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穀物市場とエルニーニョ

穀物価格の推移(米国農務省資料)
ブッシェルとは穀物の計量に使われる単位で約35リットル


穀物の価格には天候の影響が強く影響している。
1983年 夏の熱波で「大豆」が不作となり急騰。(エルニーニョ翌年)
1988年 夏の大干ばつで「大豆」「小麦」「コーン」が不作となり急騰(エルニーニョ翌年)
1993年 米国で洪水被害により「大豆」価格上昇。
1995年 夏の熱波と翌年冬の大寒波により「大豆」「小麦」「コーン」が急騰。
2003年 翌年にかけての大寒波。春先の暴風などにより「大豆」が急騰。(エルニーニョ翌年)
2006年 豪州大干ばつ。「大豆」「小麦」「コーン」急騰
2007年 豪州大干ばつ。中国の需要増。バイオエタノール需要で穀物急騰。
2012年 中国の需要増。米国の熱波などにより、「大豆」「コーン」が史上最高値に。
2013年 世界的なとうもろこしの豊作〜2014年。
2017年 秋にラ・ニーニャが発生。小麦の価格がやや上昇。大豆・とうもろこしは安定。
2018年 秋にエル・ニーニョが発生。穀物価格に大きな変動なし
2020年 新型コロナ流行。夏にラ・ニーニャが発生。穀物価格が上昇
2022年 ラ・ニーニャ継続中に、ウクライナ危機。穀物価格上昇。小麦・大豆最高値に。
エル・ニーニョ→高騰、ラ・ニーニャ→高騰、それ以外→安定という単純なものではない。
大豆の産地は、アメリカ、ブラジル、アルゼンチンなどで、世界の生産量の約75%を占める。
@エル・ニーニョが発生し、続けてラニーニャに移行する場合は、価格が上昇する傾向がある。
Aエル・ニーニョが発生し、その後ラ・ニーニャに移行しない場合は、価格が上昇しないこともある。
Bラ・ニーニャが発生すると価格は上昇することがある。

2007年に穀物価格が急騰した理由は、2007年4月の北米寒波、5月のウクライナ旱魃、夏季の北米の大雨、
2年続きのオーストラリア旱魃などが重なったことによります。
また、地球温暖化対策として、化石燃料に変わるバイオエタノールに注目が集まりました。
多くの小麦畑・大豆畑がバイオ燃料用のトウモロコシ畑に転換され、
作付け面積が減少した結果、小麦や大豆も急騰しています。

2012年は米国が高温・乾燥に見舞われた(エル・ニーニョでもラ・ニーニャでもない)。
とうもろこしは2012年8月に最高値、大豆は9月に最高値、小麦もとうもろこしに追従して上昇しました。
なお、2013年〜2014年はとうもろこしの豊作が続いたこともあり、2015年は価格が低下しています。

2022年にロシアがウクライナに侵攻しました。ウクライナでの小麦生産・輸出が滞り、小麦が急騰しました。
2023年以降は、穀物価格が下落していますが、コロナ前よりもまだ高い状態です。


日本の小麦の自給率はわずか14%です。84%を米・加・豪の3カ国から輸入しています。



小麦の生産国

世界の小麦生産量は、7億3514万トンです。(FAO年鑑2020による)
1 中国 13145万トン 17.90% 中国とインドで世界全体の3割を占めます。両国とも人口が多いので、自国で消費する量が多いです。輸出量が多い国は、ロシア、米国、カナダ、フランス、ウクライナなどです。輸入量が多い国は、インドネシア、エジプト、トルコ、イタリア、フィリピンなどです。日本の小麦生産量は77〜100万トンですが、輸入量は500万トンを超えます。
2 インド 9970万トン 13.60%
3 ロシア 7214万トン 9.80%
4 米国 5129万トン 7.00%
5 フランス 3580万トン 4.90%
6 カナダ 3177万トン 4.30%
7 パキスタン 2508万トン 3.40%
8 ウクライナ 2465万トン 3.40%
9 オーストラリア 2094万トン 2.80%
10 ドイツ 2026万トン 2.80%
11 トルコ 2000万トン 2.70%
12 アルゼンチン 1852万トン 2.50%
13 イラン 1450万トン 2.00%
14 カザフスタン 1394万トン 1.90%
15 イギリス 1356万トン 1.80%
16 ルーマニア 1014万トン 1.40%
53 日本 77万トン 0.10%



米国の小麦産地

デュラム小麦は、弾力性の強いグルテンの含量が多い特徴があります。パスタ用のセモリナ粉に使われます。
硬質小麦は、弾力が高く、タンパク質含量が多い特徴があります。パン用の強力粉、中華めん用の中力粉に使われます。
軟質小麦は、弾力が低く、タンパク質含量が少ない特徴があります。ケーキやクッキー、天ぷら用の薄力粉に使われます。

デュラム小麦:ノースダコタ州が産地です。パスタ用として日本に輸出されています。
硬質赤小麦(冬):主に中西部が産地です。2等級以上が日本に輸出されます。
硬質赤小麦(春):中西部のカナダ寄りが産地です。2等級以上が日本に輸出されます。
軟質白小麦:オレゴン州、アイダホ州、ワシントン州産が日本に輸出されます。
軟質赤小麦(冬):ミシシッピ川流域やアパラチア山脈東麓が産地です。ほとんど日本には輸出されません。

 

四大穀物の世界収量とエル・ニーニョおよびラニーニャとの関係

  とうもろこし 大豆 小麦
エル・ニーニョ -2.3%(不作) +3.5%(豊作) -1.4%(不作) -0.4%
ラ・ニーニャ -0.3% -1.0%(不作) -4.0%(不作) -1.3%(不作)
それ以外 +2.2%(豊作) -1.6%(不作) +1.8%(豊作) +0.5%

農業環境技術研究所と海洋研究開発機構が共同で研究、2014年5月発表。

 


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