辻本 聡  EK5042  2006819

NTTデータ システム科学研究所編 『インターネット社会の10年』 中央経済社、2005

 

9章 インターネット社会はどこへ 〜生きる知性と知恵を育む10年へ

 

用語

サイバースペース (P,237)

コンピュータやネットワークの中に広がるデータ領域を、物質的な実体を離れた仮想的な空間としてとらえたものだが、近年はコンピュータネットワーク上で構成された社会のことを指す。SF作家ウィリアム・ギブスンの造語。

インフラストラクチャー (P,244)

学校、病院、道路、橋梁、鉄道路線、上水道、下水道、電気、ガス、電話など社会的経済基盤と社会的生産基盤とを形成するものの総称

ブラッシュアップ (P,254)

みがき上げること。学問などの再勉強や鈍った腕や技のみがき直し。

インタープリター (P,255)

解説者、通訳。

メディエイター (P,255)

調停者、仲介者。

 

・要約

 この10年間、日本の経済社会環境は大きく変化した。サイバースペースは特定層だけで暗黙の秩序が保たれていた小社会から、多様な人による、利害や善悪が並存する一般社会になった。今日では、恩恵と損失の両面で、ICTが実生活にもたらす影響が大きくなっている。

 この変化を全体的に見ると「個のクローズアップ」「枠組みの変化と要素の組み換え」「関係性の変容」という3つの様相が浮かび上がり、これらは社会のモジュール化に深く関わっている。ICTが作り出す環境が人々に影響を与えているのだ。今後は人間の行動や思考への影響も考慮しながら技術開発を行っていくことが望ましい。

 また、生活に浸透し、社会のあらゆる仕組みに組み込まれてきたICTは今後、社会のインフラストラクチャーとしての機能を求められている。インターネットのブロードバンド化やモバイル端末の普及など、社会はコンピュータの存在を意識することなく多様な恩恵を望める、ユビキタス・コンピューティング社会に向かって進んでいる。

しかし現時点におけるICTが組み込まれた社会は、個人の活力を引き出す方向にも、減退させる方向にも作用させる要素を備えている。この矛盾したベクトルが存在する社会の構造を理解し、個人の活力を生み出していくことを考えなければならない。個人の活力を活性化させるという視点で見ると、ICTはこれまでのように「道具」ではなく「環境」として位置づけることが重要であり、その「環境」の構築が求められている。

 

・考察

 ICTの普及が進み、現代社会は格段に便利な社会になった。しかし社会の構造がこれまでとは大きく変化し、今までになかった問題も生み出している。これからの10年は、これまでの10年のように、ただ技術の進歩を求めるだけではなく、現在ある問題をしっかりと認識し、将来我々が住みやすい社会を造っていくための努力をしていかなくてはならない10年なのだということがわかった。

 

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