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池袋ウェストゲートパークⅢ 骨音(石田 衣良著)

眼横鼻直(がんのうびちょく・げんおうびちょく)
Date:2016.09.01

池袋ウエストゲートパークⅢ 骨音
石田 衣良 著
2002年10月・文藝春秋
請求記号 913.6/545
Kompass 書誌情報

本書は『4TEEN』で直木賞を受賞した著者のデビュー作、『池袋ウエストゲートパーク』のシリーズの3巻目にあたる。2000年に長瀬智也主演でドラマ化されている。東京の池袋を舞台に、地元の工業高校卒業後、母親の家業の手伝いで生計を立てている主人公マコトが、街で起きる様々なトラブルを解決するべく奔走する。広がる格差や貧困、グローバル化と情報化の影響といった「現代のリアル」を背景に、主人公が、街に住む人々と協力して無償でトラブルを解決し、窮地に陥った人々を助けていく。本書でマコトは、ホームレス、風俗嬢とその幼い娘、地域通貨を広めるNPO代表、義足の歌手といった登場人物が巻き込まれたトラブルに関わるが、多様な人々とつながり、大胆な方法で巧みに問題を解決に導いていく過程を、テンポの良い文章で一気に堪能できる。扱われるテーマは、ホームレス襲撃、貧困と性の商品化、紙幣の偽造、麻薬の氾濫と深刻であるが、利害計算をすることも、強い正義感や義務感を持つこともなく、当たり前のように他人の問題を自分達の生きる街―池袋―の問題として引きうけ、解決まで奔走する主人公達の姿は爽快である。推薦者はここに政治のモデルを読みこんでしまうのだが、そうした作業は必要ないだろう。主人公を助ける癖の強いわき役達―街のギャング団「Gボーイズ」、怪しげなレイブ主催者、商店街の人々、中学時代の同級生で暴力団の構成員、シングルマザーの母親―の描写もまた魅力的である。どの話においても大きな問題は完全に解決されることもないが、それなりの軽やかな「解決」へと向かっていく。全てが可能でもないが、全てが不可能でもない、ほっとするエンディングも堪能して欲しい。
力と金がモノを言う現代社会に息苦しさを感じる人に、明日もやっていけるだろう、という不思議な力を与えてくれる言葉に満ちた本である。

法学部 准教授 山崎 望

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