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中国語 中国語辞書紹介

中国語辞書紹介2017――紙の辞書のすすめ

 外国語を学ぶ者にとって、辞書は学習生涯における伴侶である。長くつきあえばつきあうほど、つきあい方がわかり、他人の気づかぬありがたみも実感できようというものである。幸せな学習生涯を送るためには、しっくりと掌になじむよき伴侶を得ることが不可欠である。
 かつてはそれが当たり前だった。少なくともいま中国語を教えている先生たちに、そういう辞書をもったことがない人はいないだろう。これからもそうであり続けるか否かは知らず、教員である私たちは自らの体験を通して、紙の辞書は中国語学習に欠かせぬツールであると確信している。
 なぜ「紙」か。いまは電子/オンライン辞書やアプリケーションが世にあふれている。コンピューターやスマホでそれらを検索すれば充分ではないのか。初学者向け「紙の辞書」のイチオシ『プログレッシブ中国語辞典』第2版の「編者のことば」によれば、その便利さの中に落とし穴がある。
 辞書をひく目的を「単語の意味を知ること」に限るなら、電子辞書等はたいへん優れた道具だ。だがそれらは「トンネルデザイン」といって、正解をめざして地中を最短距離で進むようなもの。それで当座の急に間にあわせている限り、一回の手間で一つの単語の一つの意味しかおぼえない。それではあまりに非効率だ。どういうことか。
 日本語や英語において意味の最小単位は「単語」だが、中国語では「字」だ。「字」が「音」と「義(意味)」を伴い、単独もしくは他の字と組んで、単語(詞)を作っている。
 中国語で一般に使われる漢字は約3000といわれる。単語数はその何倍にも上るだろうが、単語の根底にはそれを構成する字の意味がある。3000字の意味を知れば1万語2万語に応用がきく。とりあえず800字を目標にしよう。3000語のボキャブラリーを支えてくれる。英単語で3000といえば立派に高卒レベルだ。なかなかのものではないか。
 中国語の辞書はたいてい、漢字ごとに意味分類と字義、用例があり、その下に、その字で始まる単語を並べる形式をとっている。これは上で見たような中国語独特の「単語」の成り立ちにぴったりだ。知らない単語に出くわしたら、まず最初の一字に狙いを定め、その字の解説を経て、ずらり並んだ単語群からお目当ての単語にたどりつく。リニアでトンネルを駆けぬけるのと比べ、ひと手間かかる。だがそのひと手間に学習者は、(1)単語の基礎にある「字」の意味分類 (2)一字を共有する大量の別単語――という二つの風景を見ることになる。それらを眺めるうち、だんだん「字」に対する感性に磨きがかかり、中国語の旅が豊かで楽しいものになる。トンネル内を驀進していると、単語が字というユニットからできていることすら見落としてしまいがちだ。
 どの外国語の先生も、きっと紙の辞書の効用を説くに違いない。だが中国語の場合、見晴らしがよいからだけではなく、紙でなければならない構造的理由があったのだ。
 とはいえ、「最初の一字」に行くためには、その字の音を示すローマ字(拼音=ピンイン)を知らないといけない。わからない時はまず部首を見定め、「検字表」で画数から部首をさがし、あったら残りの画数を数え、目指す漢字が見つかれば、ローマ字が判明する。そこではじめて「辞書をひく」ことができる。これはかなり面倒な作業だ。
 それを少しでも緩和するため、一部の辞書では部首に番号が振ってある。頻出する部首は引いているうち番号を憶えてしまう。すると部首をさがす手間が省け、引くスピードが上がる。するとますます引くのが億劫でなくなり、知っている語彙も増えるという相乗効果が期待できる。
 「辞書がボロボロになる」のは外国語学習者の勲章だった。そういう志向の人はきっと部首番号方式になじむだろう。以下に挙げる辞書では①、③、⑦が採用している。

初学者向けの辞書

 初学者といえども、辞書が伴侶である以上、とっつきやすいがすぐ飽きてしまうようではいけない。長くつきあえる中身と懐の深さが必要だ。同時に、相性というものもある。携帯の便も重要だが、実際に手にとってみて、しっくりくる大きさがよい。引く回数に比例して引きやすくなる紙の辞書は、「引く気が起きる」ことが先決だからだ。

①小学館『プログレッシブ中国語辞典 第2版』(2013年,3800円+税) ※ 以下、価格はすべて税別
②講談社パックス『中日・日中辞典』(2008年,3200円)

 1は見出し語6万7000。コンパクトだが「6万語辞典」のスタンダードを満たす。頻度順の語義配列、1字で「単語」になる例とそうでない「語素」の例の区別のほか、述語(動詞)と目的語(名詞)の相性がわかるコロケーション、名詞を数える時の量詞など、単語の意味だけでなく使い方がわかる工夫がつまっている。「語法ノート」、図解イラストなどの情報も豊富。約8000語の日中小辞典つき。
 中日・日中を兼ねる辞書も出回っているが、このタイプには粗雑な辞書作りをしている例もあり、安さに惑わされないよう気をつけたい。自信をもってお薦めできるのは2である。「中日」「日中」計10万語は中辞典に匹敵。学習辞典の機能もそなえている。

「頼りになる辞書」たち

 知っておくべき単語は段階を追って増える。知らない単語に出くわした時、それを解決してくれることが、頼りになる伴侶の第一条件である。その意味で、辞書は基本的に「大は小を兼ねる」。そのような頼りになる辞書として5点を挙げる。

③小学館『中日辞典』第3版 (2016年,7500円)
④『講談社中日辞典』第三版 (2010年,7600円,CD-ROM単体は4700円)
⑤東方書店『東方中国語辞典』 (2004年,5000円)
⑥大修館書店『中日大辭典』第三版(2010年,8600円)
⑦『白水社中国語辞典』 (2002年,7800円 版元品切れ 古本は入手可)

 二つのグループに分けて紹介しよう。
 ③、④、⑤は「本格的学習辞典」である。③と⑤は北京・商務印書館との共同編集。最新の③は収録語数10万、用例9万。語法解説や類似語比較などコラムが豊富。全単語に品詞を明記。巻末に固有名詞や言語・文化に関する附録。2色刷り。④は見出し語7万3000。全文を収めたCD-ROMが附き、ネットから2012年までの更新分5000語と『現代中国語新語辞典』1万3500語をダウンロードできる。用例すべてにピンインを附している点が学習者に有益。類義語コラム、「コロケーション表」、「派生ツリー」などのツールも充実。全単語に品詞を明記。巻末に5000語の外来「固有名詞小辞典」。2色刷り。⑤は用例が豊富で長く、学習にたいへん役立つ。見出し語こそ4万2000と少ないが、「中国人の常識」に属する語彙を網羅する。類義語のニュアンスなどコラムも充実。1万語の日中小辞典つき。2色刷り。
 ⑥、⑦は「専門型辞典」。特定の側面で突出した特長をもつ。⑥は1930年代の東亜同文書院(上海)の事業をうけついで愛知大学が1968年に出版。87年の増訂第二版(14万語)までは、文語、古白話、方言、成語、諺など幅広くカバーした点が際立っていたが、今回の改訂で見出し語約3分の2を入れ替え、新語を拡充、体裁もスマートになった。それだけ普通の辞書に近づいたともいえる。⑦は編者伊地智善継の生涯を通じた語法研究の成果である。文法構造ごとに腑分けして語釈と用例を示す。見出し語5万4000、用例は11万に達する。上級を目ざす者には必携の辞典だったが、残念ながら版元品切れ。⑥の「初版」や「増訂第二版」ともども、古本は安く入手可。これらの辞書は買っておいて損はない。

ローマ字配列の「詞典」

 もう1点、2冊目以降にお薦めしたい辞書がある。

⑧『岩波中国語辞典 簡体字版』 (1990年,3800円)

 他の辞書のような「親字」ごとでなく、英和辞典のように単語=「詞」をローマ字順で配列してある。耳で聴いて最初の1字がわからなくても探せるこの方式は、紙の辞書では珍しいが、電子辞書やソフトが普及した今日、むしろなじみやすくなったともいえる。
 コンセプトは明確で、口語としての北京語の語彙を網羅し、品詞、11の「硬度」ランク、例文により使い方を示すというもの。副詞や虚詞の説明も、豊富な用例を挙げて詳しい。内容は1963年発行の旧版と変わらず、「文化遺産」となった観もあるが、北京語を聴いたり読んだりする上で今日なお抜群の威力を発揮してくれる。

上級の読みをめざして

 副詞等の微妙なニュアンスの理解は、中級から上級への関門となる。一般の辞書にも解説が載っているが、名詞、動詞、形容詞と比べ、適当な訳語を見つけにくく、見つかってもなぜそういう訳になるのか理解が難しい。そうした言葉の習熟には、以下の辞書が有効だ。

⑨東方書店『中国語文法用例辞典』 (2003年,4800円)
⑩白帝社『中国語虚詞類義語用例辞典』(1995年,4700円)

 ⑨は一般の辞典では理解の難しい「虚詞」を中心に約1000語の用法を解説した呂叔湘の名著『現代漢語八百詞』(増訂本)の翻訳。⑩は用法の類似した虚詞650語を250組に分類。「共通点」、「相違点」ごとにさらに細かく腑分けし、例文を挙げて分析している。

想像力を育てる辞書

 すでに述べたように、中国語の意味の最小単位は「字」であり、単語(詞)はその集合だ。そこで英和辞典や国語辞典をひくのと違って、単語の意味を調べてわかったつもりにならず、それを構成している一字一字の意味を考える習慣を養うことが中国語上達の道である。それには『現代漢語詞典 第7版』(商務印書館 2016年 6万9400語収録 現代漢語の規範となる辞典 109元)、『現代漢語規範詞典 第3版』(外語教学與研究出版社・語文出版社 2014年 7万2000語収録 語法情報が充実 93元 縮印本55元)、『商務国際 現代漢語大詞典』(商務印書館国際有限公司 2015年 12万語収録 100元)、『当代漢語詞典 双色修訂版』(中華書局 2011年 8万9100語収録 2色刷り 78元)などの「詞典」、『新華字典 第11版』(商務印書館 2011年 規範的字典 2色刷り24.9元 単色本19.9元)、『現代漢語規範字典 第3版』(外語教学與研究出版社 2010年 語法情報が充実 35.6元 縮印本23元)などの「字典」に慣れ親しむことだ。上級を目ざす人は、なるべく早期に購入すべし。神保町の中国専門書店(内山書店、東方書店など)やネット書店で買うことができる。

おすすめ日中辞典

 日中辞典は授業では必須としないが、作文には不可欠である。次の2点をお薦めする。

⑪小学館『日中辞典』第3版(2015年,8000円)
⑫『講談社日中辞典』 (2006年,7000円)

 ⑪は商務印書館との共同編集。収録9万5000語。第3版は用例をより自然な文に改め、コラムも充実させた。巻末に固有名詞ミニ辞典。2色刷り。⑫は7万4000語、例文8万。全例文検索のできるCD-ROMを附け、「シソーラス」で類義語の使い分けを明示するなどの斬新な工夫が特長。2色刷り。

電子/オンライン辞書との「二刀流」で

 辞書ソフトや電子/オンライン辞書には紙の追随を許さぬ長所が幾つもある。中国語を聴いていて、漢字が浮かばなくても、音声をローマ字で正しく入力できれば候補の単語が表示される。読むときは、漢字の音や部首を知らなくても、手書き入力がある。つまりは早く目的地にたどり着ける。複数辞書検索やリンクも豊富だし、発音もしてくれるから初心者にはありがたい。
 ぜひそれらを利用しつつ、実力をつけるためには紙の辞書との二刀流をこなしてほしい。
 ここでは、無料で使えるオンライン辞書のごく一部を紹介しておく。
 無料だけに厳密な吟味を経ていないものもあるが、そのことを頭の隅に置いておけば、それなりに利便性は高い。広く使われているサイトに次のようなものがある。

Weblio日中中日辞典 http://cjjc.weblio.jp/(統合型オンライン辞典。上記⑦を搭載)
goo中日辞書 http://dictionary.goo.ne.jp/cj/(三省堂『デイリーコンサイス中日辞典』第2版を搭載)
goo日中辞書 http://dictionary.goo.ne.jp/jc/(三省堂『デイリーコンサイス日中辞典』を搭載)
北辞郎 http://www.ctrans.org/(ユーザー参加型オンライン辞典)

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