文学部歴史学科の熊本史雄教授の著書「外務官僚たちの大東亜共栄圏」(新潮選書)が「第20回樫山純三賞」を受賞

Date:2025.10.02 研究・授業

文学部歴史学科の 熊本 史雄 教授の著書『外務官僚たちの大東亜共栄圏』(新潮選書)が現代アジアに関する優れた図書に贈られる「第20回樫山純三賞」(一般書部門)を受賞しました。

「樫山純三賞」は、オンワードグループの創業者である 樫山 純三 氏が設立した樫山奨学財団が、現代アジアに関する独創的で優れた著作活動を顕彰するために、1989年に創設した歴史ある学術賞です。国際的視野にたった社会有益な図書を表彰し、その業績を一層広く世に知らしめる事を通じて、社会の情勢を的確に捉え、それらに対処できうる人材育成に資する事を目的としており、今年度は第20回の開催となります。

熊本教授の著書『外務官僚たちの大東亜共栄圏』は、戦後80年を迎えようとする現代において、「無謀な構想」とされた大東亜共栄圏の「本丸」は、軍部や右翼ではなく、外務省のエリート官僚たちであったという新視点から、当時の日本外交とその失敗の本質に深く切り込んだ論考です。緻密な史料調査に基づき、従来の歴史観を覆すような深い洞察が、歴史学の枠を超えて広く一般の読者からも高い評価を得て、今回の受賞に至りました。

熊本 史雄 教授コメント

拙著『外務官僚たちの大東亜共栄圏』は、「大東亜共栄圏」を〈日露戦後の「満蒙」概念を起点とする地域秩序観〉と定義して、日露戦後の約40年に渡る、外務官僚による秩序観と外交思想の継受のありようを描いたものです。ただ、そもそも思想なるものは目に見えませんし、その継受のあり方も陸上競技のリレー走のバトンパスのように目に見えて手渡されるものではありません。それはあたかも、一旦途切れたようでありながら、伏流水となって再び湧き上がった水が掬い取られるような、そんな仕儀にも似た営みだと感じます。そこには主流(本流)もあれば支流(傍流)もあります。本書では、外務官僚たちによる思想の継受のありようを、直線的ではなく紆余曲折しながら「大東亜共栄圏」に至ったという像を丁寧に描くよう努めました。本書が評価されたとするならば、そうした叙述のありようと、本書の内容が、大国のエゴイズムとナショナリズムが排他性を伴いぶつかり合う現代社会と図らずも接合していた点にあったのだと思います。今回の受賞を励みに、今後も引き続き精進して参ります。

外務官僚たちの大東亜共栄圏(駒大PLUS)

受賞概要
賞の名称 第20回 樫山純三賞(一般書部門)
受賞書籍 『外務官僚たちの大東亜共栄圏』(新潮選書、2025年5月21日刊)
著者 文学部 歴史学科 熊本 史雄 教授
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