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~襷~ 記録を未来へつなぐ「襷」の担い手

【襷(たすき)】は、駒澤大学に通う皆さんが「どのような社会人生活を送りたいか」をイメージできる、キャリアセンター発の連載企画です。在学生が現在活躍する駒大OB・OGを訪問し、先輩たちのリアルな声をお届けします。

長谷川 貴志先輩に、文学部4年 小倉/田中が取材しました!(2026年1月取材)
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学生時代の学びと経験

ゼミを選んだ理由と、当時力を入れていたことを教えてください

元々高校の教員を目指しており、現代の社会状況と結びつけて考えることができる日本近現代史に興味がありました。1年生で履修する基礎演習が熊本史雄先生の担当だったことが縁で、当時から「熊本ゼミに入りたい」と決めていました。

学生時代に最も大切にしていたのは「自分の目で見て、行動すること」です。例えば、松尾芭蕉の『奥の細道』をただ座学で学ぶのではなく、実際に東北をまわり、自分の足で稼いだ情報で歴史を感じるようにしていました。また、独学で始めた中国語を活かしたいと思い、上海への短期留学や台湾での1年間の交換留学も経験しました。外から日本を見ることで、日本の社会・文化の魅力を再認識する貴重な機会となりました。

大学院進学を選んだ背景には、どのような思いがあったのでしょうか

当初は学部卒業後の教員試験を考えていましたが、留学先で感じたカルチャーショックや、当時リーマン・ショック後の厳しい就職状況を目の当たりにする中で、「もう少し研究を深め、将来に繋がる力をつけたい」という思いが強まり、大学院への進学を決意しました。

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就職活動と進路選択

「アーカイブズ」という道に進もうと考えた決め手は何でしたか?

大学院在学中にアーカイブズに関する授業や国文学研究資料館「アーカイブズ・カレッジ」という研修に参加したことが大きな転機となりました。そこでは、国や地方公共団体の重要な記録を守り、利用提供する非常に奥深い世界であることを知りました。当時は明確な進路が見えていたわけではありませんでしたが、この分野に「今までにない面白さ」を感じたことが、現在の道に繋がっています。

現在の職場である国立公文書館を選んだ経緯を教えてください

博士後期課程1年目の時です。将来への不安もありましたが、ちょうど国立公文書館で週3日の調査員募集があったんです。専門性を活かせる場ですし、「まずはチャレンジしてみよう」と一歩踏み出しました。面接では自分を大きく見せず、素直に臨みました。留学や研究で培った「自分の目で見て、自分の言葉で語る」という姿勢を評価していただけたのかなと思っています。

社会人としての経験

具体的な業務内容について教えてください

現在は総務課企画経営係に所属しています。主な業務は、2028年(令和11年)度末の開館を目指している新たな国立公文書館の開館に向けたソフト面の企画立案や関係機関との連携・調整です。新しい館でどのような機能を拡充し、どう体制を整えていくかといった、館の中核に関わる計画に携わっています。専門的な資料分析だけでなく、多くのタスクを同時並行で進める「マルチタスク」な行政実務が中心の日々です。

仕事のやりがいや、大切にしている「使命」は何でしょうか

公文書館の仕事は、資料を保存し、皆さんに利用してもらうことが主な仕事ですので、一見すると地味に映るかもしれません。しかし、私たちの使命は、「残されてきた記録を、次の世代へとつないでいく」ことにあります。まさに駅伝の「襷」と同じで、先人が繋いでくれた襷(記録)を、現在の私たちがしっかり守り抜き、未来へ渡していく。自分が今取り組んでいる仕事が、将来的に誰かの役に立ち、歴史として繋がっていくことに大きな価値を感じています。

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特に印象に残っている業務はありますか

『認証アーキビスト』という資格を立ち上げた時ですね。仕組みを作るために上司・部下や、有識者の方々と喧々諤々議論を重ねました。コロナ禍で普及活動が制限されるなど苦労もありましたが、今では非常に愛着のある、いい経験だったと感じています。

多忙な中で、仕事と研究をどう両立されたのですか?

まず、恩師の熊本先生からは「どんなに忙しくても研究はやりなさい」と言われました。それと同時に「研究だけではなく、仕事もしっかりやりなさい」とも。仕事を疎かにして研究ばかりしているようでは、周囲から認められないという教えでした。とはいえ、最初は時間の作り方がわからず苦労しました。仕事でぐったりし、育児も始まって、時間は全くない。

そこで、時間を細分化して考えるようにしたんです。夜にやるのは諦めて、朝5時頃に起きて子どもが起きてくるまでの2~3時間、「それしか時間がないぞ」と自分自身にプレッシャーをかけて、集中して取り組みました。通勤電車の中で論文の校正など、わずかな隙間時間も使い、毎週コンスタントに継続することで、博士号を取得し、単著を刊行することができました。

未来への展望と学生へのメッセージ

今、明確な目標がなくても不安に思う必要はないのでしょうか?

不安に思う必要はないと思います。私自身、学生時代に取り組んでいたことが、将来何につながるのか当時は分かっていませんでした。その取組の一つひとつは、ただの「点」でしかなかったと思います。ですが、やり続けることで、就職後にそれが「線」としてつながり、やがて広がりを持って「面」になっていきました。

大切なのは、自分の「やってみたい。もっと知りたい」という興味関心・好奇心を大切にし、自ら動き、物事を直接見て判断することです。何でもいいから一度本気になって取り組んでみてください。行動に移した経験こそが、社会に出た時のヒントになるはずです。

大学院進学を迷っている学生へのアドバイスはありますか?

明確な目標がなく、将来に悩みながら進学してもいいと思います。大学院の2年間は、自分で動いてものを見て、自分に向いているかどうかを判断するための期間だと考えてもいいはずです。まずはやってみて、その中で道を探すのも一つの有意義な選択肢ではないでしょうか。

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大学時代にこれだけはやっておくべきことはありますか?

多面的にものを見る経験です。日本という国や自分がいま属している組織、コミュニティを、一度外側から俯瞰してみてください。私自身、日本にいるだけでは気づけなかった日本社会・文化の魅力や強さを、台湾での留学経験を通して実感しました。立場や場所を変えて物事を多角的に見ることで、それまで見えていなかった新たな価値や視点に出会えることがあります。

在学生へのメッセージをお願いします

大学で出会う友人、先輩後輩、先生は、本当に貴重な財産です。私もゼミの仲間とは今でも交流があり、他業界の動向が学べて非常に勉強になります。そして、大学時代のような一体感があり、懐かしさがあります。自分一人でできることは限られています。恩師や同級生との関わりを大切にしてください。

あわせて伝えたいのは、「やりたい」と思ったことには本気で取り組んでほしいということです。AIがこれだけ発展し正解のない時代だからこそ、自分の興味関心や好奇心を信じて、今しかできないことに全力で挑戦してください。

おわりに~インタビュアーの感想~

今回のインタビューを通して、好奇心に従って懸命に取り組んできた経験が、後になって将来に生きていくのだという点が特に印象に残りました。将来につながるか分からなくても、自分の目で見て行動し続けること自体に価値があると感じました。また、忙しい中でも仕事と研究の両立に真剣に向き合ってこられた姿から、本気で取り組むことの大切さを学びました。このインタビューを通して、私自身も好奇心を大切にしながら、何か一つでも本気になって取り組んでいきたいと思います。(小倉)

今回のインタビューを通して、長谷川様が現在までのキャリアを歩まれる中で、大切にされている信念についてお聞きすることができました。とくに、長谷川様は何事にも好奇心を持って取り組む事を大切に、これまでのキャリアを歩まれてきました。そこには、学生時代から自分の目で見、足で行動するという長谷川様の行動力に裏打ちされたものがあるように感じました。このインタビューの中で、長谷川様のこれまでのキャリア、仕事に対する信念等に触れ、改めて実際に行動することの大切さについて学ぶことができたように思います。私自身も何事にも好奇心を持ち、常に全力で取り組むことを大切にしていきたいと思います。(田中)

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[著]・[聞]
文学部歴史学科4年_小倉愛加
文学部歴史学科4年_田中稜馬
[写] キャリアセンター_木下恵

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本記事関連リンク
国立公文書館
認証アーキビスト
駒澤大学文学部歴史学科

駒澤大学大学院
襷~先輩の足跡~