萩原朔太郎詩集「青猫」
今日の一冊
萩原朔太郎著
新潮社
1923.1
「青猫」
「月に吠える」
自筆葉書
勤め始めた頃、広い書庫の中で萩原朔太郎(1886~1942)の『青猫』の初版本を見つけた時は驚きました。
駒澤大学図書館では、単行書の小説や詩集類は、原則ですが収集の対象外と思っていたからです。
『青猫』は、第一詩集の『月に吠える』発刊後6年を経て、その間の詩作を纏めたものです。
「憂鬱」の語はこの第二詩集の主題となっており、当初書名を『憂鬱なる』とするつもりでした。
ところが、『憂鬱なる××』の小説や詩集がその前に公刊され、「この語句の持つ官能的にきらびやかな觸感が当初の鮮新な香気を希薄にし、取って置きの書銘を用いる事が出来なかった」と著者は凡例で語ります。
また後の『定本青猫』の中でも、「物憂げなる猫」の意味の標題と小乗仏教的な寂滅為楽の厭世観が自ずから詩の情想の底に漂っていることを述べています。
収蔵の決め手はこの辺りにあるのかも知れません。第一詩集「月に吠える」の初版本も数年前蔵書に加えました。
【犬から猫へ】の著者の心の軌跡を手にとって味わってみませんか。(zuisen記)
右より:「定本青猫」(1936.3)表紙から猫の絵、「青猫」表紙、「月に吠える」(1917.2)標題紙(室生犀星の署名)、自筆葉書(1925.4)