価(その1)]
天気予報システムη
1の過去100日間の予報y1=「晴でしょう」、y2 =「雨でしょう」に関するデータが表1.1のように与えられるとき、これから100日間利用するにさいし、その契約料金の上限はいくらであるか。表1.1のデータと表1.2の意思決定問題に基づいて計算せよ。
表1.1 天気予報システムの成績表(100日間) 表1.2 意思決定問題の利得表
[
T] まず、天気予報システムを利用せず過去の経験のみに頼るとき、いずれの行動が最適か。また、そのとき100日間の予想される利得(期待利得)はいくらか。但し、計算の便宜上、1効用=1ドルとせよ。[
U] 天気予報システムη1 をこれから100日間利用するとき、以下の問に答えよ。(1)
この天気予報システムの信頼性は何パーセントであるといえるか。(2)
その信頼性が今後100日間もそのままであるとしたとき、予報y1 とy2はそれぞれ何日間受け取ることが予想され、それぞれの予報の下ではいずれの行動が最適で、そのときの期待利得はいくらか。(3)100
日間の予想される利得はいくらか。[
V] この天気予報システムをこれから100日間利用するにあたり、その契約料金の上限を求めよ。
2 情報システムの価値の計算方法(その2)
情報システムの価値の求め方は、先の(a)式のほかに実はもうひとつの方法がある。それを説明しよう。
設例1.2[情報システムの事前評価(その2)]
設例
1.1のすべての設問を利得ではなく「機会損失」(opportunity loss)をベースにして計算してみよ。但し、機会損失とは、ひとつの行動を選択することによって結果的により以上の利得を得る可能性(機会)を失うことによる損失である。
演習問題
信頼性が
90パーセントの天気予報システムを利用できるとすれば、(1)
過去100日間が晴=70日、雨=30日であったとして、この天気予報システムの予想される100日間の「成績表」を示せ。(2)
それに基づいて、先と同様に契約料金の上限を計算せよ。但し、機会損失をベースにせよ。
3 精度の向上と情報システムの価値
表
1.2の予報システムの成績表は、あくまで過去のデータにすぎない。そのデータに基づいて、これから100日間の利用契約を結ぶかどうか契約料金の上限額(事前評価額)を求めたのである。しかし、実際に100日たったあとは、表1.2と同じであるとはかぎらないだろう。
設例1.3 [精度の向上と情報システムの価値]
100日後の天気予報の実際のデータが表1.4のように与えらたとき、この信頼性が続くものとしてこれからさらに100日間利用(第2期)の再契約にあたりその契約料金の上限額を求めよ。
表1.4 実際の成績表(第1期)
4 経験の変化と情報システムの価値
今度は、情報システムの精度はそのままにして、意思決定者の経験が変化したとき情報システムの価値はどう変化するかをみてみよう。
設例1.4[経験の変化と情報システムの価値]
η
2の信頼性(精度)そのものは変わらないが、意思決定者の予想が以下のように変化するとき、η2の契約料金はいくらになるか。(1)
次期のシーズンを晴=80日、雨=20日と予想するとき。 (2)同じく、晴=60日、雨=40日と予想するとき。(3)(1)
、(2)より、前の予想のときと比べて契約料金の上限額(情報の価値)はどう変わるか、その理由も述べよ。
5 究極の情報システムの価値
最後に、各予報y
iの「的中率」がすべて100%、すなわち最高の精度をもつ究極の情報システムの価値についてみておこう。
設例1.5[完全情報システムの価値]
予報技術の進歩の究極として
100パーセント信頼できる天気予報システムη∞(完全情報システム)が与えられるとき、(1)この完全情報システムをこれまでと同様の成績表として示してみよ。但し、意思決定者の事前の予想は晴=80日、雨=20日とせよ。
(2)この究極の天気予報システムを利用できるとすれば、その契約料金の上限はいくらになるか。
問題集に戻る