第10回学生シンポジウムに経営学部から13チームが参加(後編)
11月29日(土)実施の学生シンポジウム、今回は後編の齋藤ゼミ、中野ゼミ、鹿嶋ゼミからの参加チームの発表の様子をお伝えします。前回分はこちら。
齋藤ゼミ① 若者視点から考える日本酒需要拡大戦略
日本酒の需要が低迷している。1973年に170万kIだった国内出荷量は、2023年に39万kIまで減少し、清酒企業数も 1956年の4,000社から2021年には1,544社にまで減少した。日本酒は日本が誇る食文化の一つであることを踏まえると、日本酒産業の維持発展は経済発展のみならず、伝統文化保持の観点からも重要な課題である。本調査では、日本酒の需要回復のための経営戦略を内需と外需に分けて検討した。まず内需では、学生150名を対象としたアンケート調査を実施し、若者が日本酒を飲まなくなった要因を検討した。分析結果から、日本酒は度数が高くサイズが大きく高価格で、デザインが古めかしく、飲み合わせの知識も得にくいなど、商品開発やマーケティングの面で改善の余地があることがわかった。この分析結果をもとに、日本酒の新たな販売方法について提案を行った。
次に外需については、和食がユネスコ無形文化遺産に登録された2013年以降、日本酒の輸出は数量・金額ともに大きく伸びている。しかし現時点で全出荷量に占める輸出量の割合は4〜5%にとどまり、輸出先にも偏りがあるなど、輸出を伸ばす余地は大きい。本調査では、文献調査から日本酒輸出の現状を把握したうえで課題を明らかにし、輸出先ごとにいかなる戦略が有効かを提案する。
【参加学生の感想】
他のゼミの生徒と交流する機会が今まであまりなかったため、今回のシンポジウムは、新しい視点に触れることのできる充実した時間だった。発表後に発表に対しての討論の時間が設けられていたことで、聞き手としては自分の意見と照らし合わせながら話を聞くことができ、発表内容がより深く記憶に残った。発表者としても、ゼミ内だけでは出てこなかった他者の視点や気づきを得ることができ、大変参考になった。今後の学習にも生かせる有意義な経験だった。
中野ゼミA 環境問題まじごめん!「ごめんね消費」
私たち中野ゼミA班では「ごめんね消費」について研究を行っている。近年、安価でかわいい商品があるという理由で、sheinやtemuなどの格安サイトで服を購入する若者が増えている。その一方で、sheinやtemuでは不当な労働問題、発がん性物質、環境問題など様々な社会問題を抱えている。また、そのような社会問題を知り、罪悪感を感じながらも、安価であるなどの理由で商品を購入してしまう「ごめんね消費」をしてしまう人がいる。
私たちはこの「ごめんね消費」を問題と捉え、「ごめんね消費」をする人を減らし、環境にいい行動をする人が増えることがより良い社会につながると考えた。
【参加学生の感想】
今回、学生シンポジウムに参加して別学部のゼミの方にたくさん意見をもらえたので良かったです。他のゼミは全て経済学部のゼミだったので、今までとは違う視点の意見をもらえて視野が今まで以上に広がりました。また、他ゼミの発表を見て発表内容だけではなく、プレゼンテーションのやり方など多くのことを学ぶことができました。今後の研究に生かしていきたいと思います。
中野ゼミB 気まずさ利用マーケティング
現代の若者にとって「気まずい」という言葉は日常会話で頻繁に使用されている言葉である。
実際に、2021年には「気まずい」から派生した「きまZ」という言葉がJC・JK流行語大賞に選出され、2022年には「気まずい」の語幹を感動詞とした言葉である「きまず」という言葉が「今年の新語2022」に選出されるなど、若者にとって非常に馴染みのある言葉になっている。また、この流れに伴って、SNSのインフルエンサーが発信した「日常の気まずさ」をネタにした動画が高い再生回数を記録しており、「気まずい」という言葉のエンタメ化も進んでいる。
このように、「気まずい」というネガティブな意味を持つ言葉が、Z世代を中心として広く使われている一方で、Z世代に好まれていない広告表現として挙げられているのが、「恐怖喚起広告」である。「恐怖喚起広告」とは、不安や恐怖を煽り、顧客に対して説得効果などを高めることを意図した広告表現である。Z総研によるZ世代を対象とした広告に対する意識調査の結果では、「不安を煽るような表現」が若者から最も好まれない広告表現として挙げられている。そのため、ネガティブな感情の訴求をする広告表現は若者からは広告を見ること自体を回避されかねないことであると考えられる。しかし、「気まずい」という言葉はネガティブな意味を持つものの、エンタメ化が進んだことによってZ世代からは受け入れられやすい表現になっている。
これらのことから私たちは「不安」や「恐怖」は若者から好まれない一方、「気まずい」は好まれることや、「気まずさ」という感情を訴求した広告表現が少ない点などに着目し、「恐怖を喚起する広告」と「気まずさを喚起する広告」のそれぞれが、ブランド態度及び広告態度にどのような影響を与えるのかという趣旨の仮説を立て、研究を行った。
【参加学生の感想】
多くのゼミとの交流を通じて、新しい視点や考えを得ることや、自分たちの考えに対する様々な意見をもらうことができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。また、このような機会は普段することがなかなか無いため、貴重な経験にもなりました。今回の経験を糧にして、今後の自分たちの研究に活かしていきたいと思います。
鹿嶋ゼミ① 男性の育児休暇取得について
私たちはパタハラ、イクボスこの二つについて研究しました。近年の日本は男性の育休取得率が令和6年で約40%と女性の86.6%と比べるとかなり低い割合になっています。その原因としては制度の取りづらい雰囲気、管理職や上司のパタハラ(パタニティ・ハラスメント)などが挙げられます。パタハラとは育児休暇を利用しようとする男性に対しての嫌がらせ行為の事を言います。その解決策として私たちは管理職がイクボスになる必要があると考えます。イクボスとは自分と部下のワークライフバランスを尊重し、かつ業務の効率化を図ることのできる管理職です。管理職がイクボスになる事で男性の仕事の効率や家庭への貢献度が上がります。そうする事で配偶者の家事の負担が減り女性のキャリアアップにもつながります。このようにイクボスは男性やその企業に好影響を与えるだけではなく、女性や女性の働く企業にも良い影響を与えることができます。このようなことから私たちはイクボスを増やし、男性の育休取得率を上げることが多くの人に良い影響を与えると考えます。
【参加学生の感想】
他のゼミの発表を聞きどのゼミの発表も興味深いものが多く日頃のゼミでは学ぶことのできないものを学ぶことができた、また私たちも発表やそれに対する質問を通じて新たな気づきを得ることができました。来年も参加するので今年の反省を活かしより良い発表ができるように研究を深めていきたいです。
鹿嶋ゼミ② 就職氷河期世代と他世代の格差拡大
就職氷河期世代と他世代との格差を論じた。
氷河期世代とは、90 年代半ばから00 年代初頭の不況下で就職活動をし、個人の努力ではどうにもならない社会構造の変化の中でキャリアをスタートさせた人々のことを指す 。格差の起点は、バブル崩壊後の採用抑制による新卒時の「機会の不平等」である 。これにより「正規雇用への入り口」が物理的に閉鎖され 、非正規雇用比率が上昇した 。中途採用市場は「即戦力」としての正規キャリアを重視するため、一度非正規になると正規復帰が困難になり、低賃金・短時間雇用に固定化されやすい構造がある。
この結果、生涯賃金や資産形成の遅れといった経済的格差が生じるだけでなく 、経済的理由による非婚化・晩婚化や 、教育格差の次世代への再生産リスクといった社会的影響にも連鎖している 。
具体的な対策として、国はハローワークの専門窓口による伴奏型支援や、正規雇用化のための企業向け助成金を実施している。
地方自治体も、地域ニーズに合わせた資格取得支援や 、引きこもり層へのアウトリーチ支援などを行っている。発表では、特に氷河期後期世代で格差が深刻であり、新卒時の非正規比率の格差が将来の年収格差につながり、正規・非正規の分断が固定化していると結論付けた。
【参加学生の感想】
時間を意識して準備に取り組めたため本番ではとてもスムーズに発表することができた。自分たちと初学者との間に知識の差があることを意識し、誰にでもわかりやすく、興味を持ってもらえるスライドや説明の構成を工夫した。その試行錯誤の過程で、自分たちの理解もより深まったと感じた。
また、他ゼミの研究内容に触れる機会は普段ほとんどないため、とても貴重な機会だったと感じた。また、討論の時間では、自分の研究分野を知らない人からの意見や新しい視点を得ることができた。
鹿嶋ゼミ③ 非正規労働者の組織率について
近年、主たる生計を担う非正規労働者が増えるなか、職場で正社員と同等の責任を負いながらも賃金や待遇では正社員との格差が生じる問題が起きている。
労働組合に加入すれば、正社員化や賃上げへの働きかけ、ハラスメント相談などのメリットがある。
しかし2025年の推定組織率は16.1%と低く、多くの労働者が加入していない。
その要因には活動内容の不明瞭さ、知識不足、組合費負担、低加入率による心理的ハードルがあると考えられる。
私たちは、労働問題を身近に感じさせる取り組みや非正規に特化した新たな組合結成を提案する。容易ではないが、一人一人が労働問題を考え対話することが重要である。
【参加学生の感想】
異なる分野を学ぶゼミの方々と議論できたことは、とても新鮮な経験でした。自分たちだけでは得られなかった多角的な視点から、今回取り上げたテーマについて改めて考える良い機会となりました。学生シンポジウムを通して得た知見を、今後の活動に活かしていきたいと思います。
鹿嶋ゼミ④ 労働格差
同一労働同一賃金の用語説明を行ったのち、説明を聞いたうえで同一労働同一賃金に賛成か反対かをオーディエンスに投げかけた。
次に、私たちがなぜこのテーマを選んだのかの背景を説明した。ゼミで取り扱った新書を読み、私たち大学生にとって、他人事ではなく、自分のこととして自分自身と照らし合わせて、発表を聞いていただけると考え、このテーマを選択した。テーマ選択にあたって、ベースとなる新書の大まかな内容を説明した。内容の中で、私たちが注目した「非正規の働き方の深刻さ」と「その背景には日本の雇用制度全体の構造的問題」が関係しているという二点が分かり、「同一労働同一賃金」がその二つの糸口になるのではないかと考える。
そして、日本における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の格差について、実例を挙げて説明を行った。日本だけでなく、世界では「同一労働同一賃金」がどのような立ち位置にいるのか、どのように捉えられているのか、日本企業の現状、対応・取組について説明をした。
以上の実態から、私たちは四つの改善策を提案する。①非正規労働者の賃金を同一職務の正社員の水準まで引き上げる②正規・非正規の仕事区分を明確化し、現状の賃金格差を正当化する③正社員の賃金水準を引き下げる④正社員・非正規社員双方の賃金制度を一から見直すこと。
最後に、発表内容のまとめと、私たちは同一労働同一賃金について賛成であることを述べた。
【参加学生の感想】
自分たちが学んでいる内容に対して他ゼミからの質問を聞くと普段は思い付かないようなアプローチの仕方が知れて良い学びになりました。また、他のゼミがどちらも経済の視点から労働格差を調べていて考え方がとても新鮮でした。
10回にわたり、全学的イベントとしての学生シンポジウムを運営してくださっている経済学部の皆さまには改めて御礼申し上げます。
(HK)
経営学部