現場で学ぶ海外スタディツアー2026【ベトナム編】― 吉田健太郎ゼミ × 長崎県立大学・大久保文博ゼミ ―
経済学部 吉田健太郎ゼミ3年 細田知宏さんによる海外スタディツアーの報告です。
経済学部・吉田健太郎ゼミでは、「現場主義・実践主義」を掲げ、学生が自ら現場に足を運び、そこで得た気づきや発見を研究につなげる教育・研究活動に取り組んでいます。その一環として、2026年9月5日~15日、本学吉田健太郎教授と長崎県立大学大久保文博専任講師の引率のもと、ベトナム・ハノイとラオス・ビエンチャンを訪れる海外スタディツアーを実施しました。昨年度に引き続き、長崎県立大学・大久保文博ゼミとの合同企画です。本稿では、そのうちベトナム・ハノイで行った企業調査について報告します。
今回のベトナム調査(駒澤吉田健太郎ゼミ班)では、ゼミの主要な研究テーマの一つである「起業家・中小企業の国際化」について理解を深めるため、ベトナムに進出した企業や現地で活動する起業家が、現地の人材やネットワークをどのように活かし、市場開拓や新たな事業・イノベーションにつなげているのかを明らかにすることを目指しました。学生たちは渡航前から先行研究や訪問企業について調べ、議論を重ねながら研究課題やヒアリング項目を練り上げました。昨年度の経験も踏まえ、今年度は「現地で何を明らかにしたいのか」をより意識し、事前研究から企業へのアポイント取り、現地でのヒアリングまで、学生が主体となって進めました。
今回は、駒澤大学吉田ゼミの学生で構成する2つの班と、駒澤大学・長崎県立大学の学生で構成する合同班に分かれて調査を行いました。私は駒澤A班に参加し、ベトナムに進出した中小企業や現地で活動する起業家の方々へのヒアリングを通じて、「なぜベトナムで事業を成長させることができたのか」という観点から、多くのことを学びました。
現地調査に向けた事前研究では、まず関連する先行研究を読み込むことから始めました。その中で、海外でイノベーションを生み出すための考え方が時代とともに変化してきたことや、進出先の国や市場の発展に伴って、企業と現地との関わり方も変化していくことを学びました。
文献を調べる中で生まれた疑問を先生に投げかけ、フィードバックを受け、さらに調べて考える。この作業を繰り返しながら、「現地でイノベーションを生み出すためには何が必要なのか」という問いを少しずつ掘り下げていきました。こうした事前研究のプロセス自体が、私にとって非常に充実した学びの時間となりました。
(F社ハノイ事務所を訪問)
次に、企業へのアポイント取りにも苦労しました。メールではなかなかコンタクトが取れず、直接電話をかけた企業もありました。事前研究を踏まえて調査の目的を分かりやすく端的に伝えるとともに、単に用件を伝えるのではなく、相手に「話を聞いてみよう」と思っていただけるような伝え方を心がけました。その結果、希望していた企業を実際に訪問することができ、丁寧で分かりやすいコミュニケーションの重要性を実感しました。自分たちで研究テーマを考え、その目的を企業に伝え、訪問につなげるという一連の経験そのものが、私にとって貴重な学びとなりました。
また、手分けして複数の企業と連絡を取りながら、限られた日程の中で訪問スケジュールを組み立てる必要がありました。アポイントが取れるかどうか分からない状況で、お互いに報告・連絡・相談を重ねながら調整を進めた経験から、チームで活動するうえでの情報共有の重要性も学びました。
現地では、まずJETROハノイ事務所を訪問し、ベトナム経済や市場の現状、日系企業の進出状況などについてお話を伺いました。事前研究で得た知識に現地の最新情報を重ねることで、その後の企業訪問に向けて、ベトナムでビジネスを展開する企業を考えるための理解を深めることができました。
(ジェトロハノイ事務所を訪問)
その後、私たちの班では企業訪問が始まりました。ここからの経験が、今回のスタディツアーの中でも、私自身を大きく成長させる機会となりました。企業訪問には吉田健太郎先生と修士課程の大学院生も同行し、学生だけでは気づくことのできない視点からもヒアリングができるのではないかと、私自身とても楽しみにしていました。
企業それぞれの特徴を踏まえて事前に質問内容を考え、私はメインスピーカーとしてヒアリングに臨みました。しかし、実際に話を聞く中で、用意した質問項目を順番に聞きながらも、「これで本当に研究に必要なことを聞けているのだろうか」という違和感を覚えました。そこで先生から受けたアドバイスが、「因果関係を聞く」ということでした。事前に用意した質問をすることも重要ですが、「なぜそれが可能になったのか」「その出来事が次に何につながったのか」「その後、行動がどのように変わったのか」「そこには誰が関わっていたのか」と掘り下げていくことで、一つひとつの変化の背景と、その変化が次の変化につながっていくプロセスを捉えることが重要だと気づきました。そこから徐々に自分の質問の仕方も変わり、相手の話をより深く聞けるようになったと感じています。
(P社M氏ヒアリング調査の様子)
また、実際に企業の方々のお話を伺う中で、現地化とは、単に日本本社からベトナム側へ仕事や権限を移していくことではない、ということも強く印象に残りました。現地の人材やネットワーク、そこで得た知識を活かしながら現地拠点が力をつけ、日本本社と対等な関係を築いたり、時には現地側が主導したりすることで、日本本社を含めた企業全体の成長につながっている事例もありました。事前研究で学んだことを、実際の企業の取り組みと照らし合わせながら考えることができたことも、今回の現地調査の大きな学びでした。
(現地調査の道中に車内から見たハノイ紅河)
今回は、こうした企業訪問だけでなく、吉田健太郎先生や長崎県立大学の大久保先生、大久保ゼミの皆さんと食事を共にする機会もありました。
吉田健太郎先生とは、これまで以上に交流を深めることができたと感じています。これまでも大学で話す機会はありましたが、一緒に海外に行き、企業を訪問し、食事を共にすることで、普段の大学生活ではなかなか聞くことのできない話も伺うことができました。その中で、先生がどのような考えから私たちにさまざまな助言をしているのかについても、以前より理解が深まったように思います。今後は、助言をただ受け取るだけではなく、その意図を考えながら、自分自身がどう考え、行動するべきかを意識していきたいと思います。
また、長崎県立大学の大久保ゼミの学生との交流も、大きな刺激となりました。大久保ゼミの学生は、ゼミ活動を通じて東南アジアについて深い知見を持ち、現地でインターンシップを経験している学生も多くいます。そうした学生たちとフィールドワークを共にし、話をする中で、それぞれが自分の考えを持ち、それを行動に移している姿から多くのことを学びました。また、大久保先生との食事では、さまざまなお話を伺う中で、多くの方々とのつながりを大切にし、それを研究や教育に活かされていることが伝わってきました。
今回のベトナムでのスタディツアーは、研究について学ぶだけでなく、私自身の考えを深め、これから自分がどうしていきたいのか、そして自ら行動することの重要性について考える機会にもなりました。
現地調査を終えた現在は、先生や班員とともに、ヒアリングで得た情報を整理・分析し、研究としての結論を導き出していく段階です。現地で得た多くの情報をどのように整理し、分析し、研究成果につなげていくのか。そのプロセスにも、さらに多くの学びがあると思うと楽しみです。今回の経験を、今後の研究や自分自身の成長につなげていきたいと思います。
最後になりますが、先生方、調査にご協力いただいた企業・関係者の皆さま、そして今回も海外スタディツアーを通じて共に学ぶ機会をいただいた長崎県立大学の皆さまに、改めて感謝申し上げます。長崎県立大学の皆さんとは、今後も互いに刺激し合い、学び合える関係を築いていきたいと思います。
なお、ベトナムでの調査を終えた後、スタディツアーはラオス・ビエンチャンへと続きました。ラオスでの活動については、別の記事で紹介する予定です。
経済学部 吉田健太郎ゼミ3年 細田知宏
経済学部