食品業界とは―会社の生き残り、商品開発力

2026年5月12日の「現代マネジメントⅠ」では、経営支援NPOクラブの杉田一志氏と時岡高志氏にご講演を頂きました。経営支援NPOクラブは、企業でキャリアを積まれた方を中小企業等に派遣し、指導する活動を行っています。


ご講演中のお二人

「ダイナミック・ケイパビリティ」杉田一志氏のご講演

杉田氏からは経営戦略論の最新理論であるダイナミック・ケイパビリティについての以下の様な詳しい解説がありました。社会に存在する意義を問われている企業は、すべてのステークホルダーを意識しながら持続的競争優位性をもって存続することが必要となっています。持続的競争優位性とは他社と比較して、10年間ほど高い業績をあげていることを意味します。持続的競争優位性に関連して、業界分析から説明したマイケル・ポーターのSCP理論、内部資源から説明したJ. バーニーのRBV(リソースベーストビュー)理論が有名です。両方とも大切であり、事業環境によって競争の型が決まるとバーニー(1986)は「企業競争の3種類の型」を公表しました。その3つは、IO型、チェンバレン型、シュンペーター型です。

さらに今は、激しい環境変化の中で、変化を察知しながら、内部資源を組み合わせて、変化に対応して適応する能力であるダイナミック・ケイパビリティ(DC)が必要となります。D. ティースは、DCの3プロセスとして、センシング、シージング、トランスフォーミングを唱えました。C.アイゼンハートのDC理論では、組織におけるシンプルなルールの徹底、柔軟な意思決定が説かれています。

IBMや富士通など多くの企業事例が紹介され、就活においても会社の歴史を知って、DCが高いのかを確認して欲しいと提案されました。


杉田氏

「発展する食品企業とは」時岡高志氏

次に時岡氏が今回のテーマ『発展する食品企業とは』を講義しました。時岡氏は1973年に日魯漁業(現:UMIOS)に入社。営業部署22年、開発部署8年在籍。2003年には子会社のアクリフーズ再建のため出向・転籍され、取締役営業本部長、常務取締役、専務取締役となり11年間も冷凍食品事業に関わりました。

アクリフーズは元々、雪印冷凍食品株式会社から社名変更した会社で、2003年の雪印食品の牛肉偽装事件の際に、ニチロに売却されたものです。不良在庫の払底に2カ月かかったと時岡氏は証言されました。アクリフーズは2013年に農薬混入事件を起こし、消費者庁に謝罪にも行かれました。

時岡氏は2014年、マルハニチロ㈱に復籍、アクリ事業部顧問となり、2015年同社を退社されました。その後、2社に奉職し、2020年にはBiz Foods合同会社を設立。商品開発アドバイザーとして活躍されています。

ご講演では、企業が存続・発展のためには商品開発が生命線であることを複数の企業事例から説明され、自らが関わったニチロやアクリフーズの冷凍食品事業でのヒット商品を説明されました。学生たちも良く知っている商品で、食品会社を身近に感じることができました。例えば、2007年の「えびとチーズのグラタン」などです。

様々な業界の代表選手が交代しており、企業の倒産件数や企業の寿命30年説も説かれ、ビジネスのリアル感が学生たちに響きました。企業倒産の理由、倒産を防ぐための対策も語られました。そのキーワードは、温故知新と草莽崛起でした。

会社の経営資源、会社組織の役割も説明されました。その際、開発部=売上、営業部=利益、生産部=信頼という図式が印象的でした。

 会社存続に必要なものとは、会社を救うヒット商品とは、マーケティングとは、が説明され、SWOT分析、3C分析、4P分析など経営学の理論が現実に利用されていることも印象的でした。


時岡氏

学生からの質疑応答では、主にマルハニチロからUMIOSへの社名変更の理由や経費について聞かれました。


330名が出席

以下、学生からの感想の一部を紹介します。
「マルハニチロの強みは、漁業という「自然相手の不安定さ」を祖業に持つがゆえの、変化への適応力の高さにあると感じます。現場では、資源枯渇や気候変動といった脅威をいち早く「感知」し、従来の漁獲中心から養殖や完全養殖技術へとリソースを「捕捉・再配置」する動きが加速しています。 また、加工食品部門でも、単なる製造にとどまらず、健康機能を付加した高付加価値商品への「変容」を遂げています。伝統を重んじつつも、環境変化をリスクではなく進化の契機と捉えるマインドが、組織全体に浸透している点が非常に印象的です。」
「今回の講義では、実際にお話を伺う機会のあったマルハニチロという企業について学べたことが非常に良かったです。普段何気なく購入している冷凍食品にも多くの背景や工夫があることを知り、特に「そば飯」がヒットしすぎて他工場でも生産を依頼するほどになったというエピソードが印象的でした。一方で、売れない商品の在庫を抱えることで倒産につながるリスクがあるという点から、需要と供給のバランスの重要性や、早期判断の大切さについても学ぶことができ、非常に勉強になりました。今後、私も業界は違いますが、就職し、その後起業したいと考えています。その時にも役に立つようなお話を聞くことができ、とても有意義な時間になりました。」
「不確実な現代で企業が生き残るための「自己刷新力」の本質を学びました。特に、既存の強みを効率化する「オーディナリー・ケイパビリティ」だけでは、激変する環境下で「ゆでガエル」になりかねないという指摘には、強い危機感を抱かされました。 提唱者ティース氏が説く「感知・捕捉・変容」のプロセスは、単なる戦略論に留まらず、組織の代謝を促す生命維持装置のようだと感じます。過去の成功を「捨てる」勇気と、資源を再編する経営層の強固なリーダーシップが噛み合ってこそ、DX時代の競争優位は築かれます。変化を恐れるのではなく、変化そのものを燃料にして進化し続ける組織の在り方に、深い感銘を受けました。」

(M.M.)