沖縄いろいろ事典(ナイチャーズ、垂見健吾 他著)

眼横鼻直(教員おすすめ図書)
Date:2026.11.02

書名 沖縄いろいろ事典
著者 垂見健吾 他(ナイチャーズ編)
出版社 新潮社
出版年 1992年
請求番号 準備中
Kompass書誌情報

 

刊行は1992年。つまり、昔の本です。しかし、この本の価値は全く失われていません。むしろ、街から書店が次々に姿を消し、紙媒体の書籍に触れる機会が劇的に減りつつある中で、この魅力を凌駕する沖縄についての書籍は、今後もう出てこないように思います。

この本の豪華な執筆陣には、感嘆を禁じえません。1992年の日本が、今よりも充実して分厚い知的生産層を有していた事は、明らかでしょう。池澤夏樹、椎名誠、筑紫哲也、陳舜臣、吉本隆明ら、驚くような人材が同書に原稿を寄せています。それぞれの書き手が、沖縄に対する熱い気持ちを核に執筆をした約200のコラムを、読者は興味をもったところから自由に読み始めることができます。取り上げられるテーマも、歴史や自然、そしてことば、さらに食や音楽、芸能や工芸、また生活風習から政治まで、実に多彩です。

試みに、本書の42ページから51ページまでの間に記載されている項目を列挙してみましょう:「具志堅用高」、「クーブ(昆布)」、「組踊」、「グルクン」、「グヮー(小)」、「軽貨物」、「結婚式」、「ゲンキ牛乳」、「公設市場」、「5・15」、「国際通り」。このリストからも、『沖縄いろいろ事典』の多様さと豊富さは歴然としています。だれでも一度は耳にしたことがあるような有名な事柄がある一方、この本だからこそ教えられ、知り得ることもあります。(本書に補足して言えば、那覇の「国際通り」の近くに「ゆぅじ小」という名前のおいしい料理屋さんがあります。また、1972年「5月15日」の復帰前から今世紀の初め頃まで、宅配の「軽貨物」車にタクシー代わりに安価で乗せてもらうことが、沖縄では黙認されていたそうです。)

それにしても、那覇の「公設市場」を取材した写真家・垂見健吾による迫力の写真は、圧巻の一言です。本全体にふんだんに収録された豊富な写真が、個性豊かな書き手たちによる優れた本文を、巧みにサポートしています。沖縄の文化がなぜこれほどまで私たちの興味を惹きつけるのでしょうか。本書は一つの答えを出すのではなく、多様な正解へと私たちを導いてくれます。だからこそ、沖縄についてのあらゆる知的好奇心の入口として、この本は今から30年後も、沖縄の文化や風土についての最も優れた図書であり続けることでしょう。

総合教育研究部 教授 白鳥義博

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