駒澤大学

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因果の小車(いんが の おぐるま)

今日の一冊

ポール・ケラス(Paul Carus)著
鈴木大拙訳
長谷川書店、1898年9月

子供の頃、夏休みの唯一の憂鬱に「読書感想文」があった。
課題となるのは夏目漱石や芥川龍之介の「文学作品」が主で、「ハリーポッター」のように心躍るファンタジーはなかったような気がする。

芥川龍之介の「蜘蛛の糸」も、そのような読書感想文の候補であった。
選択した理由は、その作品の短さのみに起因していたのだが、何か魅かれるものがあった。
それは挿絵にあった、すーっと天から降りてくる透明な蜘蛛の糸の儚さだったのかもしれない。

「蜘蛛の糸」は芥川龍之介の著作と思われているが、ポール・ケラス(Carus、Paul、1852-1919)の"Karma : a story of Early Buddhism"が原作であり、鈴木大拙が日本語訳をしたのが今回紹介した一冊である。
ポール・ケラスは、ドイツ出生のアメリカ(シカゴ)で活動した哲学者である。"Open Court"(哲学雑誌社)を設立し、鈴木大拙(1870-1966)、釈宗演(1859-1919)とも親交があった。
芥川龍之介はこの本を出典として、1918年(大正7年)「赤い鳥」に児童文学「蜘蛛の糸」を発表した。この出典に関しては研究者の間で様々な説が挙げられたが、現在は「因果の小車」で落ち着いているようだ。
『因果の小車』は、「提婆邏の米車」「婆羅奈市の取引」「山賊仲間」「蜘蛛の糸」「善根の應報」で構成されている。
短編ではあるが、その作品の奥深さは分野を超えて無限である。

この夏は、子供のころ読んだ本をゆっくりと読み返し、辞書を片手に、原作に触れてみるのはいかがだろうか。

因果の小車
鈴木 大拙訳
長谷川書店、1898.9
赤い鳥
鈴木 三重吉編
ほるぷ出版、1977.3
Karma
Paul Carus著
Open Court Pub. Co. 1897

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