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AIと憲法( 山本 龍彦編著)

眼横鼻直(がんのうびちょく・げんおうびちょく)
Date:2021.05.01

書名 「AIと憲法」
著者 山本 龍彦 他
出版者 日本経済新聞出版社
出版年 2018年8月
請求番号 323/273
Kompass書誌情報

皆様は、憲法学に対し、どのような印象をお持ちでしょうか。憲法9条の他には何も思い浮かばないという方が多いのではないかと思います。あるいは、大学の授業等で憲法学を勉強したものの、近年の変化を踏まえた憲法学の議論についてはご存知でないという方も少なくないでしょう。または、特に自然科学をご専攻の方の大半は、ご自身の専攻とは無関係のものと考えていらっしゃるかもしれません。

しかし、もちろん憲法学においても、伝統的な憲法9条論だけでなく、近年の変化を踏まえた議論がなされており、その中には、自然科学と決して無関係ではないものもあります。その一例として、近年のAI技術の発展の影響を受けたプライバシー権(憲法13条)の保障のあり方に関する議論を挙げることができます。

すなわち、近年では、AI技術が発展した結果、プライバシーの点で比較的センシティブではない情報についても、AIのプロファイリングにより、そこから全く関係のない非常にセンシティブな情報を本人の知らないうちに得られてしまうことが問題視されています。

たとえば、アメリカでは、妊娠の有無や出産時期といった情報が、その情報と関係のないサプリメント等の購買履歴のプロファイリングから導かれていたという事件がありました。また、日本では、就職情報サイトの閲覧履歴等のプロファイリングから内定辞退率が予測されていたという出来事もありました。

こうした現状を受け、どのようにAIのプロファイリングからプライバシー権を保障するかが重大な課題となっているのです。

本書は、以上の問題に加え、プロファイリングに基づく判断が被差別集団を生み出しかねないという平等(憲法14条等)に関する問題、いわゆるケンブリッジ・アナリティカ事件が浮き彫りにした選挙(憲法47条等)に関する問題や、ひいては、最も基本的な憲法上の原理のひとつである民主主義に関する問題等、AI技術の発展を受けた多岐にわたる憲法上の問題について解説し、検討するものです。是非とも本書に触れていただくことで、憲法学においても、伝統的な憲法9条論以外に、近年の変化を踏まえた議論や、自然科学にも関係する議論が展開されていることを意識していただければと思います。

法学部 講師 奥 忠憲

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