令和8年度 9月学位記授与式(卒業式)学長祝辞

Date:2026.09.29

卒業生の皆さん、本日はご卒業、誠におめでとうございます。

20260928学長祝辞.jpg村松 哲文 学長

令和8年9月19日、本学中央講堂において、学部卒業生66名の皆さんが、駒澤大学を巣立ちます。
本学において、皆さんがこれまで積み重ねてこられた努力と研鑽に、深く敬意を表します。
また、今日という日を迎えるまで、皆さんを支え、導いてくださったご家族やご関係の方々、先生方、先輩・後輩、そして友人の方々に、心からの感謝を申し上げます。ありがとうございます。

駒澤大学は仏教の教えと禅の精神を建学の理念にしている大学です。卒業にあたり、今一度、仏教の観点から、皆さんが駒澤大学で過ごした時間の意味を考えてみたいと思います。

駒澤大学は建学以来、釈尊の教えに基づき、「智慧」と「慈悲」の探求と実践に努めてまいりました。仏教における「智慧」とは、真理を洞察する強靭な認識力、「慈悲」とは、他者の喜びや悲しみと共感する心です。そして私は、これらに「縁起」という考え方を加えて、皆さんにお伝えしてきました。皆さんは駒澤大学に入学し、友人や先生方と出会い、様々なことを学び、今日、卒業の日を迎えることができました。それは自分だけの力でできたわけではありません。様々な「縁」によってできたことです。それが「縁起」、物事は縁りあつまって起こるという真理です。

皆さんが学生生活の中で築いた友情や師弟の関係は、卒業後も人生を支えてくれる、かけがえのない財産となることでしょう。そして、もう一つ、卒業生の皆さんに心に留めておいてほしい言葉があります。それは「一期一会」です。「一期一会」は、一生に一度の出会いという意味です。茶の湯の世界で大切にされてきた言葉ですが、その根底には、仏教の「無常」という考え方があります。あらゆるものは無常、つまり移り変わります。だからこそ、人との出会いは実にかけがえのないものなのです。同じ人と、同じ場所で、同じ時間を、もう一度まったく同じように過ごすことはできません。だからこそ、目の前にいる人との出会いを大切にしなければならないのです。これから皆さんが社会に出れば、様々な人と出会うことになります。考え方の違う人、世代の違う人、文化や価値観の異なる人とも仕事をすることになるでしょう。そのとき、「自分と同じ考えの人」だけを大切にするのではなく、「自分とは違う人」と出会ったことにも意味があると考えてください。人との出会いは、自分自身を成長させる大切な「縁」だからです。

さて、皆さんがこれから生きていく社会には、もう一つ、これまでとは大きく異なる存在があります。生成AIです。生成AIは、文章を書き、画像をつくり、情報を整理し、私たちが必要とする答えを、驚くほど速く提示してくれます。これからの社会では、生成AIを使えるかどうかではなく、生成AIをどのように使うかが問われる時代になるでしょう。私は、皆さんには、生成AIを恐れるのではなく、上手に使いこなす人になってほしいと思います。しかし、ここで気を付けなければならないのは、AIは必ずしも「正解」を出すツールではないということです。AIが出した答えを、そのまま信じてよいのか。本当に大切なことは何なのか。その答えによって誰かが傷つくことはないのか。自分はどう考えるのか。そうしたことを自分自身で問い直す力が必要です。生成AIがどれほど進歩しても、自分は「何を大切にするのか」「どう生きたいのか」という問いの答えをAIに委ねることはできません。むしろ、AIが便利になればなるほど、人間に求められるのは、自分で考える力、他者を思いやる力なのだと思います。

ここで、仏教の「智慧」という言葉を思い出してください。「智慧」とは、単にたくさんの知識を持っていることではありません。多くの情報の中から何が真実なのか、何が大切なのかを見極める力です。生成AIを使う時代だからこそ、この「智慧」がますます重要になってきます。そして、もう一つ大切なのが「慈悲」です。AIは情報を提供することはできますが、誰かの悲しみに寄り添い、励まし、共に喜ぶことは、人間にしかできない大切な営みです。AIを便利な道具として活用しながら、人と人とのつながりを決して手放さないでください。皆さんが大学で学んだ知識も、卒業後に出会う人々との関係も、決して「すぐに役に立つかどうか」だけで測ることはできません。学生時代に交わした何気ない会話や、先生からかけられた一言、友人と笑い合った時間が、何年もたってから人生の支えになることがあります。だからこそ、目の前の一人との出会いを大切にしてほしいのです。

生成AIを使いこなしながら、人間にしかできないことを大切にする。自分で考える「智慧」を磨き、他者を思いやる「慈悲」を実践し、出会いを「縁」として大切にする。私は、これこそが、これからの時代を生きる皆さんに求められる姿ではないかと思います。

卒業生の皆さん。皆さんには、これから数えきれないほどの出会いが待っています。その一つひとつを「一期一会」として大切にし、自分自身の人生を豊かにするとともに、周りの人々の人生も豊かにする人になってください。そして、駒澤大学で培った「智慧」と「慈悲」、そして「縁起」の心を胸に、生成AIという新しい力も味方につけながら、人と人とのつながりを大切にし、社会を照らす存在として活躍されることを、心から願っています。

皆さんのこれからの人生が、素晴らしい「縁」に恵まれたものとなりますように。
ご卒業を、心よりお祝い申し上げます。

令和8年9月19日
駒澤大学 学長 村松哲文