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DATE:2025.12.31特集

【卒業生】「駒大卒業生の今(仮)」プロバスケットボール・富山グラウジーズ 田中晴瑛選手(25年卒)

 ー4年間でさまざまな経験を積み、多種多様な世界で活躍する駒大の卒業生。そんな卒業生のOB・OGの皆さんが過ごした大学時代・そして現在活躍している場がどんな世界なのか。それぞれのパーソナリティに迫り、功績をたどりながらお伝えする新企画「駒大卒業生の今(仮)」

 記念すべき第一弾となる今回は、プロバスケットボール・りそなグループBリーグ富山グラウジーズに所属する田中晴瑛(たなか はるあき)選手(25年卒)に話を聞いた。(10月初旬、中旬に2度行った文面でのインタビューをもとに作成しております。)

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富山グラウジーズ#17 田中晴瑛(提供:©TOYAMAGROUSES)

 田中晴瑛は2003年2月1日生まれの現在22歳。身長178cm、ポジションはバスケで司令塔と呼ばれるPG(ポイントガード)を担う。常に冷静かつ落ち着いたボールさばきと、物怖じしないメンタルから繰り出される思い切りの良いプレーを武器とする期待のルーキーだ。

 市立船橋高(千葉県)時代から、ウィンターカップなど全国の舞台でも活躍を見せていた田中。駒大バスケ部の前田祥太ヘッドコーチから誘いを受け、2021年に経営学部経営学科に入学した。1年次から多くの試合に出場し、1部との入れ替え戦も経験。4年次には、大学時代に経験したことで1番思い出に残っていることとして挙げたアシスト王も獲得した。1部で戦うことはかなわなかったが、4年間で確かな実力をつけた。

 また、学外の活動ではトライアウトを経て入団した3x3(3人制バスケ)のプロチームAlphasでの活動や、3年次には3x3のU23日本代表への選出、Bリーグ川崎ブレイブサンダース(以下、川崎)に練習生として加入するなど、さまざまな経験を積んだ。

 駒大で過ごした4年の間に学んだことで一番活きていることは「仏教の精神」だという。田中の見せる、常に落ち着いたプレーにつながっているのかもしれない。

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司令塔として味方に指示を送る(撮影:志村采美)
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シュートを放つ田中(撮影:森山蒼斗)

〇Bリーガーとして

 田中は最後の(大学バスケットボール)リーグ戦終了後の昨年11月に特別指定選手として、当時B2リーグ(2部)を戦っていた富山グラウジーズ(以下、富山)に加入。Bリーガーとしての活動がスタートした。

 「具体的に言うのは難しいが、大学リーグとはすべてが違った」というBリーグでは加入当初、選手個々のフィジカルの強さや移動を伴ったタイトなスケジュールなどに苦戦したが、それでもプレー面では大学時代と変わらない安定したパフォーマンスを見せ、昨季は42試合に出場し1試合平均3.8得点、1.8アシストをマーク。ルーキーらしからぬ大きな存在感を放った。最初は苦にしていたアウェーへの移動にも徐々に慣れ、遠征を楽しめるようになった。熊本での馬刺しが特に思い出に残っているという。

 チームは全体3位でレギュラーシーズンを終えると、B1リーグ(1部)昇格をかけたB2プレーオフへ駒を進めることに。そんなプレーオフで"田中晴瑛"の名がBリーグファン・ブースターに知れ渡ることとなったのだ。

〇ターニングポイント

 B2プレーオフでは、上位8チームが来季のB1昇格をかけて2枠を争う。富山はクオーターファイナル(準々決勝)を突破すると、セミファイナル(準決勝)でレギュラーシーズン2位のライジングゼファー福岡(以下、福岡)と対戦。先に2勝すれば昇格が決まるセミファイナルであるが、このシーズンの富山はレギュラーシーズンで福岡に4戦全敗。さらにアウェーの地に乗り込んでの戦いを強いられることとなり、厳しい戦いとなることが予想されていた。

 しかし、富山はGAME1を僅差で競り勝つと、GAME2は持ち前のオフェンス力が爆発し快勝。下馬評を覆す2連勝で、見事にファイナル進出とB1昇格を決めたのだ。そして、その中心にいたのが田中だった。「出ているメンバーに応じて、バランス良くスタイルを変えられる」という持ち味をいかんなく発揮し、得点とアシストを量産。どちらもキャリアハイとなる17得点、10アシストでプロ初のダブルダブルを記録し、まさしくB1昇格の立役者の1人となったのだ。この活躍はBリーグ公式の各SNSでも取り上げられ、ファン・ブースターに広くその名が知れ渡る、ターニングポイントとも言うべき試合となった。

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Bリーグでも確かな実力を示す(提供:©TOYAMAGROUSES)

〇田中晴瑛という存在

 田中は現在22歳、富山の選手たちの中では年齢的に末っ子にあたる。そんな彼はチーム内でどんな存在なのだろうか。仲の良いチームメイトにはチームのキャプテン・藤永佳昭選手の名前を挙げてくれた。現在33歳、プロ11年目のベテランである藤永選手と22歳のルーキー田中。11歳差と少し歳の離れた2人、一見あまり絡みはないようにも思ってしまうが、田中はよく藤永選手の手作りカレーを食べに家に遊びに行くそうだ。以前の取材(駒大在学時)で、駒大バスケ部の先輩から"甘えん坊"な一面があると言われていたが、富山でもその一面を発揮しているのかもしれない。

 さらに、チーム内ではいじるキャラかいじられるキャラかを聞くと、「どっちも!基本的にほとんどの選手からいじられますが、たまに岡田雄三選手(PG/29歳)をいじります」と答え、愛されキャラな一面ものぞかせてくれた。

 富山に加入して1年。富山の街の印象について「雨も雪も多くて、寒い」と気候にはまだ苦労することもあるが「ごはんが美味しい!」と食が豊かな富山らしい回答も。さらに、このインタビュー中に何度も出てきたのは"銭湯"というワードだ。試合前のルーティン、オフの過ごし方、リフレッシュの方法のすべてが「銭湯に行くこと」。食でも住でも癒しを得ながら、富山を満喫できているようだ。

〇今シーズン(2025-26シーズン)

 10月に開幕したBリーグ2025-26シーズンも開幕して約3か月が経った。田中にとって今季は、プロバスケットボール選手として迎えた初めてのシーズンである。

 開幕前に「今まで見てきたような有名な選手とマッチアップすることになるので、自分がどれだけできるかチャレンジしたい」と語っていた田中は、目標とする川崎の篠山竜青選手ともマッチアップを果たした。B1リーグでの戦いながら、昨季よりプレータイムや各スタッツを軒並み伸ばしており、着実にプロとしてのステップを踏んでいる。

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篠山選手(右)とマッチアップ(提供:©TOYAMAGROUSES)

 しかし、その川崎と戦った開幕4戦目の試合中にけがを負い、1か月程度の離脱を余儀なくされた。田中にとって今回のけがはバスケ人生で初めての長期離脱だった。当然苦労することも多かったというが、離脱中は「チームの試合を見ること」がモチベーションになっていたと言い、チームに活力をもらいながら治療に専念し、早期の復帰を果たした。

 「同じポジションの選手にかけている負担を少しでも減らし、チームの勝利につながるプレーをしたい」と語る田中。負傷による離脱を経て、さらに強くなったこの男が西地区の12位(12/29時点)から上位進出を狙う富山のカギを間違いなく握っているであろう。

〇キャリアに向けて

 Bリーグ、そして日本バスケ界には、若くして大きな実績を持つ選手や高いポテンシャルを発揮する選手が年々増えている。田中もその1人であり、当然同世代にはライバルも多い。そういった「同世代や同じルーキーイヤーの選手には負けたくない」と強く意気込む。

 これからのプロキャリアでは、「すごく得点が取れるとか、スキルフルな選手より、誰でもできるようなプレーでもその質が高く、ベーシックなレベルが高い選手になりたい」という。日々進化を続けている田中晴瑛がこれから描く未来がどんなものなのか。1人のプロバスケットボール選手として、駒大を卒業された先輩として、注目していきたい。

〇メッセージ

駒大生へ

「4年間長いようであっという間なので、自分のしたいことに全力で取り組んでいただけたらと思います!」

グラウジーズブースターへ

「いつも熱い応援をありがとうございます。リーグ1熱いブースターだと思っているので、引き続き熱い応援をよろしくお願いします!」

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(提供:©TOYAMAGROUSES)
執筆者:相澤悠

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