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地図から読む歴史(足利 健亮著)

眼横鼻直(がんのうびちょく・げんおうびちょく)
Date:2017.09.01

書名 「地図から読む歴史」
著者 足利 健亮
出版者 講談社
出版年 2012年
請求記号 080/9-2108
Kompass 書誌情報

本書は、私の講義科目「歴史地理学」の最初に受講生に一読を薦めているもので、歴史地理学の入門書として手ごろな本である。とはいえ、受講生以外でも、歴史や地理に関心のある学生には楽しく読んでいただけるのではないかと思い、ここに紹介する次第である。

著者の足利健亮氏は京都大学教授だった方で(在職中逝去)、戦後日本の歴史地理学を支えてきた研究者のひとりである。研究内容のみならず、人を引きつける話術もあってか、1997年にNHKテレビの市民向け教養番組に出演し、自身の研究の話をされた。放送は好評で、テキストは増補されて書籍化されたが、2012年に講談社学術文庫の1冊として新たに刊行されたものが本書である。テレビの放送内容がもとになっているため、資料を使った煩瑣な論証は省略され、話の骨子が、語り口調の読みやすい文章で書かれている。

最初の第1章から第6章までは主に古代が対象で、宮都、国府、古代官道、条里、荘園という歴史地理学の代表的テーマが扱われている。第7章~第11章は、織田信長、明智光秀、豊臣秀吉、徳川家康という戦国武将の城地選定や「首都」作りなどに関わるもので、一般の人には最も読みやすい部分であろう。特に第10章の秀吉の伏見経営構想は、NHKの「ブラタモリ」京都・伏見編のネタになったほどである。最後の第12章~第17章は、地図とならんで著者がこだわりを持ち、研究の手がかりともしている地名が主なテーマとなっている。

歴史地理学とは、著者に従えば、地図を主な資料にして過去の景観を明らかにする学問であり、本書でも各章に必ず地図が出てくる。ただし、評者なりに言葉を補えば、地図は、そこから情報を読み取る資料だけでなく、主張を表現する手段でもある。本書でも、(歴史学における史料引用のような)ナマの資料として地図を掲載している場合は少なく、ほとんどの地図は、何らかの説明をするために、著者が作成した図である。

また、宮都や古代官道といった過去の景観の復原にとどまらず、なぜそこに城をつくったのかなどという選地の理由や意図まで読み解こうとしていることが随所で感じられる。それはしばしば大胆な推測であるのだが、そこに本書の面白さもある。事例は主として近畿地方のものが多く、土地勘がないと分かりにくい面もあるかもしれないが、豊富に挿入された地図と照合する労さえいとわなければ、理解困難な箇所はないであろう。

本書を通じて、(文献史料や遺物だけでなく)地図を使って歴史を考えることの面白さ、あわよくば歴史地理学という学問分野に触れていただければと思う。

文学部地理学科 教授 小田 匡保

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