令和8年度 入学式 総長祝辞
永井 政之 総長
学校法人駒澤大学の総長の永井です。
新入生の皆さまに入学のお祝いの言葉を述べさせていただく前に、近年、天災そして人災、様々な災害によって甚大な被害を被られ、復興の目途さえ立たない、国内外の多くの皆さまに、衷心からのお見舞いを申し上げますとともに、一刻も早く、平穏な生活が戻ってくることをお祈りいたします。
さて本日、令和8年度、駒澤大学入学式にあたり、志望されたそれぞれの学部、大学院に入学を許された新入生の皆さん、また御父母をはじめとする関係者の皆さまに、学校法人駒澤大学の教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。
御承知のように今日4月8日は「花祭り」、仏教を開かれたお釈迦さまの誕生日です。皆さんの新たなる出発の日として、これ以上ふさわしい日はないと、私は考えています。ちなみにこの良き日に当たり学内の禅研究館には、赤ちゃん姿のお釈迦さまに甘茶を灌いで、その誕生をお祝いする「花御堂」が設営され、曹洞宗総合研究センターの皆さんの協力を得て、甘茶の接待もあるとのことです。本入学式終了ののち、お参り頂ければ幸いです。
このような行事からしても、皆さんは駒澤大学が仏教、就中、坐禅をその教えの中心に置く曹洞宗によって設立された大学であることを強く認識されるものと推察します。
ちなみに皆さんのお手元のパンフレット「学校法人駒澤大学 建学の理念」には、本学の歴史や、本学が「仏教の教義と曹洞宗立宗の精神」を建学の理念とすることが詳しく記されています。是非、お読み戴きたく思います。
また本学では、皆さんが、当然持たれているであろう、「宗教」「仏教」「禅」をめぐる様々な疑問に応えるため、「仏教と人間」という必修科目が用意されています。そこでは、今までの受験勉強では思いもよらなかった世界が担当の先生によって丁寧に講義されるものと承知しています。
詳しくはパンフレットや授業に譲るものとし、概略を述べるなら、本学は江戸神田台にあった吉祥寺というお寺にあった「旃檀林学寮」というお坊さん育成の学寮を起源とします。この学寮が現在のような7学部17学科、さらに法科大学院を擁する大規模大学に発展したのは、お釈迦様、大本山永平寺を開かれた道元禅師、大本山総持寺を開かれた瑩山禅師の教えが、ひとりお坊さんだけでなく、多くの人々にとって「人間として生きる意味」を説く「普遍性」を持っていると信じたからに他なりません。
それはブッダが説かれた「縁起」という教え――現代でも縁起が良いとか悪いとかふつうに使われる言葉ですが、ブッダが説かれた「縁起」とは、分かりやすく言うなら、あらゆる存在はすべて結びつきによって成り立っている。単独で存在するものはないという教え――を理解すること。私たちはそれを「智慧」と表 現します。互いに支え合って生きているがゆえに、誰もが「他者に対する慈悲の心・思いやりの心」を忘れずに生きていくことが大事、という考え方に他なりません。
このような考え方、生き方が先に述べた「建学の理念―仏教の教義と曹洞宗立宗の精神」が意味する処ですが、分かりやすく「行学一如」や「信誠敬愛」 のことばも使われます。 この表現、ことばの背景に日本の「歴史」のあることは否定できません。いま私は、過去の歴史を踏まえ反省しつつ、行学一如とは自らの人生において、常に
「智慧と慈悲」を忘れないで生きること。信誠敬愛の信は教えを信じ、個々の尊厳を信じること。誠は誠実に生きること。敬は教えを敬い他を敬うこと。愛は慈しみの心を意味していると受け止めています。
現代社会における、さまざまな分野における日進月歩の発展は、誰もが実感しているところですが、同時にそこに問題があるのではないかとも感じているはずです。「自分中心」「自国中心」「人間中心」の風潮は、今に始まったものではありませんが、利便性や経済性を追求した結果、私たちの「人間性」が劣化してしまったと言ったら言い過ぎでしょうか。私は、こんな時代だからこそ、やはりブッダが説かれた、「あらゆる存在」それぞれの尊厳を認めつつ、「生きる」という営みを、弛まなく続けることが求められている。それこそが「智慧と慈悲」を忘れない生き方に外ならないと考えています。
皆さんは、今日を起点として4年間の大学生活に入られ、自ら選んだそれぞれの専門分野を通して、より理想的な人生を送るべく歩みを進められます。この4年間は、過ごしようによっては最も有意義な時間となること、今更、言うまでもありません。その有意義さを構築する大きな柱の一つとして「今までにない出会い」を挙げる事ができるでしょう。講義の場で、クラブ活動の場で、チャンスはいくらでもあります。 大本山永平寺を開かれた道元禅師は、鎌倉時代、中国に渡って生涯の師匠となる如浄という方と出会い、「坐禅」の教えをわがものとされましたが、その際の出会いを「われ人に会うなり」と述懐されました。
知識を得るだけなら、大学でなくてもいい。図書館で本を読めば良い。現代ならインターネットを通してあらましの知識ならうることができる。しかし人に会うのは、やはり「直接の出会い」に優るものはない。むしろネット社会だからこそ、「直接、人に会い」、ともに「夢」を語り、喜怒哀楽をともにする。「肝胆相照らす」ことの重要さを、再確認していただきたく思っています。
4年という歳月は長そうですが、「光陰矢の如し」の言葉のようにアッという間に過ぎ去ります。人生の最も充実した四年間を無事に過されますよう祈りますし、また教職員も一丸となってそのお手伝いをさせていただく覚悟です。
月並みな言い方ですが「頑張ってください」と申し上げて、皆さんの入学への祝辞といたします。
令和8年4月8日
学校法人駒澤大学 総長 永井 政之
