2025年度経済学部奨学論文受賞者の研究報告

2025年度経済学部奨学論文において佳作を受賞した田原空さんによる研究報告です。

【論文タイトル】
幸福度と喫煙行動の関係性
一新たな禁煙促進政策への提言一

田原 空

【テーマ選定理由】
 気がつけば、私の周囲の仲間や友達は、たばこを吸っていた。
 サービスエリアに寄る度に、イベントが終わる度に、一息つく度に、皆の向かう先は喫煙所。全員が足並み揃えて向かうものだから、喫煙所に足を運ぶ様子を見送る都度、疑問を感じずにはいられなかった。「なぜそこまでして紫煙を燻らすのだろうか」と。これが私の研究の原点である。
 たばこをテーマに執筆することを決め、調査していくうちに、禁煙に向けて外発的なはたらきかけによって喫煙率の減少を図っているものの、その効果が反映しきれていない現状がわかった。それを受け、内発的動機づけを引き出す新しい禁煙政策を考えることに価値を感じ、個人の主観に大きく左右される「幸福度」から考察することで、更なる喫煙率の低下に寄与できるのではないか、と考えた。

【研究の概要】
 喫煙と幸福度の関係を、幸福度を形成する所得と教育の観点から分析した結果、一般的な傾向として、所得格差が出発点となり、教育格差を生み、それが次世代の所得格差へと連鎖する負のスパイラルが一定程度存在することがわかった。奨学金や給食費無償化などの支援がない場合には、親世代の低所得は子世代の教育機会を制限し、教育水準の低さは就業機会や職業選択の幅を狭め、結果として低賃金・不安定雇用に繋がる可能性がある。このような環境下では、将来への展望が描きにくく、ストレスが蓄積しやすい。その場合、選択肢の制約が重層的に作用することで幸福度が低下し、限られた時間と費用の中で、手軽にストレス解消や気分転換を図る手段として、たばこが選択されやすくなるのである。
 従来の禁煙政策は、啓発や規制、たばこ税の引き上げを中心としてきた。しかし、近年では喫煙率の効果的な低下が見られず、現行の政策が頭打ちになっていることが確認できた。今後求められるのは、健康政策としての性格に加え、経済政策・社会政策としての性格を持ち合わせた禁煙政策であると考えた。所得と教育の格差を是正し、すべての人々に多様な選択肢へのアクセスを保障することで、個人の生活満足度が向上し、将来への展望が開け、幸福度が高まる。その結果、喫煙という限られた選択肢に依存する必要がなくなり、より健康的で持続可能な生活様式への転換が促される。幸福度の向上を通じた禁煙の促進こそが、頭打ちとなった現行の禁煙政策を補完し、持続可能で実効性の高い禁煙政策を構築する鍵となる。

【研究を終えて】
 ゼミで学んできた三年間の集大成が、このような入賞という成果に結びついたことを大変嬉しく感じている。テーマ設定や構成に苦戦を強いられながらも、現地調査といったフィールドワークや、同じゼミの教授や仲間の支えによって、最後まで追究することができた。この研究に携わってくださった方々には、感謝の念に堪えない。本当にありがとうございます。社会人となるこれからも、夢と志に向かって新たな価値を求め、挑戦し続けていく。

〜ゼミでの卒論報告会の様子(番場ゼミ)〜
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