駒澤大学

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禅の山河(柳田 聖山著)

眼横鼻直(がんのうびちょく・げんおうびちょく)
Date:2018.04.01


書名 禅の山河
著者 柳田 聖山 
著出版者 禅文化研究所
出版年 1986年3月
請求番号 188.8/39
Kompass 書誌情報

私の学生時代のことであるから、すでに数10年の歳月を経過しているわけであるが、寺の息子として育ったため、わけも分からず駒澤大学の仏教学部仏教学科に入学した。特別に仏教や禅に関心が強かったわけではなかった私が、たまたま駒澤大学図書館で禅文化研究所の季刊誌『禅文化』という雑誌を目にし、そこに載せられていた京都大学(後に花園大学に移籍)の柳田聖山先生の「祖堂集ものがたり」という一連の随筆に心が釘付けとなったのをいまも鮮明に覚えている。20世紀初頭に韓国慶尚南道の伽耶山海印寺から発見された中国五代952年に著された禅宗の歴史書『祖堂集』20巻を丹念に紐解かれた柳田先生は、そこに載せられている中国唐代の禅僧たちの禅問答やエピソードの数々を小説風に分かり易く自在に語っておられた。

禅僧の伝記というと、堅く難解なイメージのみが先行するのが普通であったが、柳田先生の文章は唐代禅僧たちの躍動感溢れる問答や逸話を独特の筆致で語っておられ、私は忽ちその世界に心酔していった。柳田先生の文章に巡り会ってから、仏教とくに禅に対する関心の芽が私の中で大きく開花したのは間違いない。この文章に出会っていなかったならば、おそらく私は仏教学部の教員になることもなく、一地方寺院の住職として堅実に生きていたことであろう。禅僧とはこんなにも人生を謳歌する面白い人たちの集まりであったのか、と古き良き時代の中国禅宗に対する憧れが脈々と湧いてきて、やがて自分自身も中国や日本の禅宗の歴史や禅僧の伝記を研究する立場となってしまったのである。

この柳田先生の「祖堂集ものがたり」は、やがてまとめられて書籍として出版されている。禅文化研究所から1984年7月に青原下の洞山良价ら曹洞宗系祖師を中心とした『〈純禅の時代〉祖堂集ものがたり』が、ついで1985年4月には臨済義玄らを中心として南岳・青原両系の祖師を載せた『〈続・純禅の時代〉祖堂集ものがたり』が出版されており、さらに1986年3月にも南岳下(臨済宗系)の馬祖道一らを中心とした『禅の山河』が出版されている。
『禅の山河』では、六祖恵能・南岳懐譲・石頭希遷・藥山惟儼・百丈懐海・南泉普願・趙州従諗・雪峰義存ら唐代禅宗をリードした多彩な祖師たちが縦横無尽に紙面の中を闊歩していた。後に私にとって研究対象となった宋・元代の中国禅僧や日本の中世・近世の禅僧とは一味も二味も違った唐代禅僧たちの核心に触れることができた懐かしくも貴重な思い出の一冊(ないし三冊)であり、まさに「眼横鼻直」の故事に相応しい禅の世界が自在に展開している書籍といってよい。

仏教学部 教授 佐藤 秀孝

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