「花粉症の地理学」

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毎日の花粉数と気象との関係

気温 早春に気温が高くなると、スギが開花します。
平地での日最高気温14〜15℃位で花粉が飛び始めます。
そのため、シーズン前期(2月)は、
気温が高いほど花粉が多くなります。寒い日には飛びません。
シーズン後期(4月)は、毎日が暖かいので、
花粉数と気温の関係は弱くなります。
風が強いと枝がゆすられ、花芽から花粉が振り落とされます。
また風が強いと発生源から長距離運ばれます。
そのため、風が強い日には花粉の数は多くなります。
特にスギ林からの風向きの時は多くなります。
空気中の花粉は雨滴で洗い流されます。
そのため、雨の日には花粉の数は少なくなります。

毎日の花粉数の変化(東京千代田区・2024年)

顕微鏡観測による一日あたりの花粉数(東京都健康安全センターによる)  
黄色がスギ花粉橙色がヒノキ花粉。7日毎に目盛線を入れました。

顕微鏡観測の花粉数の場合、
1日あたり50個で、くしゃみ鼻水などの症状が強くなり、100個以上になると「とても辛い」日となります。

東京では、例年、バレンタインデーの頃からスギ花粉が飛び始めます。
そしてホワイトデーの頃にピークとなります。
また、ヒノキ花粉はホワイトデーの頃に飛び始めて、お花見の頃にピークとなります。

2024年は、2月13日よりスギ花粉が連続的に飛び始めました(1個/cm2以上、2日以上連続)。
例年どおりの飛び始めでした。

2月20日には100個/cm2を超え、花粉症患者にとって非常につらいシーズンに突入しました。
スギ花粉が最も多く飛んだのは3月16日(357個)でした。

ヒノキ花粉は、3月16日から連続的に飛び始めました。
例年通りの飛び始めでした。
3月31日頃からスギ花粉を上回るようになりました(スギ5個、ヒノキ309個)。
もっとも多くのヒノキ花粉が飛んだのは、4月2日で、ヒノキ花粉だけで318個も飛散しました。

東京のシーズン総花粉数は、スギが70%、ヒノキが30%のことが多いのですが、
2024年はスギ76%、ヒノキ24%でした。


2018年〜2022年のグラフはこちら 
年ごとの傾向をつかんでみましょう。

風向きと花粉数

緑色で表現したのは、スギ林の分布図です。関東平野を取り巻くようにスギ林があります。
神奈川県内では、箱根丹沢周辺にスギの植林地帯があります。
南西風 シーズン前期(2月)に重要な風向きです。いわゆる春一番の風向きで、
気温が高くなるため、スギの開花を促し、花粉の飛散開始のきっかけとなったり、
前日よりも花粉数を多くします。ただし、雨の場合は多くはなりません。
伊豆半島の植林地帯より、相模湾をわたって、花粉が運ばれてくるとみられます。
西風 横浜で真西から風が吹いてくることはあまりありません。
箱根・丹沢方面から花粉が運ばれてくる可能性があります。
北風 いわゆる「空っ風」「北西季節風」の風向きです。乾燥した低温の風です。
シーズン前期(2月)は花粉数は少ない傾向があります。
北関東のスギが開花するピーク期(3月)には重要な風向きです。
強い北風によって、秩父・奥多摩方面からの花粉が急増することがあります。
例年3月の北風が最大飛散をもたらします。
北東風 いわゆる「やませ」「北東気流」の風向きです。
関東では曇雨天の風向きで、気温が低く、湿度も高めとなります。
ピーク期の限られた時期以外では、花粉が多くなることはありません。
東風 千葉県北部からの風向きです。
ピーク期(3月)では、花粉数が前日より増加する場合があります。
シーズン後期(4月)では、花粉が前日より減少する場合が多いようです。
南東風 天気が下り坂に向かうときの風向きです。気温は高くなり、空気は湿ってきます。
シーズン前期(2月)では南房総から東京湾を越えて花粉が飛んでくる場合があります。
シーズン後期(4月)では、花粉は少なくなります。



顕微鏡でみないとわからない花粉

花粉の大きさは30ミクロンしかありません。
たくさん集まると肉眼で黄色い粉のようにみえます。
花粉の生産量は年によって違うと思われます。
スギの花芽ひとつに40万個の花粉が入っています。

 


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